「ポスト菅」を決める自民党総裁選(29日投開票)は4候補が立つ乱戦で、勝敗の行方が分からなくなってきた。推薦人20人を確保し、滑り込みエントリーした野田聖子幹事長代行は遠慮ない物言いで論戦を撹乱。党員票に一定の影響を与えそうだ。世論人気の高い石破茂元幹事長や小泉進次郎環境相らの支持を前面に打ち出し、一発勝負で決めたい河野ワクチン担当相の目算はもろくも崩壊。決選投票にもつれ込む公算大だ。

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 総裁選告示日の17日、4候補は党主催の所見発表演説会や共同記者会見などに出席。ひときわ異彩を放ったのが野田氏だ。

 安倍前首相の子飼いの高市早苗前総務相はさておき、岸田文雄前政調会長も河野氏も最大派閥の細田派に影響力を持つ安倍氏や、第2派閥の麻生派を率いる麻生財務相の顔色をうかがって持論を封印。つまらない展開になる中、野田氏は唯一、森友問題の再調査に踏み込んだ。

「公文書の隠蔽、偽造、改ざん、廃棄。絶対にあってはならないこと」「多くの国民が納得していない」とハッキリ主張。安倍氏をイラ立たせようがお構いなし。他候補がそろって反対する女系天皇についても「議論を閉ざしてはいけない。さまざまな選択肢のひとつに女系天皇は含まれると理解している」と明言した。

 “ブロック太郎”の異名を持つ狭量な河野氏に対し、「私は決してブロックはしない。どんな嫌なことも受け止めて、それを逆に返せるように努めている」とグサリ。選挙候補者の一定比率を女性にするクオータ制導入を巡っても、「自民党では候補者選定をする段階で男性しかいない」「国民は半分が女性。政策のバランスを取るためには必要だと思う」と否定的な高市氏をやり込めた。

「女性初の首相候補」といわれてきた野田氏だが、過去3度の挑戦は推薦人が集まらず、今回が初出馬。今年3月出演のテレビ番組で「私が総裁選で推薦人を20人集めて全力で演説すれば、(女性首相誕生は)最短で今年の可能性はある」と言っていたぐらいだから、「聞かせる力」に、よほど自信があるのだろう。

「場数を踏んでいるだけあって話がうまい。顔と名前が売れているし、ジェンダー問題に関心の薄いタカ派の高市さんよりも親近感がある。女性に期待する党員・党友票は野田さんにだいぶ流れるんじゃないか。若手時代から夫婦別姓を訴えており、安倍さんらを意識して選択的夫婦別姓に消極的になった岸田さんの票も食うかもしれません」(自民党関係者)

■推薦人の6割が二階派と菅グループから

 もっとも、野田氏には「夫の過去」を報じた週刊誌との民事訴訟で、問題の夫が「元暴力団員」と認定された問題がくすぶる。幅広い支持を得られるかは微妙だ。

「野田陣営は推薦人代表と選対本部長くらいしか決めておらず、勝ち抜けるとは考えていない。だからこそ、開き直って論陣を張れる面があるし、『女性総裁候補』になるだけでも十分なハク付けになる。野田氏がカキ集めた推薦人は半数が参院議員なのも特徴ですが、二階派と菅グループが6割を占めている。告示ギリギリの出馬表明は、決選投票をにらんだすり合わせに時間を要したからでしょう。最終的には岸田・安倍・麻生連合vs“小石河”+野田連合の戦いになりそうです」(中堅議員)

 野田氏の撹乱で波乱の展開となるか。