<ヤクルト4−3DeNA>◇19日◇神宮

「神」が「王」を呼び戻した。ヤクルト村上宗隆内野手(24)が、DeNA4回戦(神宮)の8回、2試合連続3安打となる決勝の3号ソロを放った。22年に最年少22歳で、令和初の3冠王を戴冠した村神様。今季はその年3冠王ルーティンを2年ぶりに取り入れる。「何が正解か分からない」と答えを探し続ける。18日の中日戦(バンテリンドーム)に続く2戦連発は、今季神宮初アーチ。神であり、王である男が、チームを最下位脱出に導いた。

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王者の風格。村上は、一塁へとゆっくりと踏み出した。バットは持ったまま。両手で持っていたものを左手に持ち替え、最後は右手に。見つめていた打球をもう追う必要はなかった。視線は一塁側ベンチ方向。豪快にバットを投げた。人さし指が示すは「1」。唯一無二、ナンバーワンの打者だからこそ、成せる約5秒間の確信めいた歩み。「いやもう完璧でしたし、久しぶりって感じです」。それ以上の表現はいらなかった。

覇王色さえ漂わせていた。3−3の8回先頭。2ストライクと追い込まれてからの3球目。「対戦の成績からして、高めのストレートで抑えられているというのがあったので、球も下から伸びてきますし、そこを意識しながら入りました」と、九州学院(熊本)の先輩・伊勢の外寄り高め速球をつぶした。「久しぶりに打てて、すごくいい球場で打ててうれしいです」。前日18日の中日戦に続く2戦連発弾は、ファンが歓喜する神宮で24年1発目。燕党が待ち受ける右中間スタンド中段へぶち込んだ。

22年に最年少22歳、そして令和初の3冠王に輝いた。気付けば周囲は「王」だけではなく、「村神様」とあがめるようにもなった。

今季は、その時代に行っていた試合前ルーティンに戻した。杉村打撃コーチとの、2年ぶりの約10種類のティー打撃。<1>片手で右<2>片手で左<3>両手<4>足上げずに<5>真横<6>遠めの真横から速いトス<7>近くの距離から低め<8>斜め前から高め<9>前に進みながら5連続ティー<10>バットを振り下ろし、素振り後のティー。この日はロングティーも行うなど、王となり、神となった今もあぐらをかくことはない。

答えが見つかっていないから。

村上 何が正解かわかんないんで。とりあえずバッティングは、打つことが正解なんで。変えたことがもしかしたら不正解だったかもしれないですし。いろんなことを試しながら、道は見つけていけるので。全てが、それが、正解っていうのがないんで。

破壊、そして再生、その先に創造がある。2年ぶりの理由も「今はこういうティー打撃をした方がいいのかなと思ってますけど」と時代に合ったモノを探している。ゴールは見えている。それは2度目の3冠王。その道を探す旅の途中。王であり神が、まだ知らぬ、新天地へ足を踏み入れる。【栗田尚樹】

▽ヤクルト高津監督(村上について)「昨日の1発もそうですけれども、昨日は先制で、今日はもう決勝のホームランと、本当になんて言うかな。4番の働きというか、こちらが期待してる通りの答えを出してくれましたね」

▼19日のプロ野球は計13本の本塁打が飛び出した。前日18日までは99試合で79本と1試合に1本出ないペースで進んでいたが、今季初めて1日10本以上出た。

○…オスナが2戦連発の4号ソロを放った。1点を追う6回先頭。DeNA東の甘く入った直球を左翼スタンドへ豪快に放り込んだ。前夜は中日相手に、3号満塁弾。移動ナイターも疲れ知らずで「毎日全員で戦っている。野球っていうのはそういうスポーツなので。今は全員本当に調子を上げてきてるって思いますし、上がり目がある」と頼もしかった。

▽ヤクルト塩見(3月31日中日戦以来の打点)「死に物狂いです。本当にチームのために何とかと」

▽ヤクルト石山(3年ぶりのセーブ)「どこに誰が入るかというのは、まだわからないですし、全員でやっていくというのは言われているので、全員でつないでゼロでいければ勝てると思うので、何とかみんなで力合わせて頑張りたい」