巨人の菅野智之(34)が16日、体調不良のため、出場選手登録を抹消された。

 阿部慎之助監督(45)は「一回飛ばすから抹消する。こればかりは仕方ない。軽症? 大丈夫だと思う」と説明した。

 16日現在、21勝16敗3分けで阪神とゲーム差なしの首位争いを演じる。今季の巨人は良くも悪くも「想定外」続きだ。 

 例えば、前日15日のDeNA戦に先発した堀田賢慎(22)がそうだろう。6回無失点で無傷の3勝目を挙げ、防御率は圧巻の0.74。元ドラ1の有望株ながら、今季は開幕ローテに残れず、4月は中継ぎ起用されていた。それが5月に先発に抜擢されると、破竹の勢いで勝ち始めるのだから、分からないものである。

 長いシーズンは、そんな予期せぬことが起こる。菅野もしかりだ。昨季4勝8敗に終わった元エースがここまで4勝0敗、防御率1.37。阿部監督は春のキャンプ時、「智之は普通の中6日ではなく、中7日や投げ抹消で10日間しっかり間隔を空けてあげれば、まだまだやれる」と構想を語っていた。それが、これまでは主に中6日で結果を出している。

 巨人OBで元投手コーチの高橋善正氏(評論家)がこう言った。

「阿部監督が演出した好スタートと言っていいと思う。開幕カードやカードの頭を避け、今年は先発6人目でスタート。相手の先発も最後の枠でローテに滑り込んだ投手との対戦になるから勝利の可能性は高まる。気楽な6番目スタートという阿部監督の配慮も大きかったと思います」

 捕手にも「想定外」があった。昨季134試合でマスクをかぶり、打率.281、16本塁打、55打点。打撃3部門でキャリアハイをマークした大城卓三(31)が、今季は23試合で打率.188、0本塁打、3打点と不振。8日に二軍落ちとなった。代わってマスクをかぶるのが、小林誠司(34)と岸田行倫(27)の2人。特に存在感を発揮しているのが、2017年にゴールデングラブ賞に輝いた小林である。

 もともと守備面には定評があったものの、課題の打撃面は一向に上向かず、ここ数年は出番が激減。昨季はわずか21試合の出場にとどまっていた。今季はすでに17試合(先発14試合)に出場し、投手陣を支えている。前出の高橋氏が言う。

「大城は東海大相模、東海大出身で原前監督の直系の後輩。打撃を重視した原前監督の時代は重宝されたものの、投手を中心とした守備を重視する阿部監督は、大城のリードを含め、捕手としての立ち居振る舞いに不満があると聞く。チャンスをもらった小林は、菅野に対して息の合ったリードで元エースの復活に一役買っている。それにしても阿部監督は、昨年あれだけ活躍した正捕手の大城をよく代えられたなというのが正直なところ。原監督時代の晩年はずっと二軍だった小林を再生させたのも、捕手出身の阿部監督にしかできない芸当でしょう」

 ドラフト1位・西舘勇陽(22=中大)の起用法にしても、当初、阿部監督は「先発」と明言。しかし、開幕ローテ争いから脱落すると、勝ち試合のセットアッパーに組み込んだ。現在13ホールドで巨人の開幕ダッシュに貢献した。

「先発がダメだと、普通は二軍で先発をしながら、『一軍からお呼びがかかるのを待て』となる。それが、阿部監督は即座にセットアッパーに配置を換えて一軍に残した。捕手出身らしく、投手を見る眼力が采配に生かされています」(巨人のファーム関係者)

 開幕直前、阿部監督は調子の上がらない新助っ人のオドーア(30)に対し、二軍再調整を指示。それを拒否したオドーアはそのまま退団となった。大きな「想定外」だが、これもプラスに転じた。

「メジャーで実績があろうと、二軍は二軍とはっきり言える。もし、言われるがままに打てないオドーアを一軍に残していたら、巨人は首位にいたかどうか。4月に故障からの復帰登板で4回8失点だったグリフィン(28)を1日で二軍落ちさせたのも、助っ人だろうが容赦しないという意思表示。特別扱いはしないという阿部監督のブレない方針を浸透させることになり、チームに信頼感と緊張感を生んでいる。これも想定以上の結果を引き出すことにつながっています」(高橋氏)

 勝負はまだまだ先とはいえ、監督を代えた甲斐はあったと言えそうだ。