聖光学院中学校・高等学校には「探究基礎」という独自科目がある。授業に使うのはブロック玩具「レゴ」。ここでは対話技法や心理面に磨きをかけるのが狙いだ。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏がユニークな授業風景を取材した。

(上)宗教から科学掘り下げ 聖光学院が問う「正しさ」の先

■NASAやグーグルも採用するプログラムを応用

大教室に中3の半分の生徒が集まっている。それぞれの机の上には大量のレゴが置かれている。レゴを使った教育・研修プログラム「レゴシリアスプレイ」を用いて、内省やメタ認知能力を鍛える。レゴシリアスプレイとは、米航空宇宙局(NASA)や米グーグルなどの巨大組織でも用いられる、問題解決やチームビルディングのための対話法だ。実際に授業の様子を見てみよう。全5回の授業の3回目にあたる。

生徒たちは3〜4人のグループに分かれて席に着く。担当の名塩隆史教諭から前回までの授業の簡単な振り返りがあったあと、ウオーミングアップとして「いまの気分をレゴの1ピースで表現してください」という課題が与えられる。

生徒たちは直感的にいまの気分に合う色と形と大きさのピースを選ぶ。そして同じグループのメンバーになぜそれを選んだのかを説明する。1限目の授業だったので「眠い」が多い。それでいい。

これがレゴシリアスプレイの対話技法である。感情や理想やアイデアをまず形で表したあとに、対話のなかで言語化していく。その意味を私なりの解釈で説明するならば、以下のようになる。

言葉のみによる議論だと、途中で方向性が限定されたり、感情の衝突が生じたりして、自分の思いの丈を最後まで伝えられないこともある。しかしレゴを使えば、作品を見せ合ったときすでに、あるテーマについて、メンバーのそれぞれが自分の考えをぼんやりとでもすべて書き尽くした「手紙」を持ち寄っているのに近い状態ができあがる。まだ言語化されていないその「手紙」の意図を言語化しながら共有することで、全員が平等に自分の考えや感情を述べられる場が実現する。さらに、手を動かしながら考えることで、すでに顕在化している理屈だけでなく、潜在意識のなかにある感情や発想までも引き出せる。自分でも気づいていなかった表現にたどりつくこともある。

ウオーミングアップが終わると、ワークシートに取りかかる。この日のテーマは「SDGs(国連が定めた持続可能な開発目標)を利用して関心事の傾向を探る」だ。ワークシートの冒頭には法学、経済学、文学、哲学、理学、工学など、大学で学べる主な学問分野が列挙されている。「世の中になんらかの問題があるから、その解決のために学問は学問として成立しているわけですよね。それをイメージしてみてください」と名塩さんが問いかける。

ワークシートのその下にはSDGsの17の目標が示されている。「SDGsの重要なコンセプトとして、誰ひとり取り残さない世界の実現があります。世の中は複雑に絡み合っていますから、いろいろな社会課題があるなかで、どこかを最適化しようとすると別のどこかにしわ寄せがいってしまうことがあります。全体のバランスを見て、少しずつ利害を調整しながら、さまざまな課題を同時に解決していかなければいけません。今日はその難しさを体感してもらおうと思っています」(名塩さん、以下同)