この記事では、「お金」と「夫婦関係」の専門家であり、これまでのべ1000人以上のZ世代と対面し、彼らのお金に関する話を聞いてきた筆者が、著書『Z世代に学ぶ!〜賢く堅実にお金を増やす〇〇の方法〜』の一部をもとに、Z世代のお金に関する意識の特徴をX世代・Y世代と比較しながら考察します。

 

これからの時代に、Z世代が必要だと感じる「お金の知識」

日本銀行の「主要時系列統計データ表」(2022年4月更新※1)によれば、2007年から2022年までの間に定期金利(預金金額1000万円以上/1年の場合)は「0.401% → 0.003%」へ、普通預金は「0.198% → 0.001%」の超低金利となっています。いわゆるY世代である筆者が生まれた1980年代には、預金金利が6%の時期もありましたから驚きです。2014年頃から現在まで超低金利が続いており、銀行にお金を預けても期待するほど増えることはなく、個人の資産を増やす方法として「貯蓄」から「投資」へ意識の変化が高まっています。2022年は、2024年から始まる新NISA制度の開始を前に、投資への関心が最高潮に達しています。不確実な時代に生まれ育ったZ世代にとって、これからの時代を生き延びるためには、ITの知識や対人コミュニケーションよりも「お金の知識」が最も必要だと感じています。

(用語について)
・Z世代:1990年代中盤から2010年代中盤生まれ。幼いころからスマートフォンやSNSが身近にあるデジタルネイティブ世代。
・Y世代:1980年代序盤から1990年代中盤生まれ。インターネットの本格普及が幼少期から青年期あり、問題なくネットを使いこなせる世代。
・X世代:1960年代半ばから1970年代終盤生まれ。幼少期はアナログ環境で過ごし、インターネット環境は成人してから経験した世代。
・金融リテラシー:日々の家計管理や資産形成、金融取引や保険、金利やローンの知識など、お金と上手に付き合うために必要な知識や判断力のこと。リスク性資産も活用した安定的な資産形成を行なったり金融トラブルを避けたりするために、金融リテラシーは必須の「生活スキル」といえます。

 

Z世代の投資への関心…X世代・Y世代との比較

超低金利時代の影響をうけて、資産運用がうまくいかないことや将来の老後資金の準備不足への不安から、X・Y・Z「3世代」のいずれにおいても、投資への関心が高まっています。

X世代は老後資金の準備に不安を抱え、資産を増やしながら老後の生活ができる方法を探している人も多いでしょう。子育ての中心世代であるY世代は、晩婚化の影響も重なって、お金の3大支出である「住宅資金」「教育資金」「老後資金」を同時に準備する世帯が増え、投資への関心が最も高まっているといえるでしょう。Y世代である筆者も、自身の老後の生活や子どもの教育資金などに不安を抱えた時期があり、36歳でファイナンシャルプランナーの資格を取得して投資を始めています。

マネーインサイトラボの2022年「お金の悩みに関する世代別意識調査」(※2)によると、2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた際、株価が一時急落した後に急速に回復したことで、割安感と期待感が生じたとのこと。また、外出自粛に伴う消費の抑制や特別定額給付金により可処分所得が一時的に増えたことで、投資への関心が高まったとの調査結果を発表しています。

Z世代は、バブル崩壊(1991年前期〜1993年後期)やリーマンショック時(2008年)に、まだ社会人にはなっておらず、株価急落による市場の混乱を体験していないことから、X世代やY世代に比べて市場変動への恐怖心が比較的低く、投資へのハードルも低くなる傾向があるかもしれません。

 

Z世代のお金に関する相談先…X世代・Y世代との比較

お金に関して困りごとや知りたいことがあるとき、本やネットで調べたり、誰かに相談したりするでしょう。X世代は、資産運用とともに、相続や終活の準備を考える世代です。インターネットの情報を鵜呑みすることに不安を感じているため、直接に専門家のアドバイスを得るために銀行や保険会社に相談することが多いようです。Y世代は、日本で投資の概念が周知されてきた頃に社会人になり、証券会社も増えていきました。ネット証券会社も出始め、銀行や証券会社で直接アドバイスを受ける方法と、ネット証券会社の金融商品を自分で選ぶ方法を、資産運用に活かし始めた最初の世代といえるでしょう。

筆者の関わるZ世代の過半数は、ウェブ検索やSNS検索をおこなって投資について情報収集しています。X・Y世代に比べて、動画サイトやSNSで出会う人たちとの距離感が近いため影響を受けやすく、Z世代の行動バイアスに影響を与えています。X世代とY世代の専門家への相談が増加傾向にあります。しかし、「金融商品を購入するか否か」「どの金融商品を購入するか」などの最終的な判断は、どの世代も「母親」に相談して決める傾向があり、動画サイトやSNSの情報だけで投資を決断するにはリスクがあると感じているようです。

 

Z世代のお金に関する学び…X世代・Y世代との比較

X世代やY世代は、学生時代にお金に関することを学ぶ機会はほとんど与えられていませんでした。社会人になってから、勤める会社の業務や研修、独学など、さまざまな社会経験を通してお金に関する知識を蓄えていったと考えられます。

2022年4月、学習指導要領の改訂に伴い、高校の金融教育が拡充されました。Z世代は、家庭科の授業を通して「未来の人生設計を立てる」とともに、「株式や債券、投資信託等の金融商品の特徴(メリット、デメリット)」を学びます。Z世代は、X・Y世代に比べて、若い年齢から老後資金を準備できるため、老後2000万円問題を解消する世代となるか期待されています。

 

投資への関心の高まりと金融リテラシーの低さ

近年、キャッシュレス決済の利用拡大とともにポイント投資などのサービスが増えており、資産運用の代行やアドバイスを行うロボアドバイザーを活用している人も増加傾向にあります。スマホやタブレット端末を使いこなせる人にとっては、手軽に投資を始められる環境が整ってきています。

しかし、Z世代は「みんなが買うから自分も買う」という傾向をもつ人も多く、正しい知識や判断から投資を行うというよりも、「投資を始める人が増えている」というメディアやSNS、周囲の人の情報に反応して投資を始める人が多いのが現状です。周りに影響され、よく仕組みを理解しないまま金融商品を購入してしまうことが懸念されています。投資へのハードルは下がっている一方で、Z世代の金融リテラシーは低いというアンバランスな状況が起きているのです。前述のとおり、Z世代がお金に関することを母親へ相談する割合が高いことから、親の金融教育への意識の高さが、子のお金に関する意識や価値観に影響するともいえるでしょう。X世代とY世代が、金融教育を自ら受けられる場をつくることも今後の課題でしょう。

[執筆:大野あきえ(公認心理師/社会福祉士/AFP)]
著書『Z世代に学ぶ!〜賢く堅実にお金を増やす〇〇の方法〜』ほか

【註/参考】
※1. 日本銀行「主要時系列統計データ表」(2022年4月更新)より
※2. マネーインサイトラボ「お金の悩みに関する世代別意識調査」(2022年11月17日)より
※金融広報中央委員会「金融リテラシー調査2022年調査結果」
※鄭美沙、第一生命経済研究所「金融リテラシー調査(2022年)で見る若年層の特徴」2022年7月22日

※写真:Taka / PIXTA(写真はイメージです)