ネット上には「不倫を見破る方法」が多く出回っている。しかし、不倫をする側も負けてはいない。
バレないように友人に頼んでアリバイ工作をしたり、それらしい写真を残したりと、様々なテクニックを駆使している。筆者(綾部まと)は、新卒からメガバンクの法人営業に従事してきた。従業員数の多い銀行なので、様々な恋愛事情も目にしてきたが、そのなかにはアッと驚くような方法もあったのだ。

◆①会社のスケジューラーに「ウソの出張」を登録

「不倫のバレを回避するために、最もよく使われるのがスケジューラーです」と、丸の内本部で働くAさんは語る。

銀行は福利厚生も女性支援も充実しているので、結婚を機に辞める女性は、昔に比べると少ない。特に行内結婚が5割を超えるメガバンクでは、配偶者も同じ銀行で働いているケースが多い。

「全ての行員は、Outlookのスケジューラーで予定を管理しています。非公開にしない限り、どの行員からも見ることができるので、お互いの予定を見ている夫婦がほとんどですね」

いっそ不倫関係の予定を非公開にしてしまうのが手っ取り早いと思いきや、それでは怪しまれてしまうのだという。そこで、不倫をしている者がよく使うのが「ウソの出張」らしい。

◆「泊まりでも仕方ない」と思わせるような、遠方を選ぶ

「例えば東京だったら、程よく遠い“三島出張”を入れておくわけです。そうすれば奥さんも旦那さんのスケジュールを見て『あ、この日は遠いところに行くのね。じゃあ帰って来なくても仕方ないわね』と思うわけです」

すぐにバレてしまうのかと思いきや、意外とそうではないのだという。

「同じ店や部署にいれば、出張があるかどうか分かりますけど、そうでない限り、本当に出張があるかなんて分かりません。店内恋愛および部内恋愛は禁止されているので、夫婦が同じ場所で働くことは、まずないですよ」

◆②部下の車で、ラブホに行く

運転する男性の横顔転勤の多い銀行では、全国各地に「家族寮」がある。家賃2万円程度で都内に住めるため、家族寮に住む行員は多い。この日本独自とも言える社宅文化だが、実は不倫をするのにもうってつけの環境のようだ。

「社宅では駐車場も数千円と格安で借りられるので、車を持つ行員が多いですね。そうすると、車を使って郊外のラブホに行くことができます。郊外のラブホは車で入って、車で出て行くので、誰かに遭遇したり、見られたりするリスクが少ないんですよ」

ただし、これには問題がある。賃貸物件や購入物件と違い、社宅のコミュニティは狭い。ママ友の目が光っているのだ。

「男性行員の奥さんと子どもが、帰省していた時の話です。彼は自分の車を使って、不倫相手とお泊まりデートをしました。そうしたら、社宅のママ友が車がないことに気が付いて、奥さんに通報したんですよ。彼は大目玉をくらったそうです」

◆同じ社宅の「ママ友バレ」を防ぐために、部下の車を使う

これで大人しくなったと思いきや、彼は対応策を取ることにしたのだという。

「彼は部下の車を借りて、不倫相手とラブホに行っていました。そうすれば社宅のママ友から、車がないと気付かれませんからね」

上下関係がはっきりしている銀行では、休日でも部下は上司に逆らうことができない。部下は本部に通報するのかと思いきや、意外にも下からの通報は少ないとのこと。

「部下にしてみても、上司が出世してくれた方が、自分も引き上げてもらえるので、そんな不都合なことはしませんよ。“あの人のもとで働いてた”ということがステータスになる方が、自分にとっても有利ですからね」

◆③奥さんに持たされたGPSを、バイク便で自宅へ発送

未だ紙文化が根強い銀行では、顧客や本部とのやり取りに、郵送が多く使われている。そのため「いつ、どこの郵便局で出せば、最短何日で着く」という郵便事情にも詳しくなる。

「奥さんにGPSを持たされたから、バイク便を頼んで自宅まで郵送した猛者もいました。都内をぐるぐる走ってもらったから、奥さんはGPSのエラーだと思っていたらしいです」

バイク便が自宅に着く時間も把握していたので、その時までにきちんと家に帰り、ポストからGPSを回収したのだとか。

◆仕事も家庭も全焼リスクのある「火遊び」

離婚の話し合いをする夫婦「そこまでして、不倫をしたいか?」と呆れる方もいるかもしれないが、これは銀行がストレスフルな職場ということも関係しているだろう。

銀行では、せっかく慣れた仕事でも長くて三年で異動させられ、いつ全国各地に転勤させられるかも分からない。人事評価はブラックボックスで、親の職業や学歴で、入行時点で出世が決まっている同期も目にすることになる。銀行の外で羽を伸ばしたくなる気持ちも、分からなくはない。世の中には魅力的な人が溢れているし、自分のパートナーにないものを相手が持っている場合、誘惑に抗うことは難しいかもしれない。

しかし、たった一度の火遊びで、出世の道が断たれることはもちろん、家族の仲も引き裂かれてしまうリスクがあることを忘れてはならないのだ。

<文/綾部まと>



【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother