現代の自動車業界で、最も人気の高いカテゴリーとなったSUV。アメリカのフォード・ブロンコなどとともに、
このカテゴリーのパイオニアとなったレンジローバーは、イギリスの伝統的富裕層のリクエストから生まれたモデルだった。

【1973年式 ランドローバー レンジローバー Vol.2】

【1】から続く

 正装には到底似合わないランドローバーよりも、もっと快適でスタイリッシュなクロスカントリー車へのリクエストは少なからずあったという。

 そんな「いいとこ取り」を実現したレンジローバーの創造主は、ローバーの名作「P6」シリーズを手掛けたことで全世界にその名声を示したエンジニア、スペン・キング。彼はフランスのシトロエンに傾倒する一方で、独創的なアイデアを英国伝統のクルマ作りにブレンドする、卓越したバランス感覚の持ち主でもあった。そして彼はメカニズムのみならず、デザインにも深く関与。極めて簡潔ながら、独特の美しさも感じさせるレンジローバーのボディは、ランドローバーと同じく総アルミ製で、2枚のドアと上下2分割式のテールゲートが与えられた。

 パワーユニットは、ランドローバーの2.2L4気筒から、ローバー3500用の軽合金製V型8気筒OHV3528ccにジャンプアップ。未開の地などでの使用を想定し、オクタン価の低いガソリンでも使用可能なようにデチューンし、8.25の圧縮比と2基のストロンバーグ社製気化器で132psを発生。4速MT+2速トランスファーによるフルタイム4WDシステムを組み合わせる。

 また、前後ともコイルで吊られたリジッドのサスペンション。そしてサーボ付き4輪ディスクブレーキを備え、最高速155km/hの高速クルーズとオフロード走行を完全両立。つまり、ランドローバーの悪路走破性と多用途性、そして高性能乗用車の性能と居住性を併せ持つモデルとして高く評価され、発売と同時に英国上流階級のステータスシンボルとなるのだ。


>> 【画像18枚】開発責任者である名匠スペン・キングがシトロエン信奉者だったことを思い出させる、たっぷりとした快適至極なシートなど


>> タコメーターの備えもない簡素なメーターは、いかにもこの時代らしい。


>> この時代は4速MTのみが設定されるが、操作系は軽く乗りやすい。オフロード走行のため、トランスファーと「Lo/Hi」2速の副変速機も装備される。



【3】に続く