テレビ界で指折りの激戦区は平日の午後2時台。日本テレビ系の情報番組『情報ライブ ミヤネ屋』(毎週月〜金曜午後1時55分〜同3時50分)とTBS系の同『ゴゴスマ〜GOGO!Smile!〜』(同1時55分〜同3時49分)が真っ向勝負している。
◆共にローカル番組から始まり全国ネット化

 両番組の視聴率の勝敗にはテレビ関係者たちの視線が注がれ続けているが、このところ動きが生じている。『ミヤネ屋』の視聴率がジリジリと後退している。関東で『ゴゴスマ』の数字を下回ることが増え、お膝元の関西でも敗れる日が目立つようになった。

 どちらの番組も内容に以前と大きな変化はない。それなのに視聴率が動いているのはなぜか? 情報番組の視聴率にはMCの好感度が大きく関係するから、『ミヤネ屋』のMC・宮根誠司氏(61)が今年3月に韓国で起こした路上喫煙騒動などが影響しているとテレビ関係者は見ている。

『ミヤネ屋』は大阪の読売テレビの制作。2006年に関西のローカル番組として始まり、08年には関東でも放送されるようになって、全国ネット化が達成された。

 一方の『ゴゴスマ』は名古屋のCBCテレビによる名古屋ローカルの番組として2013年にスタート。15年からは関東、21年からは関西でも流れるようになって、やはり全国ネットになった。MCは石井亮次氏(47)だ。

 当初、両番組の関東での対決は『ミヤネ屋』の圧勝だった。『ゴゴスマ』は関東に進出した直後の2015年10月4日、世帯視聴率0.9%という歴史的低数字を記録してしまう(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。まるでNHK Eテレの語学番組並みである。「関東からの撤退もあり得る」とみるテレビ関係者もいた。

 しかし、『ゴゴスマ』は関東でも徐々に人気が上昇。2017年10月4日には世帯視聴率5.4%をマークし、同4.7%だった『ミヤネ屋』を初めて勝った。

◆昨年の同時期と比べれば“明らかに逆転”

 以後、両番組の視聴率の差は少しずつ縮まり、昨年6月までにはほぼ互角と呼べるまでになった。一方で関西は地元の『ミヤネ屋』の優勢が続いていた。以下、昨年6月23日の視聴率である(ビデオリサーチ調べ)

■関東
『ミヤネ屋』個人2.4%(世帯4.7%)
『ゴゴスマ』個人2.0%(世帯4.0%)
■関西
『ミヤネ屋』個人2.3%(世帯4.9%)
『ゴゴスマ』個人2.0%(世帯3.9%)

 この均衡が最近、崩れつつある。『ミヤネ屋』が関東と関西でともに負ける日が珍しくなくなった。以下、今年6月20日の視聴率である。

■関東
『ミヤネ屋』個人2.0%(世帯4.2%)
『ゴゴスマ』個人2.4%(世帯5.0%)
■関西
『ミヤネ屋』個人1.8%(世帯3.6%)
『ゴゴスマ』個人2.0%(世帯3.9%)

 どちらの番組も政治、事件、芸能、天気を扱い、取材力にも大きな差異が見られない。番組のカラーは好対照だが、これは従来通りである。

『ミヤネ屋』の宮根氏は攻めの姿勢で、ときに語気を強める。コメンテーターも梅沢富美男(73)、アンミカ(52)らファイタータイプが目立つ。全体的には宮根氏のトークショーの色合いが強い。

 一方、『ゴゴスマ』のコメンテーターはますだおかだの岡田圭右(55)や元A.B.C-Zの河合郁人(36)ら大半が穏健。石井氏もソフトで、声を荒げない。全体的には石井氏を中心とする井戸端会議的な色合いが強い。

◆喫煙問題、失言…宮根氏への強まる逆風

 この1年で何が変わったかというと、宮根氏への逆風だ。今年3月20日、ドジャース・大谷翔平選手(29)が出場したMLB開幕戦「ドジャース−パドレス」を取材するため韓国を訪れた宮根氏が、ソウルの屋外喫煙禁止区域内で電子たばこを吸った。その姿を誰かが撮影し、X(旧ツイッター)に投稿。この映像によって宮根氏が猛批判された。

 Xへの投稿者は「宮根氏は韓国に何しにきたのか。注意しないスタッフも問題だ」と、義憤を隠さなかった。この件をスポーツ紙やネットニースなどが報道。韓国有力紙『朝鮮日報』のオンライン版も伝えた。

 矢面に立たされた宮根氏は翌21日の『ミヤネ屋』冒頭で謝罪に追い込まれる。

「これから取材姿勢をあらため、初心に戻って頑張りますので、あらためてよろしくお願い致します。どうも申し訳ありませんでした」(宮根氏)

 しかし、これで一件落着とはならなかった。お笑いタレントの有吉弘行(50)が自身のFMラジオのレギュラー番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN)の同24日放送で「見たこの動画? めっちゃダサかった。本当に悪い顔して」と、からかった。

 有吉は容赦せず、謝罪についても「手を付いたまま『どうもすいませんでした』って。うるせえなぁって感じで」とバッサリ。これもネットニュースになり、宮根氏への批判はさらに高まった。

◆“累積赤字”が溜まった結果…

 宮根氏は2012年1月、当時の妻以外の女性との間に女児がいることが発覚し、同6日の放送で「心を新たに、みなさまの期待、信頼にこたえられるよう、一から頑張っていきたい」と謝罪している。2度目の初心宣言だから、余計に痛かった。宮根氏は最初の妻と1993年に入籍したが、2004年に離婚。06年に再婚したものの、22年までにやはり離婚している。

 宮根氏は喫煙問題後も自ら再び批判のタネを撒いてしまう。今年5月7日の放送で、栃木県那須町で飲食店経営者夫婦の遺体が発見された事件を取り上げた際、殺害された被害者を「容疑者」と呼んでしまった。

 同9日放送でも同じことを繰り返す。今度は東京・西新宿のタワーマンション施設内で起きたガールズバー経営者殺害事件を伝えたとき、殺された女性を「容疑者」と称してしまった。立て続けだったこともあり、Xなどで非難された。

 これまでの宮根氏は婚外子問題を乗り切り、「態度が大きい」などの声もかわしてきた。“治外法権”のような存在だった。しかし、“累積赤字”が溜まってしまったうえ、コンプライアンス意識が高まる一方だから、厳しい状況に立たされている。各メディアが「嫌いなキャスター」といった類のアンケート調査を行うたび、上位に名前が載ってしまう。

◆スキャンダルとは無縁の石井キャスター

 ライバルの石井氏にスキャンダルが見当たらず、「嫌いなキャスター」とも縁がないため、余計に宮根氏のアウトな言動が目立ってしまっている。

 ちなみに、この2人の軌跡はよく似ている。宮根氏は1963年に島根県で生まれ、「関関同立」の関西大を卒業後、87年にテレビ朝日系列の基幹局(有力ネット局)である大阪の朝日放送に入社。人気が高まり、2004年にフリーになった。

 一方、石井氏は1977年に大阪で出生し、同志社大を出たあとの2000年、TBS系列の基幹局である名古屋のCBCテレビに入社。やはり人気者となり、2020年にフリーになっている。

 宮根氏は関西人ではない。このためアンチからは「エセ関西弁」との批判が以前から上がっている。片や石井氏は関西人。この辺にも関西の視聴率変動の理由があるのかも知れない。

 軌跡は似ているがキャラクターは対照的な宮根氏と石井氏。2人によってブランドイメージがつくられている『ミヤネ屋』と『ゴゴスマ』はどうなるのか。今年の後半戦が両番組の行方を決めそうだ。

<文/高堀冬彦>



【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員