衆院3補選が28日、投開票された。自民党派閥の裏金事件や元自民党議員の公選法違反事件を受けた補選で、自民党は候補すら擁立できず不戦敗となった東京15区、長崎3区に加え、唯一候補者を擁立し、与野党対決となった保守王国の島根1区でも立憲民主党の候補に敗れ、3戦全敗となった。

当初から劣勢が伝えられていた島根1区には、元財務官僚の錦織功政氏(55)を擁立。岸田文雄首相は選挙中2度も応援に入り「逆転の錦織」と訴えたが、その末に敗れ、求心力の低下は避けられない。今回の島根1区補選は、細田博之前衆院議長の死去に伴う「弔い選挙」で、通常は自民党に有利なはずだった。しかし、かつて竹下登元首相を生み、強固な保守王国の1つでもある島根で、小選挙区制移行後の1996年衆院選から細田氏が守ってきた議席を失ったことは、自民党派閥の裏金事件に対する有権者の怒りの深刻さを物語っており、自民党内にも大きな衝撃をもたらしている。

岸田政権に対する「直近の民意」となった3補選での全敗。「ケンカ師」で知られ、早期の衆院解散のタイミングを模索しているとされる岸田首相だが、「選挙の顔」の資質に「NO」を突きつけられた形だ。今回の結果は首相の解散戦略に影響するとともに、岸田首相では次期衆院選を戦えないとする声がさらに自民党内で高まれば、「岸田おろし」につながる可能性もある。

岸田首相は今後、得意と自負する外交を中心に事態打開の局面を見いだすとみられるが、状況は不透明だ。後半国会最大の焦点となっている政治資金規正法改正に向けても自民党の消極的な姿勢を野党は批判しており、こちらでも再考を迫られる可能性もある。

2022年参院選の勝利で「黄金の3年」を手に入れたといわれた岸田首相だったが、今や見る影もない。裏金問題がもたらした国民の怒り、自民党内の混乱の大きさがはかりしれないことが、今回の3補選であらためて明らかになった。