<プロボクシング:WBO世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇6日◇東京ドーム

元K−1スーパーバンタム級王者でWBO世界バンタム級5位の武居由樹(27=大橋)が、同級王者ジェーソン・モロニー(33=オーストラリア)に3−0判定勝ちし、日本ボクシングコミッション公認の日本ジム所属100人目の世界王者となった。同時に初の「K−1」と「ボクシング」の“2冠”も達成。ベルトを右肩にかけ「足立区から来た武居が東京ドームで世界チャンピオンになりました!」。生まれにちなんだ恒例のあいさつで観客を沸かせた。

19年にK−1スーパーバンタム級世界最強決定トーナメントを制し、21年にボクシングへ転向。初めて挑む世界戦は序盤から積極的に攻め、サウスポー独特の距離から上下にパンチを打ち分けた。2回にローブローで減点を受けたが、前に出る姿勢は崩さなかった。これまで8勝8KOだけに、12ラウンドを戦い抜いたのも初。最終ラウンドは王者の猛攻を受け「結構きつくて。ほんとはKOで勝ちたかったんですけど、モロニー選手はほんとに強くて」と悔しさをにじませた。

この勝利でバンタム級は、WBA井上拓、WBC中谷、IBF西田、そしてWBO武居と、世界主要4団体の王座を日本勢が独占。今後の展開が注目される中「今日の試合内容ではまだまだ。強くなって戻ってくる」と引き締めた。

白井義男が、後楽園球場で世界フライ級王者ダド・マリノ(米国)に判定勝利し、日本初のボクシング世界王者となった52年5月19日から72年。同じ地で、99人の王者が紡いだ歴史に「武居由樹」の名が新たに刻まれた。【飯岡大暉】

◆武居由樹(たけい・よしき)1996年(平8)7月12日、東京・足立区生まれ。母子家庭だった10歳の時、同区のPOWER OF DREAMジムの古川誠一会長(56)の自宅に住み込み、キックボクシングの練習を開始。都立足立東高時代はボクシング部に所属。14年11月、K−1傘下のKrushでプロデビュー。17年にK−1スーパーバンタム級王座を獲得。17年のK−1年間最優秀選手に選出。キック戦績は23勝(16KO)2敗。20年12月にボクシング転向。22年8月、東洋太平洋同級王座を獲得。身長170センチの左ボクサーファイター。

◆キック出身の主なボクシング世界王者 スーパーライト級王者としてムエタイ無敵を誇ったセンサク(タイ)は75年7月、転向3戦目でWBC世界同級王者フェルナンデス(スペイン)に8回KO勝ちし世界王者に。3戦目での世界王座奪取は最短記録。ムエタイ3階級制覇のウィラポン(タイ)は95年9月に転向4戦目でダオルン(タイ)に判定勝ちしWBC世界バンタム級王座を獲得。元WBO、WBC世界ヘビー級王者のビタリ・クリチコ氏もK−1参戦経験のあるキックからの転向組。

○…王座から陥落したモロニーは完敗を認めた。「相手に合わせる調整に時間がかかった」とキック出身の武居のスタイルへの準備が間に合わず、大差判定負けの結果となった。「自分のスタイルを出せなかった。武居選手の強さを称賛したい」と潔かった。