さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはヒソヒソと向かう場所だ。
 実家がラブホ街にあり、学生時代はラブホでアルバイトをしていた前田裕子さん(仮名・20代)。今回は、ラブホにあるさまざまな備品についての裏事情を教えてくれた。

◆レンタル用コスプレ衣装の裏話

 オプションでコスプレ衣装のレンタルができるラブホは多い。前田さんがバイトをしていたラブホもそうだ。コスプレ衣装のラインナップにもこだわりがあったという。

「流行り廃りがあるので、基本的にアニメやゲームのキャラクター衣装はありません。私が働いていたころは、ナース、チャイナドレス、ミニスカポリス、JK制服、バドガール、迷彩柄のミニワンピを揃えていました」

 衣装は、部屋に常備しておくのではなく、コールを受けてから部屋の前に運んでいたそうだ。そのときにも、衣装を部屋に運ぶコツがあったようだ。

「ドアノブに掛けたあと、これまでもかと思うくらいの強さでノックをします。そして、全速力で走り去るように届けていました」

 ある日、衣装がわかりやすいように、カタログをつくることになったという。オーナーの愛犬の写真を顔にした安いトルソーに被せるという、斬新なアイデアだったそう。

「それがウケたのか、コスプレ好きが多いだけなのか……。結構な頻度でレンタル依頼があったんです」

◆返却衣装を着てみるおばちゃんスタッフ

 返却された衣装は、必ず洗濯するという。

「着用された形跡がなくても洗います。といっても、クリーニングのプロでもなく、ネットに入れて洗濯機を回すだけなので、つくりがよくない衣装はすぐほつれるんですよね。それらを修繕するのも待機中のスタッフの仕事でした」

 なかには、今なら“バイトテロ”と拡散されてしまいそうな悪ノリで、衣装を着てみるおばちゃんスタッフもいたそうだ。

「夜勤明けの変なテンションで、オーナーも着たときがありましたね」

 ちなみに、たまに持ち去られることもあったというが、「若いお姉さんだけが着たものではないぞ、止めておけ!」と、前田さんは付け加える。

◆小さなものから大きなものまで盗まれる

ホテルの電話機 コスプレ衣装もそうだが、ラブホではたびたび備品を盗まれるという。

「私は、旅館やホテルを利用したときは、アメニティ以外の備品は持ち帰ったことがありません。それは、持ち帰られるホテル側の苦労を知っているからです」

 洗面所のコップ、部屋のハンガー、アメニティグッズから、枕やシーツと布団の間に敷くラバーシーツまで。

「不倫相手など、来てはいけない人と利用するお客様のことを考えて、無香料のシャンプーやリンスを用意しています。その持ち帰り率が高かったですね。ネットで購入可能なので……と言いたかったです。また、ラバーシーツも人気で、結構暴れちゃうタイプの人が『いいなぁ』って思われるんでしょうね。ちなみに、こちらもネット購入できます。“介護用品”で検索してください」

◆盗難頻度の高い備品にはホテル名を記入

 備品が盗難されることに対して、オーナーは対策を考えたという。シャンプーやコンディショナーは、壁に取りつけるタイプのディスペンサーにし、ハンガーはポールから外れないタイプにするなど工夫していたと、前田さんは話す。さらには……。

「カップは一新して、“ラブホテルA”とホテル名を入れました。これは、持ち帰ると恥ずかしくなるからなのか被害は減りました」

 ラバーシーツには、“持ち帰り厳禁”と“ホテル名”を、パートやアルバイトの人たちで手書きしたとのこと。前田さんは「持ちものには名前を書くのが、落としものにも盗難にも効果があるのかもしれない」と納得の様子だった。

 以前は備品としてハンドマッサージャーも置いていたそうだが、毎回と言っていいほど同じマニアの客が持ち帰っていたことがわかり、止めたという。ハンドマッサージャーは現在、各部屋の販売ボックス(ミニコンビニと呼ばれている)にて販売中なんだとか。

<取材・文/資産もとお>

―[ラブホの珍エピソード]―