ともに歩んできた兄への恩返しを。大宮東(埼玉)のエース左腕、冨士大和投手(3年)が、最後の夏に向け意気込みを語った。

「兄は憧れであり、目標です」。兄の話題を振ると大和の言葉に熱がこもった。大和の兄は冨士隼斗投手(22)。高校時代は大宮東、昨年まで平成国際大でプレーした最速155キロ右腕で、現在は日本通運でプレーしている。大和はこれまで兄の背中を追い続けてきた。

二人三脚でレベルアップしてきた。隼斗が実家に帰ってきた際、大和は自身の投球映像を見せて助言を求めた。すると「下半身の力を球に伝えるためには胸郭の反発が必要と教えてもらった」と胸の伸縮の重要性を説かれた。

その後、胸郭のトレーニングに取り組むと、球速が上昇。入学当初120キロだった球速は1年後に133キロ、現在は144キロに達するなど、成果が表れた。たくさん助言を授かり成長につなげてきたが「これが一番参考になりました」とうなずいた。

大和は現在チームのエースでプロ注目の左腕だ。一方の兄・隼斗は高校時代公式戦登板がなく、大学で急成長を遂げたものの昨年のドラフトで指名漏れを経験した。それでも「兄はいつも『自信を持て』と勇気づけてくれている」と心の支えになっている。「自分が今年先にドラフトイヤーなので、兄を追い越してプロに行きたい」。14日に新座柳瀬との初戦を迎える。兄弟の悲願であるプロ入りに向け、夏は圧倒的な投球を見せる。【野見山拓樹】

◆冨士大和(ふじ・やまと)2006年(平18)8月26日、埼玉県さいたま市生まれ。大宮パワーズで野球を始め、中学時代は三橋中でプレーした。憧れの選手は日本通運でプレーする兄の冨士隼斗。186センチ81キロ。左投げ左打ち。