「特撮ヒーロー」手袋でブレーク 香川の工房の奇跡

出石手袋は1960年代に出石尚仁さんの両親がミシン1台で始めた。70年代のスキーブームで産地が潤い、出石手袋もスキー用手袋の部分縫い請け負いから、皮革を仕入れ完成品を作る一貫製造へと事業規模を拡大した。高校を卒業した出石さんは20歳で後継ぎに。バブル期になると再びスキーブームが到来し、スキー手袋に特化して製造を続けた。

出石尚仁社長がいうところの「最高額」8万円のバイク用手袋。オーナーの好みが最大限生かされた凝った作りとカラフルな配色はみているだけでも楽しい

ところがブームが一気に冷え込んで特需は消失。周囲が続々廃業する中で細々と革手袋製造を続けた。立体的で耐久性のある手袋づくりが得意だったため「小ロットで五輪選手の手袋や分厚い革の作業用手袋を作りました」と出石さん。注文生産で腕は磨き続けたが在庫はかさんだ。「試しにそれをヤフオクに出してみたら、思わぬ反応がきたんです」

■バイク愛好家から問い合わせ、ハーレーのイベント回り受注

分厚い革手袋に目を付けたバイク愛好家数人から「バイクのグローブが作れませんか」と問い合わせがきたのだ。日本ではオーダーで革手袋を作る業者がほとんどいない。出石さんは新たな需要の誕生を予感した。要望に応じてバイク用革手袋の生産を始めるや、全国のハーレーダビッドソンのイベントなどを回り注文をとった。「CACAZAN」のブランド名をつけ、1万5000〜2万5000円で販売した。高級革手袋に活路を見いだしたのだ。

かつては装飾がふんだんにされていた特撮ものだが、今ではこうしたシンプルなものがベースとなっている「昔はこんな凝ったものを作ったんですよ」と出石尚仁社長みずからはめてくれたこの手袋が、家族で続けてきた手袋会社の窮地を救った

収益の柱を1本見つけた矢先、また別の注文が来た。「仮面ライダーの手袋がほしい」。相手は企業ではなく個人。熱烈なファンなのだろう。確かに仮面ライダーはバイクに乗る。これまで作ってきたバイク用手袋と基本は同じだ。もちろん注文に応じた。わずか1双の特注品。だが、これは復活劇の序曲にすぎなかった。

■コスプレブーム、マニアの間でたちまち話題に

時あたかもコスプレブームの興隆期。ネット上には戦隊モノを中心に特撮ヒーローの本格的なコスチュームを売る業者が出始めていた。だが当時、手袋だけは中国製の粗悪品しかなかったという。そこでリング飾りもついた本格的なヒーロー向け手袋を3万8000円で販売してみた。するとマニアの間でたちまち話題となり、次々と注文が舞い込むようになった。「オタク」は海を渡り、顧客層は海外にも広がった。その凝ったデザインの本格派手袋は口コミで好事家に広まり、ついにはなんと、本家の映画会社からも注文があったほどだ。


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