時代の流れに逆行…花形種目のマラソンが五輪から消える日

時代の流れに逆行…花形種目のマラソンが五輪から消える日

 東京五輪のマラソン、競歩の札幌移転が正式に決まり、組織委員会はコース選定や日程調整に動いている。12月3日からIOC(国際オリンピック委員会)の理事会が始まる。それまでに発着点やコース案などを決めることになる。

 マラソンコースは毎年8月に開催されている「北海道マラソン」を基本とする周回コースが濃厚。日程に関しては、大会最終日(8月9日)はドーピング検査があるので、札幌から東京に移動すると選手らが閉会式に間に合わなくなる。森会長は前倒しに言及したものの、IOCから「男子マラソンは最終日にやるのが通例だ」と連絡を受けたことから、最終日に行う可能性も残されている。

■東京を離れた周回コース、日程前倒し

 マラソンは2012年ロンドン大会で、五輪初の周回コースで行われ、前回のリオ大会もそうだった。しかし、メイン競技場が発着点になってもワンウエーコースが基本だ。東京開催でも会場が札幌に移り、コースも周回。競技日程も最終日から前倒しとなれば、これはもう五輪のマラソンとは言えないだろう。

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は、今回の札幌移転についてこう語る。

「IOCのバッハ会長が一番懸念しているのは五輪の継続です。28年ロス大会の後に開催を希望する国が出てくるのか。札幌移転が分散開催の前例になったことで、今後マラソンなどのロードレースに関しては柔軟な対応ができるということ。『アジェンダ2020』では、例外的に開催国以外の実施も認めています」

 小池都知事は先日のIOC調整委員会で「7、8月のこの時期の(五輪)開催は難しい……(現状の気候では)北半球のどこをとっても、過酷な状況になるのではないか」と、開催時期の再考を求めたが、巨額な放映権を手放したくないIOCにその気はない。東京五輪までの米国地域での独占放映権を持っている米NBCはさらに、32年大会までの放映権を取得。1OCはそれだけで76億5000万ドル(約8340億円)が入る。

■近年は時短の流れ

 一方で、「五輪種目からマラソンが除外されるのではないか」と危惧する声もある。

 紀元前490年のギリシャの「マラトンの戦い」に由来するマラソンはこれまで、大会最終日を飾る花形種目だった。開催都市の観光名所、魅力を世界にアピールできるメリットもあった。

 ところが、五輪マラソンは「時代」の流れにそぐわなくなってきた。レース当日の気温にもよるが、ペースメーカーがいない五輪は、トップでゴールする選手でも2時間10分前後はかかる。テニスも3時間超えの試合はあるが、長いラリー戦は見ていて飽きない。その点マラソンは、興味がないものにとっては単調で面白みに欠ける。日本選手がメダル争いしなければなおのことだ。

 近年は多くの競技が試合時間を短縮している。バレーボールは1999年にサーブ権(サイドアウト制)がなくなり、ラリーポイント制に移行。柔道は東京五輪に向けて「有効」を廃止。抑え込みでの技ありが15秒から10秒に短縮されただけでなく、男子の試合時間も5分から4分になった。

 野球が五輪競技から除外されたのは試合時間の長さが一因といわれている。ラグビーは前回のリオ大会で、1924年パリ五輪以来の復活を遂げたが、男女7人制の7分ハーフになり、3日間で終了する。

■50キロ競歩は除外に

 日本にとって痛いのは、9月の世界陸上で鈴木雄介が金メダルを獲得した男子50キロ競歩だ。今年3月に除外が決定し、この種目がオリンピックで見られるのは東京が最後。4時間を超える競技時間と若者に人気がないことが除外の理由だとみられている。

 5日の陸連会見で瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「(IOCに対し)もし東京でやらなきゃ困ります、ということを押し通したら『五輪でマラソンはやらなくていいと言われるのではないか』という思いがあった」と胸の内を明かした。専門家も「五輪マラソン」に危機感を抱いているのだ。

 スポーツライターの工藤健策氏が言う。

「IOCは時短とテレビ視聴率を意識して東京五輪から、サーフィン、スポーツクライミング、スケートボードなどが採用される。若者を取り込むことに躍起になっている。マラソンはその流れに逆行しているという声は確かにある。今後もマラソンを続けるというなら今の形では難しいと思う。42・195キロのワンウエーでは、サポートするスタッフやボランティアは500人以上も必要で、警備員もかなりの数が必要です。競技時間が長いだけでなく準備や警備に多くの時間と経費を要する。フルマラソンにこだわらず、ハーフや30キロで行うのも一つの手です」

 今回の騒動でグチャグチャにされた五輪マラソン。いつ消えてもおかしくない。


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