ハラスメントが話題になっている昨今においても、世の中には「迷惑客」というものがまだまだ存在している。店側は立場上強く反論することが難しく、非常識な言動に泣き寝入りしてしまうことが多々あるそうだ。
「ついこの間、年配の男性客に猛烈に怒鳴られました……」と語るのは、都内で着物屋を営む本田陽子さん(仮名・49歳)。沢尻エリカ似の美人店主だ。

お酒好きな彼女は、アンティークの着物が並ぶ店内にカフェ&バーも併設。1杯500円で本格的なクラフトビールが飲めるので、店には着物好きの女性とお酒好きの男性が集まるという。

◆突然スマホで写真を撮ろうとしてくる年配男性

「平日の夕方頃、 70代ぐらいの男性が『なんか面白いねぇ、この店!』とふらりと店内に入ってきました。シャツを着た普通の見た目の方でした」

その男性は特に酔っ払っている様子でもなく、ぱっと見おかしな様子はなかったそうだ。ところが……。

「店内をぐるりと見物したかと思うと、いきなり『お姉さんの写真、撮らせてくれ!』とスマホを構えてきたんです。やんわりと断っても『いいじゃん! お姉さんの写真、撮らせてくれ! 一緒にも撮ろう!』とさらに迫ってきました。自分の写真が何に使われるのかわからず気持ち悪かったです」

と本田さんは振り返る。

◆ドリンクの注文を促した途端、逆ギレモードに

「あまりにもしつこいので『申し訳ありませんが、写真だけを撮るというのはご遠慮いただいておりまして……。飲み物を頼んでいただいたら一緒にお写真お撮りしますよ。』と注文を促しました。すると急に『なんなんだぁー!! 写真ぐらいいいじゃないか!!』と、大声で怒鳴られたんです」

突如豹変した態度に面喰った本田さん。しかし、そこは20年近く店を一人で守り続けてきた店主。怖いという感情はなかったという。

「怖さよりも腹立たしさの方が勝りました。『お客様、すみません。うちは観光名所というわけではないので、写真だけというのはちょっと……』と伝えたところ、『何を偉そうに! ふざけんな! ケチケチしやがって!』と相手はかなり苛立っているようでした。

あまりにも憤慨していたので、『まぁまぁお父さん、そんなに怒らないで』と気楽な感じでなだめようとしました。しかし『おとーさんじゃねぇえーー!!!』と相手はさらにヒートアップ。もしかすると、子どもがいないのにそう言われたことが気に障ったのかもしれませんね……」

◆陽キャな大学生が来店し空気は一変…

年配男性との攻防戦が続き、どうしたものかと困惑していたところ、常連の男子大学生二人組が来店したそうだ。

「彼らは店内のただならぬ雰囲気をすぐに察知したようです。『どうしたんすか?』と年配男性を一瞥しましたが、飲み物を頼むと二人はこちらに関与することなく談笑し始めました。すると、それまであんなに大声を出していた男性がいきなりダンマリ。何を言われたわけでもないのに。若者の陽気な空気感に押されてしまったのでしょうか……」

結局男性は何も注文することなく、気まずそうに店を後にしたという。

「帰り際、『客をナメんじゃねえよ』とぼそっと言われましたが、あなたまだお客様になってないじゃない……と思いましたね」

この一言からも本田さんの老獪さがうかがえる。小柄で可憐な見た目とは裏腹に肝が据わっているのだ。

ただ生きているだけでも、思わぬタイミングで理不尽なできごとに遭遇してしまうことがある。そんな時、“被害者側”には何が必要なのだろうか。徹底抗戦、懐柔、あるいは周りを巻き込んでみるなど。処世術の引き出しは多いに越したことはないが、本田さんのように相手に恐れず屈しない気持ちは持っていたいものだ。

<TEXT/おせりさん>

―[話の通じないおっさんの末路]―



【おせりさん】
下北沢に住む32歳。趣味はポーカーとサウナ、ホラー映画鑑賞。広告代理店・制作会社を経てフリーランスのブロガー兼ライターに。婚活ブログ『アラサー女の婚活談義』と生きることをテーマにした『IKIRU.』を運営中。体験談の執筆を得意としている。X(旧Twitter):@IKIRUwithfun