新人、若手社員の五月病より大変らしいのが、ベテラン社員の“抜けた穴”なんだとか。

〈(おそらく低賃金でやっていてくれたのであろう)35年選手のベテラン有能『おばちゃん』が辞めてしまって、誰にでもできそうな業務の穴が二人がかりでも埋められない〉

 そんなXのポストが先日、〈分かりすぎる〉などとバズっていた。

 さらに〈定年後、以前より低賃金で再雇用されてまで事務方を引き受けてきた『おじさん』〉も辞めるとなって、〈そのひとが引き受けていた業務を若手正職員と派遣社員で切り分けてみたら四人分になった〉そうだ。

 全ての企業で来年4月から65歳までの「雇用確保」が義務化されるが、厚労省の昨年の「高年齢者雇用状況等報告」によると、定年が60歳の企業は66.4%、65歳は23.5%、定年制を廃止しているのは3.9%。

■定年が65歳になるわけではない

「あくまで雇用の確保であって、定年が65歳になるわけではない。大半の企業では60歳で一度退職して、本人が希望すれば65歳まで再雇用という形になると思います。同一労働同一賃金のルールがあるとはいえ、賃金2〜3割減は覚悟しておいた方がいい。ただ、本音を言えば、新卒を2、3人採用するより、それ以上の仕事をしてくれる再雇用の方が安上がりではありますよね」(中堅メーカー人事担当者)

 それでなくても新卒の採用はままならない。結局、再雇用のベテランを便利使いして……いよいよ辞めるとなったところで現場はパニック!

「そんなトラブルが生じる原因のひとつに、日本の企業にも広がっている成果主義の弊害もあるように思います」と、生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏がこう言う。

「成果主義で競争をあおり過ぎると、全員がライバルと考える社員が増えます。結果を出し続けて自分の身を守るために、既得権とか、培ってきたノウハウやスキルを後進に譲ろう、受け継ごうとしなくなる。自分の存在価値を高めようとして仕事を囲い込んでしまう社員ばかりになると、新人や若手が育たないという悪循環にも陥ります」

“抜けた穴”が大きくなるのも当然か。

「皆が皆、個人プレーに走るのは非効率的、組織全体のパフォーマンスも下がります。職種にもよりますが、ベテラン社員のノウハウやスキルをマニュアル化し、それを共有してチーム力を上げていく。喫緊の課題でしょうね」(柏木理佳氏)

 便利使いなんて発想では、しっぺ返しを食らうことになりそうだ。