怒りの声は拡大するばかり。岸田政権が6月に実施する定額減税を巡り、約5000万人が対象になるとみられるサラリーマンらの給与明細に所得税の減税額を明記するよう企業側に義務付けたことだ。

 定額減税は1人当たり所得税3万円、住民税1万円の年間計4万円。給与所得者は扶養家族の分も含め、6月以降に支給される給与やボーナスに反映される。政府は3月に関連法令を見直したとしているものの、中小企業などに対して周知徹底されていたとは言い難い。

 減税額の明記義務化が6月直前になって公に示されたことから、野党は「選挙対策」「企業の事務作業が増える」などと批判している。

■世論批判の矛先は「事務作業の増大」よりも、岸田首相のセコイ狙いにある

 SNSなどの投稿を確認すると、世論批判の矛先は「事務作業の増大」よりも、むしろ、岸田文雄首相(66)が明記義務化の理由として「給与や賞与の支払時に減税の恩恵を国民に実感いただくことが重要だ」(20日の自民党役員会)などとセコイ狙いを語っていたことのようだ。

《減税は岸田政権の「おかげ」と実感しろと》《たった1回、物価高でほぼ相殺され、効果なしの4万円の減税を決めたのはオレ様だと、ありがたく思えという…》《セコイんだよ。器が小さいんだよ。「私のおかげ」をアピールする姿勢が》

 こんな投稿もあった。

《たった1回の減税が「岸田首相のおかげ」というのであれば、これから複数でてくるであろう増税は「岸田首相のせい」となるわけだ》

「増税メガネ」などと不本意なあだ名が定着した岸田首相。5年間で総額43兆円という「異次元の防衛費増額」を唐突に打ち出し、今後、防衛費をまかなうための法人、所得、たばこ税の増税なども検討されているという。ほかにも「異次元の少子化対策」の財源として社会保険料に支援金を上乗せするほか、後期高齢者の医療保険料引き上げ、国民年金保険料納付期間の65歳までの延長、退職金の所得控除額見直し――といった新たな国民負担増の政策が次々と導入される可能性がある。

 新たな増税が決まった場合、岸田首相は給与明細から天引きされる金額が増える度に「岸田政権のせい」と明記するよう求めるのだろうか。