カオスを極めた先月の衆院東京15区補選をめぐり、大きな動きだ。選挙活動を妨害したとして、警視庁は17日、政治団体「つばさの党」代表の黒川敦彦容疑者ら3人を逮捕。詐欺などを扱う捜査2課が18年ぶりに特別捜査本部を設置する異例の体制で立件に踏み切った。

 ここまで警察を本気にさせた黒川容疑者は、一体どんな人物なのか。

■反ワク、三浦春馬勢、集団ストーカー騒動に合流

「今回の選挙妨害活動の実質的な首謀者で、(無所属の)乙武洋匡陣営のスタッフを転ばせたのも黒川氏。昨年までNHK党(旧・政治家女子48党)の幹事長も兼任し、参政党に対して似たような妨害活動をしてきました。一方で黒川氏には、反ワクチンや陰謀論を唱える活動家としての顔もあり、つばさの党は実は“陰謀論の総合商社”でもある」

 こう語るのは、約7年にわたりNHK党を取材する選挙ウオッチャーのちだい氏だ。

 つばさの党の前身は、2019年に元衆院議員の小林興起氏が代表となって結成した「オリーブの木」だ。結成2カ月で辞任した小林氏の後釜に座った黒川容疑者は、同年の参院選に立候補したものの、落選。政見放送で、「世界の金融はロスチャイルドなどの財閥に支配されている」とする陰謀論を口走っていた。その後は、反ワクチンを主張する医師の内海聡氏や、東京・日野市議の池田としえ氏らと反ワクチンデモを企画するなどしてケンカ別れ。NHK党に加わったのはちょうどこの頃、21年からだ。

キワモノ運動団体に自分の活動を手伝わせるのが常套手段

 22年からは「20年に亡くなった俳優の三浦春馬さんは自殺ではない」とする陰謀論集団にも合流。デモに参加し、昨年は三浦さんの所属事務所アミューズの株主総会会場前でも自ら街宣した。

 同じ頃、黒川氏は「新しい国民の運動」と称し、渋谷の旧統一教会本部を数百人で包囲し「統一教会はCIA!」と叫んだり、公明党前や幸福の科学施設前での抗議街宣も実施。これには、反ワクチン、三浦春馬勢、スピリチュアル信奉者、さらには「在特会」などのヘイトスピーチ活動に参加していた人種差別活動家まで相乗りした。

「先月の補選でも、三浦春馬デモの参加者が根本容疑者(=良輔候補)のチラシを配っていた。理解を得にくいキワモノ運動に首を突っ込み、そこにいる人たちに自分の活動を手伝わせるのが、黒川氏の常套手段。今回一緒に逮捕された杉田勇人容疑者は創価学会から集団ストーカーされていると主張していて、それに黒川氏が興味を持ったことで一緒に活動をするようになった」(ちだい氏)

 捜査2課はつばさの党のカネ回りに関心を寄せているとの情報もある。いよいよ「黒川らの集団」はおとなしくなるだろうか。

(藤倉善郎/ジャーナリスト)