◆先週から中央競馬で2歳戦がスタート
 今年のダービーは、ベテラン横山典弘騎手の鮮やかな手綱捌きに導かれたダノンデサイルの勝利で幕を閉じました。ダービーが終わると、息つく暇もなく、その翌週から早速“次”のダービーを目指す戦いがスタート。2歳馬たちがデビューを迎えます。

 昨年も新馬戦開幕1週目に登場したチェルヴィニアが翌年のオークスを制しましたが、「早期デビュー=早枯れ」ということは全くありません。むしろ早めに賞金を積んでクラシックに備えたい素質馬が、数多くデビューを控えています。

 馬券的な話をすると、新馬戦は過去の対戦比較がないため「よくわからない」と敬遠されがちです。データ不足なのでAIにとっても不得意分野だと思われます。ただ、「将来のG1馬と未勝利馬が一緒に走る」ほどメンバー間の能力差の大きいレースでもあるのも事実。

 幸いなことに、私はデビュー前の2歳馬取材をライフワークとしており、15年近く、春になると北海道で取材を行なっています。この時期の新馬戦は、取材時の感触と結果が一致しやすいので、取材の成果を生かせるチャンスでもあるのです。

 そこで今回は、今週末に京都・東京で行われる新馬戦の注目馬を紹介していきます。

◆土曜のキズナ産駒のエリート候補・グラフレナート

・6月8日京都5R(芝1600m) 注目馬:ダノンフェルゼン

 土曜京都の新馬戦で注目したいのはダノンフェルゼン(父ミッキーアイル、母ダノンオスカル・牡)。育成を手掛けたノーザンファーム空港・齊藤厩舎長は取材当時「ハロン14秒を馬なりで軽々走っています」と動きの良さを強調されていました。お父さんの産駒はメイケイエールに代表されるように気性が激しく短距離タイプに振れやすいのですが、この馬は「前進気勢が強過ぎず、操作性も高い」とのことなので、1600mという距離も心配ないでしょう。鞍上に川田将雅騎手を迎えて必勝態勢です。

・6月8日東京5R(芝1600m) 注目馬:グラフレナート

 今年の2歳世代に良血馬が揃い、最も注目を集めているのがキズナの産駒。その中でもトップクラスの評価を受けているのがこのグラフレナート(父キズナ、母ヴィルデローゼ・牡)です。目をみはるような高額馬ではなく、血統的にもそれほど目立つ存在とはいえないのですが、とにかく牧場サイドの評価が高かったのが印象的。

 ノーザンファーム空港・伊藤厩舎長による「気持ちの前向きさを大事にして、馬のメンタルを重視して育ててきました」とのコメントからも、能力の高さへの自信を感じました。新馬戦は通過点だと思います。

◆素質馬が集まった日曜東京5Rは必見

・6月9日京都5R(芝1200m) 注目馬:ポートデラメール

 続いて紹介するのはポートデラメール(父ナダル、母ジュベルアリ・牝)お兄さんに現オープンのアルナシーム、叔父にアルアイン、シャフリヤールがいる良血馬。取材時の馬体重が420kgとやや小柄なのですが、「しっかり調教に耐えられて、カイバも食べられている」とのことで早期移動、早期デビューになりました。

 ノーザンファーム空港・佐野厩舎長は「バネ感」「体幹の良さ」「バランス」など、運動神経の高さが伝わるフレーズが次々と飛び出し、まさに「山椒は小粒でも……」といった印象です。お父さんは新種牡馬のナダル。父の名声を高めるためにも、新馬勝ちへの想いは強いはずです。

・6月9日東京5R(芝1800m) 注目馬:クロワデュノール

 昨年の勝ち馬ダノンエアズロックはダービーに出走。東京芝1800mという条件だけあって、今年も評判馬が揃った注目の一戦です。オークス馬チェルヴィニアの半弟アルレッキーノ(父ブリックスアンドモルタル、母チェッキーノ・牡)にももちろん注目なのですが、ここではクロワデュノール(父キタサンブラック、母ライジングクロス・牡)を一番手に挙げます。

 同馬はノーザンファーム空港・佐々木厩舎長が「年明けぐらいから早期移動を意識して攻めてきた」と語る即戦力候補。3月にゲート試験に合格すると、このレースでのデビューを目指してじっくり乗り込まれてきました。注目したいのは、関西馬でありながら東京まで遠征してデビューする点です。

 今年のダービーで1〜3着だったダノンデサイル、ジャスティンミラノ、シンエンペラーに共通するのが「関西馬」かつ「東京デビュー」。ダービーを視野に入れるような素質馬ほど、東京コースを経験させておきたいという意思が働くということでしょう。

 以上の4頭は全勝してもおかしくない素質馬で、特に東京でデビューする2頭について、仮にここで敗れることがあっても見限らないでください。私はこの4頭でコロガシを敢行する予定です。

◆函館新馬についても少しだけ

 そして最後に、本編では触れなかった函館の新馬2戦についても少しだけ。

 6月8日の函館5R(芝1000m)は取材馬が出走していないので、有利な内枠をひいた2ディラードテソーロ。ポンと出ての押し切りを期待します。6月9日の函館5R(芝1200m)はメイショウホダワラ(父デクラレーションオブウォー、母フェルトベルク・牡)。三嶋牧場の藤井トレーニングマネージャー曰く「スピード能力が高いので短めの距離での活躍を期待」とのことでした。

文/松山崇



【松山崇】
馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。