■1997年、上場準備に携わる。

早稲田アカデミーの校舎数が増える一方で、運営面の課題が無視できなくなってきました。本業である教育を支えるには、事務方の仕事が欠かせません。授業料の収納管理から広告宣伝、教材の在庫管理や情報システム構築まで、あらゆる事務作業を引き受ける運営部を立ち上げ、97年に部長に就任しました。

当時の須野田誠社長に積極的に意見を伝えていたことで、思いが共有できていたのでしょう。「上場を目指すため運営体制を整えてほしい」と言われた記憶があります。

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■夏合宿でも日本一を目指す。

運営部を率いるようになり、最初に手を付けたのが夏合宿です。

今では早稲田アカデミーの代名詞にもなっている夏合宿ですが、当初は仲間と遊んで思い出をつくるのが主目的で、勉強はおまけのような扱いでした。進学塾である以上、遊びがメインではいけません。テコ入れのために考えたのが規模の拡大です。

合宿では複数の校舎から生徒が集まり、学力別にクラスを分けます。1つ目の狙いは、優秀な生徒に刺激を与えること。自分の校舎でトップでも、「上には上がある」ことを合宿で目の当たりにするのです。もう一つは達成感です。クラスが細分化されているので、少し頑張ればすぐに上のクラスに進級できます。成績が伸び悩んでいた生徒が合宿で得る達成感は、冬の受験で役立ちます。

合宿で成長するのは生徒だけではありません。生徒を預かるため、普段の授業より安全管理が重要になります。バスを手配するだけでも、出発地や台数などシミュレーションを重ねました。合宿に参加する講師の研修にも力を入れました。

合宿はアルバイトの講師が入社を決めたり、社員が校長を目指したりするきっかけにもなります。かつて合宿参加者は2千人程度でしたが、今では1万人規模になりました。売り上げも数億円に上り、業績を支えています。

■コロナ禍でも学習は止められない。

今年も夏合宿を実施したかったのですが、新型コロナウイルスの影響で断念せざるを得ませんでした。代わりに都内で会議室などを借りて「夏期集中特訓」を実施しました。学力別にクラスを分け、合宿と同じように普段の校舎とは違う、ライバルと競い合える環境を整えました。

様々な理由で会場に通えない生徒にはオンラインでも授業を提供しました。コロナ禍でも学習を止めないことが、我々の使命だと考えています。

■あのころ……

2002年に学習指導要領が改訂され、いわゆる「ゆとり教育」が始まった。学力の低下を心配した保護者は私立の中高への入学を希望し、特に早稲田大学や慶応大学などの付属校の人気が高まった。早稲田アカデミーでは有名大学の付属校の合格者数増加に力を入れた。

[日本経済新聞朝刊 2020年9月15日付]

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