歴史的建築物で誓う永遠 結婚式で特別な記憶刻む

10〜11月は秋のウエディングシーズン。春と同様に気候が良く、休日も多く、美味な秋の味覚にも恵まれる。そんなウエディングパーティーの舞台として、最近活用されているのが各地の歴史的建築物だ。本物の歴史が、落ち着いて門出を祝いたい2人の心をつかむようだ。

■老舗料亭の意匠を生かす

婚礼プロデュースなどブライダル事業を手がけるノバレーゼ(東京・中央)は、各地の歴史的建築物をリノベーションして、特別なウエディング体験を顧客に提供する事業を進めている。

ノバレーゼは2000年の創業。歴史的建築物に着目したのは「従来のブライダルになかった価値で、結婚する2人が心から満足できるサービスを提供したい」(松井環広報室長)と考えたためだ。

まず05年に兵庫県芦屋市の旧逓信省芦屋別館(1929年建造)にチャペルを増設し、「芦屋モノリス」として再生させた。その後、現在までに西日本を中心に、6カ所の歴史的建築物をブライダル&レストランスペースとしてよみがえらせている。

たとえば09年に広島市にオープンした「三瀧荘」は、元は棋王戦や碁聖戦の舞台にもなり、マリリン・モンロー夫妻が新婚旅行時に宿泊したことでも知られる1946年開業の老舗料亭旅館だった。現在はジャパニーズモダンの意匠が凝らされ、緑と木のぬくもりを感じさせる個性的なブライダル空間として生まれ変わっている。

三瀧荘には日本建築の温もりを生かしたチャペルがある(広島市)

12年オープンの「ジェームス邸」(神戸市)は、1934年に英国人貿易商が自宅として建築した赤瓦が印象的なスパニッシュ様式の洋館。明石海峡と遠く淡路島を望む高台に立ち、広大で美しい庭園を有する。

「バブル期のハデ婚とは異なり、今はオリジナル志向&本物志向の新郎新婦が増えている」と話すのは同社の諏訪真紀子営業戦略ディビジョンマネージャー。「本当に呼びたい人だけを招待し、自分たちならではのスタイルで新しい門出の感動を分かち合う。そのための舞台として歴史的建築物が選ばれている」と説明する

ブライダル需要が減る夏季や冬季は、これら建物でビアガーデンや各種イベントを開催。地域の人が気軽に歴史的建築物の魅力に触れる機会を設けている。

20年2月には兵庫県姫路市の「姫路モノリス」(1930年建造の旧逓信省姫路電信局)と、大阪市北区にある国の重要文化財「旧桜宮公会堂」(1935年建造の旧明治天皇記念館)で、プロジェクションマッピング映像を駆使した「純白の森ナイトミュージアム」という無料アートイベントを実施する予定だ。

■公共機関も貸し出し推進

一方、歴史的建築物を管理する公共機関も、文化財級の歴史的建築物をブライダルなどパーティーに貸し出す例が増えている。

通常は休憩場所としてカフェが営業しているデ・ラランデ邸(東京都小金井市)

公益財団法人東京都歴史文化財団が運営する江戸東京たてもの園(東京都小金井市)。足を運ぶと、そこは数々の歴史的建築物を集めた野外博物館で、2.26事件の舞台となった「高橋是清邸」や、木造モダニズム建築の傑作といわれる「前川国男邸」など30棟がずらりと立ち並んでいる。

その中の、1910年ごろにドイツ人建築家の自邸として建てられた「デ・ラランデ邸」は、たてもの園の休業日にレセプションやパーティー会場として1棟丸ごと一般貸し出しの対象だ。

たてもの園学芸員の高橋英久氏によれば、東京都は都内美術館や博物館、歴史的建築物を、会議やレセプション、パーティー会場として有効活用する「ユニークベニュー(特別な会場)」政策を推進中。デ・ラランデ邸貸し出しもその一環だという。

2人が新しい時を刻む門出の結婚式を、永い時が刻まれた歴史的建築物で祝う。そんな特別な体験は新郎新婦だけでなく、その場に居合わせた全員にとって、忘れがたい思い出となるのだろう。

(ライター 大谷 新)

[日本経済新聞夕刊2019年10月5日付]


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