世界の男子ゴルフ界が混沌とした様相を呈している。

 PGAツアーとLIVゴルフ招待の“覇権争い”のことだ。どちらの団体もトッププロを巻き込んで正当性を主張するばかりで歩み寄りが見られず、それどころか莫大な資金をつぎ込んでメンツを保つことに必死で危険な領域まで足を踏み入れてしまっている。

 ただ冷静に考えると、LIVの方が大きなリスクを抱えているといえそうだ。

 当初、LIVは20億ドル(約2880億円)がサウジアラビア政府系ファンドから出資されてスタートしたとみられている。

 LIVを主導するCEOのグレッグ・ノーマンは、それを元手にダスティン・ジョンソンに1億2500万〜1億5000万ドルを支払って4年契約を結び、PGAツアーからトッププロの引き抜きに成功したと噂されている。その他にも、フィル・ミケルソン、ブルックス・ケプカ、パトリック・リード、ブライソン・デシャンボー、そしてキャメロン・スミスに1億〜2億ドルを用意して相次いでLIV移籍プロを発表してゴルフ関係者を驚かせた。

■試合開催だけで年1億5000万ドル

 移籍金に使った額は定かではないが、今年は優勝賞金400万ドルの大会が年8試合、来年は14試合開催の予定だ。

 ざっと見積もって、試合開催だけに年1億5000万ドルはかかる。

 ただサウジアラビア政府系ファンドからの資金提供はこれ以上望めそうもない。もともと、人権問題や同時多発テロで批判されているサウジの米国での印象を変えるために資金を出したとされているが、これがスポーツウォッシングだと批判され、これ以上のカネを出す意味を失っているからだ。

 ノーマンはサウジの資金が尽きる前に、ビッグネームを看板に、LIVを興行として成功させるもくろみだ。

 観客のチケット収入はもちろんだが、特に米国でのテレビ放映権料やネットでの放映などで、十分採算が取れるようになると踏んでいる。

 確かにPGAツアーの放映権料収入はCBSとNBC、それにケーブルのゴルフチャンネルが支払っているが、かつては、ABCも放映し、フォックスTVもまだ完全には諦めていない。ディズニーもコンテンツとしてゴルフに興味を示している。メジャー1試合の放映権料が1億ドル前後といわれる昨今、LIVのもくろみは全く現実味のない話ではない。

 しかし、それもサウジの資金が尽きる前に、新ツアーとして人気を高めてPGAツアーのように成功させることが急務なのだ。ようするにLIVがこれから生き残るために使える時間とカネがだんだん少なくなっているのは確かだといえる。

(ゴルフライター・吉川英三郎)