緑内障は、自覚症状もなく見つかることが多い。早期の段階で見つかれば、治療により日常生活に必要な視野と視力を保てる可能性が高い。(写真はイメージ=123RF)

日本人の中途失明原因のトップである緑内障は、視野の見えない部分が広がっていく病気だ。初期には気づきにくく、一度失った視野を取り戻す治療法のない病気のため早期発見・早期治療が重要だ。治療は眼圧を下げる点眼薬の使用が中心だ。薬を複数使用することもあり点眼剤をきちんと使用できずに緑内障を悪化させてしまうケースも少なくないが、最近は、軽度の緑内障向けの、傷口が小さく目への負担の少ない低侵襲手術で眼圧を下げる治療も登場。その中の一つ、白内障手術と同時に行うことで点眼薬の手間を減らし治療効果を上げることが期待できるアイステント手術について、東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)眼科の須藤史子教授に伺った。

■失明原因第1位の緑内障は40代から増え始める

緑内障とは、なんらかの原因で視神経が障害され、それによって視野が欠ける病気だ。目に入った光は、網膜細胞で捉えられ、その信号が脳に伝えられるが、網膜全体の神経線維は視神経乳頭という部分で100万本の束となる。これが視神経だ。緑内障では、この視神経が障害され、徐々に減り、消失した視神経の領域の視野が欠けていく。

図1 緑内障による視野の消失のイメージ

視野が欠けていっても、両目で見ると異常に気づかないことがほとんどだという。(原図=123RF)

緑内障は、眼科医が眼底写真という方法で網膜の視神経乳頭を調べると、40代で20人に1人に見つかり、年齢が上がるにつれその数はもっと多くなるといわれている。ただ目は常に動いている上、脳は視神経全体の情報を処理して見ているため、かなり視野が欠けても気づかないことも多い。

失った視野は取り戻すことができない上、症状が進むと治療が難しく、2018年に発表された厚生労働省の調査[注1]では、緑内障は中途失明原因の第1位(28.6%)であった(第2位は網膜色素変性の14.0%)。

緑内障で大切な視力を損なわないために、最も重要なことは早期発見・早期治療だ。東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区[注2])眼科の須藤史子教授は、「緑内障で失った視野を回復することはできないものの、症状が進む前に発見し、適切な治療で進行を抑えれば、寿命を全うするまで日常生活に必要な視野を保つことができます」と訴える。

[注1]Morizane Y,et al. Japanese Journal of Ophthalmology. 2019;63:26-33.

[注2]東京女子医科大学東医療センターは、2022年1月からは足立区へ移転し、東京女子医科大学附属足立医療センターと名称が変わる予定

■正常眼圧緑内障も眼圧を下げることで進行を食い止められる

緑内障の発症メカニズムについて確実なことは分かっていないが、眼球内部の圧力(眼圧)が高いほどリスクが高いこと、そして眼圧を下げると緑内障の進行を抑制できることは分かっている。眼圧は10〜20mmHgが正常範囲といわれているので、これを大きく超えると視神経が障害される可能性が高くなる。

ただ、眼圧が正常範囲でも少しずつ視神経がダメージを受けてしまう「正常眼圧緑内障」もある。日本人に多く見られ、薬の副作用や基礎疾患など明らかな原因のない緑内障(原発開放隅角緑内障)の患者の9割を占めているという報告もある。そして正常眼圧緑内障でも眼圧を下げることで進行を抑えられることも分かってきた。