3月に高知県で行われた全国高校相撲選抜大会の体重別個人戦100キロ級で福岡・希望が丘高2年の永露蓮が優勝し、福岡県勢として初の高校日本一に輝いた。165センチ、85キロの小兵ながら自分より大きな選手たちを次々に倒しての栄冠。多彩な技を誇る16歳は「夏の全国総体も個人と団体で優勝を目指したい」と、さらなる躍進を誓う。(山崎清文)

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 幼い頃から稽古を共にしてきた好敵手が壁として立ちはだかった。全国選抜準決勝の相手は、同じ大分県宇佐市の西部中出身で1学年上の永松知恩(大分・宇佐産業科学高)。互いを知り尽くし、昨冬の全九州高校新人選手権では優勝した永松に準決勝で敗れている。だが、永露は「できることをやり切ろう」と落ち着いていた。頭からガツンとぶつかり、強烈な押しで寄り倒し。約9秒の白星に「速攻で決められて良かった」。その勢いで決勝も勝利し、全国制覇を成し遂げた。

 小学3年の時、地元の「わんぱく相撲」で同学年の子に敗れた悔しさから相撲にのめり込んだ。宇佐市内の少年相撲クラブで練習に励み、中学3年時には全国大会団体3位に輝いた。

 希望が丘高入学時に60キロ台後半だった体重を、「正直きつい」という1日5回の食事と筋力トレーニングで約20キロ増やした。現在はベンチプレスで100キロを持ち上げ、重さ約30キロの石を手に腰割りをするなど体全体の強化に取り組む。

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「相撲で学んだことが役に立つ仕事をしたい」

 上手出し投げや引き落としなど、さまざまな技を駆使する。同校相撲部の佐伯競監督(50)は「どんな体格の相手にも、チャンスで得意技を出せる。相手の弱点を見つけて、その弱点を攻められる」と評価する。

 巨漢力士が重さとパワーを誇示する大相撲。だが、舞の海秀平氏(元小結)や石浦(間垣親方)のように、技やスピードで対抗する小兵力士も土俵で躍動してきた。永露が目標とするのは元幕内の炎鵬。「体重差が2倍近い相手を技で倒すところがすごい」と、自分の姿を重ねる。大相撲に入門するかどうかはまだ決めていないが「相撲で学んだことが役に立つ仕事をしたい」。指導者の道も考えているという。

 今月12日には全日本個人体重別選手権大会(東京)に出場。次の照準である全国高校総体は古里の宇佐市で開かれる。「最後まで絶対諦めず、自分の相撲を取り切って優勝したい」。精進を積んで、全国の大舞台で再び王座に立つ。

 ◆永露 蓮(ながつゆ・れん)2008年3月8日生まれ、16歳。大分県宇佐市出身。小学3年で相撲を始め、同市の少年相撲クラブ「USA双葉道場」で稽古を積んだ。西部中3年時の22年8月、第52回全国中学校相撲選手権大会(全中)でチームの主将兼大将として団体3位に貢献。165センチ、85キロ。