9月半ば。この時期、どの球団もそうだが、二軍球場に行くと、雰囲気が悪い。「余命、1か月」。そんな自虐的な冗談を口にする選手もいた。

 どういう意味かと言うと、二軍はひと足早く公式戦の日程を終了する。10月途中から練習となり、球団も来季に向けたチーム編成を始めなければならない。つまり、「戦力外通告」が始まり、一軍戦力になれなかった選手たちは「いつ、呼び出しを食らうか?」と戦々恐々としているのだ。

 「メディアに戦力外通告を受けた選手名が発表されるのは、日本シリーズ終了後。実際はもう少し前に本人に伝えられています」

 元プロ野球選手の“経験談”だ。「次に向けて、少しでも早く動けるように」という球団の配慮なのだが、通告された直後は気が動転して、何も考えられないそうだ。

 この元プロ野球選手によれば、前日夜、球団スタッフから電話があって、「明日12時、球団事務所に必ず来てほしい」と伝えられた。その年、若手の台頭などがあって、出場機会が激減した。先輩たちが戦力外を通告された経緯は見てきたので、「ついに自分の番が来たのか…」と落胆する。同時に、「いや、ひょっとしたら、トレード放出かもしれない」という若干の期待もあったそうだ。慣れ親しんだ球団を離れるつらさもあるが、野球を続けられるのなら、トレードのほうがマシだと思うのだという。

 また、20代の元選手はこう言う。

 「二軍球場に球団代表がいきなりやって来たんですよ。暫くして、球団マネージャーが数名の選手を呼び出し、練習を途中で切り上げて代表の待つ控室に行きました」

 「前夜の呼び出し」、「二軍球場に来て」の2パターンがあるようだが、どちらにも共通していたのは“敬語”で話し掛けられたこと。

 「来季の契約は結ばないことが決まりましたので、お伝えさせていただきました。今まで球団のために尽くしてくださり、本当に有り難うございました」

 大半の選手はトライアウトを受験して、現役を続ける方法を模索する。気持ちの整理を付けるまでそれなりの時間も掛かるが、戦力外を通告されて、初めて、「こんなに野球が好きだったんだ」と痛感するそうだ。

 日本野球機構が「2018年現役若手プロ野球選手へのセカンドキャリアに関するアンケート調査」の結果を発表した。これは毎年10月、若手選手の教育リーグとも言えるフェニックス・リーグ中に行われたもので、その中に、<引退後、どのような職業をやってみたいですか>の問いもあった。同年、トップになった回答は、なんと、「一般企業の会社員」(15・1%)。このアンケート調査は10年以上行われてきたが、サラリーマンがトップになったのは初めてだった。

 「チームの監督、コーチになれるのはごく一部の成功者。球団に残れる可能性が低いと端から諦めている感もあり、高校、大学、社会人などの指導者希望も減少傾向にあります」(球界関係者)

 野球は好き。でも、続けていくことの難しさを知った。ここ数年、トライアウトの受験選手も、こんなことを話している。

 「ナイショだけど、どこからも声が掛からないのは分かっています。自分自身にケジメをつけるというか、次の仕事に進むため、野球を諦めることを自分自身に言い聞かせるため、トライアウトを受験したんです」

 安定のサラリーマンがトップ回答になったのは、「いつ、クビになるか分からない」という不安に駆られた生活から脱したいとの思いもあるようだ。組織の中で生きる厳しさはサラリーマンのほうが大きいと思うのだが…。

 プロ野球で学んだ高い知識、レベルを次世代に伝えていく。これが底辺拡大のための第一歩であり、五輪の硬式競技に復活する道ではないだろうか。プロ野球界はセカンドキャリア問題について、もう一度考え直さなければならない。(スポーツライター・飯山満)