身体のあらゆる細胞に変化する能力があるiPS細胞を使った研究で、世界初の成果が発表されました。京都大学教授らのグループが、精子や卵子になる手前の細胞を大量に作ることに成功。不妊や生命誕生の謎解明などが期待されますが、将来的な懸念もあります。

■「夢のような話」の手前で大きな進展

日テレNEWS NNN

藤井貴彦キャスター

「例えば私たちの皮膚や髪の毛の細胞から、精子や卵子を自在に作り出せるかもしれない──。そんな夢のような話の手前の段階で、大きな進展があったということです」

波瑠さん(俳優・『news zero』火曜パートナー)

「髪の毛から将来子どもが生まれるのですか?」

藤井キャスター

「そうなるのでしょうか…? 疑問がいろいろあります」

小栗泉・日本テレビ解説委員長

「これは山中伸弥教授がノーベル賞を受賞したiPS細胞を使った研究です。iPS細胞は身体のあらゆる細胞に変化する能力を持ち、目の病気や心臓病などへの研究が進められています」

「このiPS細胞を精子や卵子にするためにはいくつかの段階がありますが、京都大学の斎藤通紀教授らのグループは今回、精子や卵子になる手前の段階の『前精原細胞』『卵原細胞』を大量に作ることに成功したと発表しました」

「4か月ほどで100億倍以上に増やすことができたということで、斎藤教授は『ここまで大量に作れるようになったのは世界で初めてのことで、大きなインパクトがある』としています」

■研究が飛躍的に進む可能性…期待は?

日テレNEWS NNN

藤井キャスター

「大量に作ることで何かメリットがあるのですか?」

小栗委員長

「すぐにヒトの精子や卵子ができるというわけではありませんが、多くの細胞があれば数多くの実験を行えるので、研究が飛躍的に進む可能性があります。また、将来的に受精卵を作れれば、不妊症やそのほかの病気の治療が進むきっかけにもなります」

「さらに、もっと根本的なヒトの誕生に関わる謎の解明も期待されるということです」

■山中教授「不妊症の原因解明に期待」

日テレNEWS NNN

小栗委員長

「iPS細胞の生みの親である山中伸弥教授が、zeroの取材に『iPS細胞を活用して生命の謎に迫る素晴らしい研究だと思います。不妊症の原因解明などが進むことを期待しています』とコメントしました」

波瑠さん

「つらい不妊治療をされている方の希望になるといいなと思います」

■「受精」は? 求められる議論

日テレNEWS NNN

小栗委員長

「では、いつ頃実現するのか。この分野の研究をリードする1人でもある大阪大学の林克彦教授によると、技術的にはあと5〜10年で受精させられるような精子や卵子ができるようになる可能性があるといいます」

藤井キャスター

「こういった分野では、5年や10年はかなり早いように思えます。その一方で、髪の毛から精子や卵子ができるということになれば、いろいろ議論が必要な部分も多いのではないでしょうか?」

小栗委員長

「その通りです。林教授によると、あくまで未来の話ですが、例えば好きな著名人の髪の毛を入手して子どもをつくることもできてしまうかもしれません。遺伝子を売る商売や、亡くなった人からも子どもが誕生するといったことも理論上は可能性があるといいます」

藤井キャスター

「正しく使うために歯止めをかけるルールなどの議論も必要だと思いますね」

小栗委員長

「現在、日本ではiPS細胞から精子や卵子を作り出すことまでは認められていますが、受精させることは禁止されています。内閣府の生命倫理専門調査会は将来どこまで認めるのか、今まさに議論しているということです」

波瑠さん

「素晴らしい技術だと思いますが、遠い未来のことだと思っていたので想像がつかないといいますか、少し怖いなという思いもあります。技術が進歩するのと一緒に、命の大切さも考えていければいいですね」

(5月21日『news zero』より)