普段から使える!あのシャーロック・ホームズが使った記憶術【科学が証明!ストレス解消法】
日刊ゲンダイDIGITAL6/13(金)18:35

「場所法」は誰にでも習得可能
【科学が証明!ストレス解消法】#219
エール大学のタルビングとモナシュ大学のトムソンが提唱する「符号化特殊性原理」という有名な理論があります。
これは、覚えたい情報に複数の「引き出し」をつくっておくことで、あとから思い出せる可能性が高くなるテクニックです。
例えば、家から駅に向かうまでの風景の中で、それに付随する英単語などをインプットすると、似たような光景を見たときに、スッとその単語を思い出しやすくなるという具合です。人にユニークなあだ名をつけることで忘れづらくするといったアプローチも同様で、多様な手がかりと一緒に覚えることで、あとで思い出しやすくなることが可能になるというわけです。
このように、場所などを活用して記憶を思い出させたり、定着させたりするテクニックがいくつか存在するのですが、そのひとつが頭の中に架空の場所(「精神の宮殿」)をつくり上げ、覚えたい事柄を、その場所の中に存在する特定のモノやヒトに当てはめて記憶する「場所法」です。
一例を挙げるなら、母から「卵」「牛乳」「お皿」「マヨネーズ」を買ってきてと頼まれたとしましょう。その際、自宅の「①玄関」「②寝室」「③ドア」「④お風呂」を想起し、それぞれ「玄関に卵が置いてある」「寝室に牛乳が置いてある」などと覚え、繰り返すことで覚えやすくなる──。このテクニックは、あの名探偵シャーロック・ホームズが使った記憶術としても知られ、古代ギリシャ人が発明した記憶術だともいわれています。
ウィーン大学の認知心理学者ワグナーらは次の実験(2021年)を行い、「場所法」が誰にでも習得可能であることを報告しています。
まず、記憶術習得経験のない50人の被験者を対象に、「場所法トレーニング」「作業記憶トレーニング(一時的記憶)」「まったくトレーニングしない」のいずれかを6週間実施しました。そして、トレーニング完了時に単語を覚えてもらい、4カ月後に再びテストを行いました。
その結果、4カ月後の単語の想起率は、場所法を行ったグループが平均50語、作業記憶のグループが30語、トレーニングなしのグループが27語だったといい、場所法がもっとも成績が良く、長期的な記憶を蓄えられることが分かったといいます。
また興味深いのは、被験者の記憶力と脳機能を分析すると、場所法トレーニング後は、脳の活性が穏やかだった。つまり、より少ない脳のリソースで多くの単語を覚えられたことが示唆されたという点です。単に机に向かって、にらめっこよろしく暗記するよりも、「精神の宮殿」をつくり上げて覚えていく方が、脳にとっても効率的なのです。
この記憶術は、楽しみながら覚えられる点も◎。元素記号の「H(水素)」「O(酸素)」「C(炭素)」を覚えたいと思ったとき、玄関に「H(水素)」のボンベが置いてある。リビングの窓から「O(酸素)」の風が吹き込む。キッチンのテーブルに「C(炭素)」のダイヤモンドが置いてある……。
このように想像力を働かせて覚えると、より効果てきめんでしょう。
(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)











