【名門校のトリビア】

 お茶の水女子大学附属幼稚園

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 幼稚園の歴史は意外に浅い。ドイツのフリードリヒ・フレーベルという幼児教育研究家が1840年、小学校に上がる前の子どもを対象に創設したのが最初だといわれている。日本で最古の幼稚園は1876年に誕生した東京女子師範学校附属幼稚園。現在のお茶の水女子大学附属幼稚園(通称「お茶大幼稚園」)である。

 場所は東京・文京区のお茶の水女子大キャンパス内。約11万平方メートルの広さを擁するこの地に、幼稚園、小学校、中学、高校までの附属校と大学・大学院すべてが入っている。

 お茶大幼稚園は国立だけあって、費用も格安。入園料は3万1300円。保育料も年間7万3200円しかかからない。なお、これらは幼児教育無償化制度によって返金される。これ以外にかかるのは教材費やPTA会費など、年間約3万円だけだ。さらには、女子に関しては、全員ではないが、大学までの内部進学も望めるとあって、非常に人気は高い。

「評価が高い点はもうひとつある。幼児教育の研究の場でもあるので、その分野に精通するスタッフが集まっているのです」(お茶の水女子大関係者)

■お茶大幼稚園が大切にしている3つのこと

 ここでは、入園者の心身の発達を助けることを目的にしている。

「お茶大幼稚園には"3つの大切"があります。『自分のことを大切にする』、『まわりの人を大切にする』、『環境を大切にする』です。何か特別な教育をしているわけではありませんが、優しいお子さんが育つ条件は揃っていると自信を持って言えます」(同)

 そうした環境をもっとも評価したのは、秋篠宮文仁親王と紀子妃かもしれない。これまでの慣習を破って、長男・悠仁親王の幼稚園にお茶の水女子大附属を選んだのである。それまで、皇族は学習院というのがお決まりのコースだった。皇族男子が国立の幼稚園に通うのは初めてのことである。文仁親王は幼稚園から大学まで、紀子妃も初等科(小学校)から大学まで、学習院で学園生活を送った。にもかかわらず、悠仁親王をお茶大幼稚園に入れたのはどうしてだろうか。

「当時、学習院初等科に通われていた徳仁天皇(当時皇太子)の長女・愛子さまをめぐるトラブルが次々に浮上。秋篠宮ご夫妻は学習院に不信感を持たれていた。悠仁さまを別の学校にやりたいと考えたご夫妻は、紀子さまのご意見もあり、お茶の水を選択されたのです」(宮内庁担当記者)

 悠仁親王がお茶大幼稚園に入園したのは2010年。紀子妃はその前年から、日本学術振興会の名誉特別研究員として、お茶の水女子大で人文科学の研究活動を始めていた。同キャンパスの静かなたたずまいを気に入り、ここなら落ち着いて教育が受けさせられると、悠仁親王を入れることに決めたのだという。

 といっても、簡単に入園できるわけではない。人気の幼稚園だけあって、非常に狭き門なのだ。ただ、悠仁親王が入試を受けることはなかった。皇族だから優遇されたわけではない。お茶の水女子大の女性研究者については、支援の一環として、その子どもに対する特別入園制度が設けられており、それを活用したのである。

■最難関は公開抽選…その方法とは

 一方、通常の入試はどうなっているのだろうか。募集定員は、3年保育は男女各20人、2年保育は男女各10人。ここ3年、計60人の募集に対し、19年度入園の応募者数907人、20年度793人、21年度859人と推移している。なお、応募できるのは保護者と同居していて、幼稚園から半径3km以内に在住していることが条件になっている。

「まず最初の関門は第1次検定。ある意味、ここが最難関といえるかも」と振り返るのは、数年前に長女が3年保育に合格したという保護者の女性。この段階で、3年保育は男女各60人、2年保育は男女各40人まで絞られるのだ。

 その方法は、大学講堂で行われる公開抽選。壇上に置かれた1〜100の球が入った抽選機を園長がグルグルと回す。そこで出てきた球のナンバーが37だとすると、37、137、237…の受験番号を持った受験者が当選。それぞれの人数に達するまで、抽選が続けられ、当選した者だけが第2次検定に進むことができる。

「どんどん決まっていき、もうダメかなとあきらめかけた時に、こちらの持っている番号が出た。それ以上、抽選機を回すことはなかったので、正真正銘、最後の最後。ラッキーでした」

■第2次検定で注意すべき点

 第2次検定は小集団テストと面接。入試を設けている幼稚園の大半で行われている選抜方法だ。落ち着いて臨めるかどうかが合否を分けるが、小学校受験と違って、テクニックはそれほど必要ない。

「他の幼稚園受験でも同様ですが、母子分離ができていないと難しいと聞いていたので、その点だけは注意しました。普段の生活でも、私が離れていても不安がらないように、少しずつ訓練していたのが合格に結びついたと思います」

 こう話す保護者は、「ここに入れて本当に良かった」と何度も繰り返す。

「何より、子どもに好きなようにさせているのが素晴らしい。子どもたちは幼稚園に行くとまず、どうやって遊ぶのか、それぞれが自分で考えるのです。先生が何かを押しつけることは一切ない。伸び伸び育っているのが手に取るようにわかります」

 開放感にあふれる同幼稚園で3年間すごした悠仁親王も来春は高校。男子の場合は中学までしかないので、お茶の水女子大キャンパスから出なければならない。まもなく進路が発表される。

(田中幾太郎/ジャーナリスト)