新型コロナウイルスワクチンの接種が遅々として進まない。ワクチン不足が致命的なのは言うまでもないが、医療従事者を棚上げして12日に始まった高齢者向けもノロノロだ。都道府県別の総接種回数は「0」が続出。一体どうなっているのか。

 首相官邸HPに掲載された「これまでのワクチン総接種回数(高齢者、都道府県別)」(18日時点)によると、ゼロなのは栃木、埼玉、静岡、滋賀、兵庫、島根、佐賀、大分、熊本の9県。一方、愛知(1190回)、石川(1049回)、神奈川(1028回)、青森(1017回)の4県は4ケタ超えだ。

「入所施設を中心に接種は始まっています。ただ、内閣官房が管理するVRS(ワクチン接種記録システム)への入力作業が厄介で、追いついていない状態です」(大分県感染症対策課)

 官邸による公表データは、VRSに入力された数字に基づくもの。医療機関や自治体に対し、専用タブレットで接種券に記載された18ケタの数字を読み込み、接種対象者の名前や日時、場所などを記録するよう求めている。集計は毎週金曜締めだが、「13日に佐賀市内で2施設95人が接種済み。なぜ反映されていないのかは分からない」(佐賀県ワクチン接種調整チーム)と困惑の声も上がる。

「VRSの初期インストール段階で不具合が発生し、使用できなかった。官房マターなので県としてはどうにもできない。接種を優先し、入力は後回しにしている」(ある自治体の担当者)

 供給は綱渡り、システムはポンコツ。実績ゼロ扱いされ、問い合わせ対応に忙殺される自治体はいい迷惑だ。

 訪米中に米ファイザーのCEOと電話協議した菅首相は「9月までに供給されるメドが立った」と胸を張ったが、20日の参院厚労委員会で田村厚労相は「合意書を交わしているわけではない」と答弁。追加供給の「実質合意」を後退させた。自民党の下村政調会長は「医療関係者の協力が足らず、65歳以上に限定しても、来年までかかるのではないか」と冷や水を浴びせている。奇跡的に供給が円滑化したところで、スムーズに接種できるのか。

 昭和大学医学部客員教授の二木芳人氏(臨床感染症学)が言う。

「感染がコントロールされ、医療従事者のマンパワーを接種に割ける状況をつくるのが第一。高齢者よりも医療従事者を優先する必要もある。医療提供体制が逼迫した地域に派遣するための人手集めは難儀ですが、接種に応援を出すのはさほど難しくありません」

 あらゆる点で泥縄だ。