東京都知事選(7月7日投開票)は今のところ現職有利のセオリー通り、小池知事の優勢で進んでいるが、女帝優位を崩す重要争点には事欠かない。そのひとつが羽田空港の新飛行ルート問題だ。

 新ルートは東京五輪に向けた国際線増便を口実に、2020年3月から運用が始まった。海から出入りする従来ルートに対し、新ルートは着陸時に新宿区、渋谷区、港区、品川区などの上空を低空で飛行。飛行高度は都庁上空で900メートル、恵比寿駅上空でスカイツリーよりも低い約600メートル、品川区大井町の上空で東京タワーよりも低い約300メートルだ。多い時は朝の山手線のラッシュ時を超える約1分に1機のペースで飛び回る。

 騒音や落下物の危険などが運用開始前から指摘されているが、国は「世界の中で最高水準の対策」(斉藤国交相)と強弁して新ルートの停止要求に聞く耳を持たない。小池知事は「引き続き国に対し、安全対策の着実な実施を求めてまいります」と、国に責任を丸投げして頬かむりだ。

 都議会で新ルート問題を追及してきた共産党の白石民男都議は「小池都政にも責任がある」と憤り、こう続ける。

「新ルート実施について『地元の理解が必要』と繰り返してきた国に対して、『対策を評価する』と後押ししたのが小池知事です。国が『地元の理解を得た』というアリバイづくりに加担したのです。都議会では『国の責任』の一点張りで逃げ回り、現場視察すらしていない。落下した部品や氷塊が当たったら命にかかわります。都民の命を危険にさらしておいて、何が『都民ファースト』でしょうか」

 国交省の国会答弁書によれば、羽田空港で確認された航空機の部品欠落は19〜22年の4年間で1798件。昨年以降、20キロ超の巨大部品が欠落した事例も2件ある。

「数百グラムの部品でも空から降ってきたら凶器になります。小池知事は『国際競争力』を理由に新ルートが不可欠だと主張していますが、人命より競争力を優先とは冗談じゃない」(白石都議)

 新ルート直下の新宿、渋谷、港、品川、大田、目黒の有権者は約190万人。命をないがしろにする女帝に怒りの鉄槌を食らわせた方がいい。