2月4日、11日に前後編で放送された『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)の「結婚したい彼と彼女の場合 〜令和の婚活漂流記2024〜」がSNSで大きな反響を呼んだ。番組の舞台となったのは、東京・青山の結婚相談所「マリーミー」。会員の3人が相談所代表の植草美幸氏の激励に導かれながら、婚活に奮闘する模様に密着した内容であった。
 SNSでとりわけ“話題”となったのは、30歳の男性会員・進藤氏(仮名)だ。旧Twitter(現X)では、違法に切り抜かれた動画や静止画とともに、番組内での言動を揶揄する言説が多数飛び交っていた。無論、彼の婚活を応援する声も多く上がっていたのだが、悪質な誹謗・中傷も少なくなかったのである。

 前回に引き続き植草氏との対談形式で、進藤氏から放送後の実情や近況について話を聞いていく。

◆“数万のいいね”を直視して嘔吐してしまう

——Twitterの声に恐怖を感じたと伺いましたが、具体的にどのような点が恐ろしかったのでしょうか。

進藤さん(以下、進藤):なによりも「数字」ですね。嫌なコメントも目には付くものの、その内容以上にインプレッション数やいいね数の膨大な数に目がくらんでしまって。何十万、何百万とコメントが見られていて、それに「いいね」と同調する人が何万人といるのか、と思うと怖くてたまりませんでした。一番参っていたときは身体まで反応して、食べ物は喉を通らなかったし、嘔吐までしてしまったほどです。

植草美幸氏(以下、植草): 直接取材を受けていない記事も複数出ていたほどでしたしね。記事はSNSで注目を集めている事実を紹介するような内容でしたが、SNSやブログ等では、事実と異なる決めつけに基づいて彼を批判するものも多くあったようです。

進藤:漫画『推しの子』で恋愛リアリティーショーの出演者が炎上してしまうシーンをつい連想しました。「本当に命を落とす可能性もある」ということが、身をもってわかったんです。

◆密着されたことに対する後悔は「一切ない」

——20万人、270万人といった多くのフォロワー数を抱えるアカウントで言及されているのも拝見しました。

進藤:そうなると一気に拡散されますし……数ってそれだけで大きなプレッシャーになるんです。実際はそうではないと頭でわかってはいても、インプレッション数やいいね数が「同意」に思えてしまう。

 だから、自らコメントを直接書き込むことだけでなく、安易な「いいね」も人を傷つけることを、この場を借りて伝えさせてほしいです。

——密着を受けたことへの後悔はありますか。

進藤:それは一切ないです。一時はかなり落ち込みましたが、同時に応援の声をいただいたこともあってもう吹っ切れました。でも、場合によっては、SNSは時に本当に追い詰める凶器になるのは間違いない事実だと思います。

植草:前回もお話したように、放送時にはリアルタイムでマリーミーで上映会を行ったんです。進藤さんともう1人の協力者である内田さんにくわえ、番組とは関係ない女性会員2人のメンバーとスタッフで。

 女性会員のうち1人が進藤さんと生まれ年が同じで、しかも番組を前にしてナーバスになっている進藤さんに「実物の方が格好いいですね」なんて励ましてくれたんです。「これは脈あり!」と思い、予定していなかったお見合いをすかさず組みました。

◆「上映会」で知り合った女性とお見合いした結果…

——気になるお見合いの結果ははたして……。

進藤:無事、仮交際(対談取材当時)に至れました! これは番組が繋いでくれた縁ですから、感謝ですよね。ちなみに都内の会社員の方で、真面目さと大らかさを兼ね備えたとても素敵な人。彼女とは等身大の自分で話せているように感じています。

植草:次に会うのが3回目かな? もう本交際を申し込みましょう!

進藤:当日は手を繋ぐことも目指して、頑張ります。

——その後も知りたくなってしまいます(笑)。

進藤:成婚退会する暁には、またこちら(『日刊SPA!』)で報告しますので!

植草:遅くとも夏までの成婚がひとまずの目標。かなり改善されてきたとはいえ、まだまだコミュニケーションスキルは磨いていきましょう。

◆一人暮らしでコミュニケーションが改善

——ここまではどのようにしてコミュニケーション能力を向上させたのでしょうか。

植草:そもそも女性と2人きりでじっくり話すことも入会以前は全然なかったようなので、まずは「場数」。ほかの相談所の会員の方とのお見合いでは詳細なフィードバックが得られないので、うちの女性会員とのお見合いをたくさん組み、問題点を洗い出していきました。

進藤:中高は男子校で、大学も理系学部。会社も男所帯かつ、取引先にも女性がかなり少ないという、偏った環境で長年過ごしていたんです。そのため最初の頃はお見合い中は完全にあがってしまって……まったく先に進めませんでしたね。

植草:また、一人暮らしを始めたことも、改善に一役買っているんです。家族との会話、特に母親との会話は、相手がなんでも理解してくれてしまいます。結果、コミュニケーションが未熟でも会話が成立してしまう。金銭や家事以外の面でも、実家は甘い環境なんです。

進藤:一緒に暮らしていないことで、母が登場する話題のネタ自体も減りました。放送時のように、母の話題を連発することはもうありません(笑)。

◆数キロ痩せ、美意識も向上

——番組の取材中に一人暮らしをはじめて、はや数か月。会話以外にはどんな変化がありましたか?

進藤:食生活にも気を使うようになって、まだ数キロではあるものの痩せました。美意識が加速度的に向上して、小顔体操なんかも行うようになっています。

植草:見た目が変化することで、自信もついてきました。自信がつくことで余裕も生まれ、会話にも落ち着きが出てきたようですね。さらに、以前女性たちから指摘されていた「家事能力」も実践を通して身についてきているはずです。

——一人暮らしを始めて、大変なことはありましたか。

進藤:掃除ですね。もうすっかり慣れたのですが、当初は負担でたまりませんでした。成婚して二人暮らしを始めるときには、食洗機を買いたいと思っています。

植草:こうした地に足のついた「生活感」が女性への安心感に繋がりますから。トイレットペーパーが切れそうだな、なんて細部にも意識が向くようになったと思います。

進藤:はい。あとは食費や生活費が想像以上にかかるなと、身に沁みています。実家にいたときも家賃の9万円は全額入れていたし、手伝いもしていたので、わかっているつもりだったものの……。やはり自分だけで住んでみるのとではまったく別物でした。

◆植草氏と番組のおかげで「人生最高!」

植草:美容やファッションにも気を使い始めたところで、初期投資としての出費が二重に嵩んでしまったからより大変だったことでしょう。ただ進藤さんが偉いのは、実家時代にしっかり堅実に貯金していたこと。おかげで今、さまざまなアクションに即時に移れています。

——「堅実さ」が進藤さんにもともと備わっていた強みでしょうか。

植草:堅実さ、真面目さは、婚活の上では大きなアピールポイントになります。彼はカウンセリングなどの際も一度も遅刻したことはありませんしね。くわえて、素直で忍耐強いこと。心を開いてからというもの、いつも一生懸命ノートをとって、ひとつずつ改善を目指して努力を重ねてきた姿を見ています。

進藤:もう今は美容も一人暮らしも楽しくて仕方がないんです。途中、「婚活のためにやっているのを忘れていない?」と植草先生に突っ込まれてしまったこともあるほど(笑)。

 SNSではしんどい思いもしましたが、新たな趣味にガッツリ目覚められたのも先生と番組のおかげ。実は今、「人生最高!」って気分なんです。地獄経由でしたけどね。

◆“婚活仲間”に伝えたいことは…

——取材のスタート時とは状況が大きく変わられたようですが、現在はどのような結婚生活を思い描かれていますか。

進藤:末永く楽しく、仲睦まじい夫婦になるのがなによりの夢です。具体的な生活のイメージとしては、食洗機のほか、大きい冷蔵庫がほしいと考えています。最近では職場にお弁当を持参しているのですが、食材ですぐ冷蔵庫がパンパンになってしまうのが悩みなんです。未来の妻に愛妻ならぬ愛“夫”弁当を渡したり、一緒に台所に立ったりできると素敵だな、なんて。

 家賃はあまり高くない所がいいと思っています。Twitterでは「二人暮らしで家賃10万円なんて都内じゃありえない」と叩かれていましたが、母との二人暮らしも9万円でしたから。地価が上がっていることもわかっていますし、あんまりボロボロなのは避けたいと思いますが、私自身は都外のベッドタウンなどを含め立地にこだわりがないので、10万円ちょうどではなくても近い価格帯ならありえるかなと。

植草:そのあたりはお相手としっかり相談して決めるものだということを忘れないように。だけど、SNSで言われていたような「現実を知らなさすぎて、結婚への本気度が感じられない」とは違うよね。

進藤:生活面のすり合わせなど、より深いコミュニケーションにしっかり取り組んでいきたいです。

——最後に、番組視聴者をはじめとした“婚活仲間”に対して、同志としての一言、アドバイザーとしての一言をお願いします。

進藤:偉そうなことは到底言えませんが……ネットで情報とにらめっこするばかりではなく、現場に飛び込んで経験を積むことこそが大切だと、実体験として感じています。もし私の姿に励まされたという方がいらっしゃれば、仲間としてともに頑張っていけたらうれしいです。

植草:婚活はやろうと思った瞬間に始めるのが吉。性別に関係なく、早いに越したことはありません。あとは進藤さんのように、アドバイスに耳を傾けて行動する素直さがあれば、明るい未来が待っているはずですよ。

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 会員一人ひとりに対して「我が子のような」親身さをもって接する植草氏と、その愛を受けてすくすくと成長していく進藤氏。2人の姿は親子のようであり、師弟のようでもある。

 そんなコンビの歩む道の先に、「成婚」の2文字が見えるのもそう遠くないはずだ。

<取材・文/海原あい>



【海原あい】
コンビニで買えるビール類はほぼ全制覇しています。本は紙派。さらに調味料と服とスペースエイジ系のインテリアを収集しているため、収納不足に陥りがちです。好きな検索ワードは「備忘録」