「9月までに供給されるメドが立ったと考えている」(菅首相)、「実質的に合意がなされている」(河野ワクチン担当相)――。米ファイザー社のワクチン供給を巡り、菅政権は“成果”のアピールに必死だ。16歳以上の接種対象者1億1000万人分の供給を「9月メド」と強調しているが、実は確約でも何でもなかった。契約書や合意書を交わしていないのだ。

「合意書を交わしているわけではない」

 20日の参院厚労委員会で、野党議員からワクチン供給について問われた田村厚労相は、そう答弁した。17日に行われた菅首相とファイザーのアルバート・ブーラCEOとの電話会談後、菅首相も河野担当相も、ファイザーから確約を得たかのような口ぶりだったが、正式の契約成立ではなかったのである。なんのことはない、ただの“口約束”だったのだ。

 問題を追及した立憲民主党の石橋通宏議員は、田村厚労相の答弁に呆れた様子で「(政府は)メドが立ったと勝手に言っているだけ」と突っ込んだが、田村厚労相は「中身の詳細については、つぶさに申し上げられない」の一点張り。石橋氏が「正確に情報提供すべきだ」と迫っても、具体的な内容はヒタ隠しだった。恐らく、具体的な内容は、何もないのだろう。

ファイザー日本法人は「協議継続中」

 菅首相とブーラCEOの電話協議について、日刊ゲンダイがファイザー日本法人に問い合わせたところ、「(追加供給について)協議は継続中である」(広報担当)とのこと。政権が喧伝する「9月までの供給」「実質合意」の中身は、合意書すらないばかりか、まだ話し合いの途中なのだ。

 政権の主張がいかに根拠薄弱か、ブーラCEOのツイッターからも読み取れる。

 ブーラCEOは契約状況について〈EUにワクチン1億回分を年内に追加供給することをお知らせします〉〈2022年の契約をイスラエル政府と初めて交わし、数百万回分のワクチンを供給する〉――と、逐次報告している。しかし、菅首相との協議については〈ワクチンの追加供給について菅首相と協議した〉としか触れていない。

 外務省のホームページにもブーラCEOから〈日本政府と緊密に連携していきたいとの発言がありました〉と書いてあるものの、「合意」や「実質合意」とは、どこにも書かれていない。政権は大ウソをついているのだ。

■選挙、五輪のための“やってる感”アピール

 加えて、ワクチン空輸には1便ごとにEUの規制が立ちはだかる。これが菅外交の実力なのだ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。

「河野大臣が『実質合意』なる不思議な言葉を使ったのも、合意書を交わすだけの外交力がなかったからでしょう。交渉力のあるキレ者なら、バイデン大統領を巻き込んで『ファイザーにひと言、言って欲しい』と展開できたはず。菅政権にはそうした外交力がないし、五輪や選挙を控えているから、『契約していないけど、合意している』という、あやふやな言葉で“やってる感”をアピールしている。自分たちの無能さや失敗を糊塗しているに過ぎません」

 政権の「ゴマカシ」には、もうウンザリだ。