<高校野球福岡大会:香椎9−0有明高専>◇30日◇1回戦◇大牟田市延命

福岡大会1回戦6試合が行われ、春夏通じて初の甲子園出場を狙う公立校の香椎が7回コールドで初戦を突破した。1番桑畑颯人外野手(3年)が2本の適時打を放ち、3打点の活躍。リードオフマンとして計11安打9得点の打線をけん引した。福岡−純真戦は悪天候で今大会初の継続試合に。6回表2死二塁から再開される。香椎工は3年ぶりに夏1勝をつかんだ。

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香椎ナインが、勝利の校歌を全力で歌い上げた。これでもかと体を大きくのけぞらし、空に向かって歌声を届けた。桑畑は「前の代から、夏は勝ったら全力で歌っています。応援してくれた方へ校歌で恩返しを伝えたいので」と胸を張った。18年に甲子園準Vを果たした金足農を思い起こさせる姿。ただ、出来栄えに「かなりずれてましたね…。昨日も練習はしたんですけど」と苦笑い。音源と歌声が重ならない部分もあったが、そこはご愛嬌(あいきょう)だ。

打っては1番打者の役割を果たした。2−0の2回2死二塁の第2打席。外角の直球を流し打ちし、左翼線へ適時三塁打を放った。3回2死満塁は中前へ2打席連続タイムリー。2本とも中堅から逆方向へ。あこがれのソフトバンク近藤のような、基本に忠実な打撃を意識。「近藤選手のバッティングがまじで好き。どんな球種でも打っている」。普段から、球界を代表するバットマンを参考にしている。

信念もある。小1から小3まで学童サッカーチームに所属したが、本音は「野球がやりたかった」。野球を始めた小4まで約3年間、父圭丞さん(51)に思いを伝え続けた。「信念はぶれない子ですね。志は高いと思います」と自慢の息子だ。副主将を務め、練習から常に試合を想定して動く。仲間にも妥協は許さず、チームのためなら嫌われ役もいとわない。

「甲子園に行って校歌を歌いたい」。聖地での“全力校歌”を夢見て、激戦区・福岡を勝ち上がっていく。【佐藤究】

◆桑畑颯人(くわはた・はやと)2006年(平18)7月12日、福岡・粕屋町出身。小学4年から野球を始め、粕屋東中では福岡中央ボーイズに所属。香椎では2年秋に背番号15で初のベンチ入り。好きな芸能人は女優の今田美桜。趣味はカラオケ。十八番はシンガー・ソングライターの川崎鷹也が歌う竹内まりやの「元気を出して」。50メートル走6秒3、遠投85メートル。163センチ、68キロ。右投げ左打ち。

○…香椎工は主将の高木翼外野手(3年)が勝負を決めた。1−1の8回2死一、二塁。「チャンスだったのでここしかないと思った」。初球の内角直球を引っ張り、左前へ値千金の勝ち越し打を放った。「キャプテンとしていい仕事ができた」と納得の表情だ。3回は中堅の守備でダイビングキャッチを披露。部員65人を束ねる主将が攻守で躍動し、3年ぶりに初戦を突破した。