日本の格差、やや改善 現役世代の負担はより重く

政府は9月から「全世代型社会保障検討会議」を始めました。働く高齢者の年金を増やす案が出ていますが、その分、現役世代の将来の年金が減る可能性もあります。看板通り、現役世代も安心して暮らせる社会保障になることを期待します。

■白波瀬佐和子・東京大学教授「根強い社会問題として議論を」

日本で格差を感じている人もいれば、平等な社会と感じている人もいるのではないでしょうか。日本の格差をどうとらえたら良いのか、社会階層論が専門の白波瀬佐和子・東京大学教授に話を聞きました。

――日本の格差の議論はどう変化してきましたか。

白波瀬佐和子・東京大学教授

「バブルが崩壊してしばらくした1990年代後半から格差が注目されるようになりました。2000年代にはワーキング・プアといった『貧困』の問題に変わりました。その時々によって注目される側面が変化しますが、格差を含む不平等についてはアリストテレスやプラトンの時代から議論されてきた根源的な問題のひとつです。日本では格差の程度の変化から始まる議論が多いですが、根強く存在する社会問題として議論することが大切です」

――世界的に見て日本はどのような状況にありますか。

「国際的に比較する際には、世帯の人数の影響を考慮した『等価所得』によるジニ係数が使われます。経済協力開発機構(OECD)の2016年のデータによると、日本は0.33です。米国(0.39)より低いですが、ドイツやフランス(共に0.29)、スウェーデン(0.28)よりは高い。日本は『一億総中流社会』と格差の小ささが強調されたこともありましたが、今は決してそうではありません」

――日本では単身世帯の増加など、世帯構造が急激に変化しています。格差に影響はありますか。

「全体としての詳細な影響のパターンを示すのは難しいですが、高齢者層の世帯構造の変化が目立ち、その影響はあります。1980年代半ば頃までは、高齢者の多くは子ども家族と同居していました。一方で、高齢者の一人暮らし、特に女性の場合の困窮度は深刻でした。三世代世帯の高齢者と一人暮らしの高齢者に大きな格差があったのです。しかし、今は高齢者の一人暮らしや夫婦のみ世帯が増えましたし、昔よりは社会保障が改善されました。これにより高齢層の経済格差は縮小しています」

――格差は問題でしょうか。

「経済格差をゼロにすることは難しいでしょう。ただ、格差の程度はコントロールできます。あまりに不条理な格差を放置し、階層が固定化すれば、国の活力は失われていきます。生まれた家庭に不利があっても、努力次第で挽回できる仕組みが必要です。その一つが教育です。これまで日本では、公教育と子どもの格差や貧困の関係の議論はあまりされてきませんでした。データ分析も遅れています。例えば、出身階層と子どもの成績の関係をみたいのであれば、全国学力テストの結果などは貴重なデータとなります。データ公開と実証分析をもっと積極的にすべきでしょう」

(福山絵里子)


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