医者も政治家と同じ? 悪い意味で権力者扱いされ、阻害されている【医療のミカタ 医療のフシギ】

日刊ゲンダイDIGITAL6/7(土)18:05

医者も政治家と同じ? 悪い意味で権力者扱いされ、阻害されている【医療のミカタ 医療のフシギ】

南渕明宏昭和医科大教授(C)日刊ゲンダイ

【医療のミカタ 医療のフシギ】#10

「支援者がコメを持ってくるので自分で買ったことはありません」

 コメ不足のご時世に、農林水産大臣がこんな演説をして世間を驚かせました。このような人を大臣にしてしまう自民党は、それはそれでスゴイ! 国民は政治権力の力を思い知ったと思います。

「支援者がおコメ持ってくるって、それってワイロじゃないの?」と誰もが思うのですが、なぜかこの点はマスコミも司直もスルー。

 どうやら、この国では大臣は「ごっつぁんです!」し放題のようです。財務大臣は支援者から現金やインサイダー情報を、国土交通大臣は、家族全員のフリーパス乗車券や搭乗券を、厚労大臣の家族は支援者の病院の特別室にいつまでも好きなだけタダで入院できる特権をもらえるのかもしれません。

 きっと、上級国民の社会では「正義とは権力者の利益である」(カリクレス〜古代ギリシャの政治家)がジョーシキなのでしょう。

 なんでこんなことになっているのでしょうか。

「権力は大衆が形成する」と、フランスの哲学者、M・フーコーは説明します。アホに権力を与えているのは大衆です。政治家の場合、有権者です。大衆がひれ伏して「センセイ、なにとぞよろしくお願いします」と祭り上げ、選挙で権力を与え、その権力を大衆は利用しようとするのです。

 ヒトの行動は基本、合理的です。国政選挙では信じられないことに野党も与党も「組織票」なるシステムがいまだに機能しています。これも合理的な権力利用の施策なのでしょう。これが日本の民主主義です。

 選挙に行かない人は権力を利用する方法を知らない、あるいは権力に興味ない、ということなのでしょう。私は立候補者がイヤなヤツばっかりの時も投票には行きますが、いつも「該当者なし」と投票用紙には記入しています。

 医者の仕事もこういった合理的に「権力にひれ伏す」反応を示す「わきまえた人たち」に支えられています。

「ヘモグロビンA1cが高いからって叱られて、なんだか難しい説明ばかり。ぜんぜん、わからないけど、こいつらに逆らったら損だから、とりあえずハイハイと、お礼を言ってさっさと帰ろう!」

 こういう患者さんは多いと思います。いわば、はじめから医者は「特殊なヒト」として祭り上げられ、一人の人間として扱われていないのです。

「あの患者さん、いつもニコニコ、いい人だね」と看護師に言うと、「センセイ、ぜんぜんわかっていませんね。患者さんのこと。看護師やヘルパーさんをいつも怒鳴りつけてヒドイですよ、もぉ!」。

 これは日常に頻繁に出くわす事象です。医者がこういうふうに悪い意味で「権力者扱い」されて、医者ではない人たちの社会から疎外されている現実を、ちゃんと理解している医者はまれです。

 医者はかわいそうな存在なのです。でも患者さんからは親切に扱われています。私などその典型だと思います。冒頭の大臣様閣下も、そういう扱いをされてきたのでしょう。

 そんな「構造」をよく理解している有権者は「あの人なにもわかっちゃいないけど。しょうがないよ、他にいないし。次も入れてやるか」となるのでしょう。偉いなぁ、日本人!

(南渕明宏/昭和医科大教授)

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