「認知症だと思っていた」物忘れ、歩行困難…「ハキム病」診断の最前線…手術で症状改善へ『every.特集』
日テレNEWS NNN6/7(土)18:40

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歩行困難や認知機能、排尿の障害から認知症が疑われる時、これらの症状により「ハキム病」と診断されたなら…。頭に脳脊髄液がたまる病気ながら、手術で認知症の改善が期待できます。診断の最前線ではAIやアプリの活用で、病気の発見に取り組んでいます。
■歩きにくさ、認知機能の低下…検査結果は

この日、診察にやってきた松田さん(仮名・83)。3年ほど前から、物忘れに悩まされ、支えがないと歩くことができません。
順天堂東京江東高齢者医療センター
「タップテスト(検査)の結果、こちらのデータから話させてください」
「もともと認知症は、松田さん(仮名)にはないのかなと思っていたけど(認知機能の)テストをしてみたら案外悪かった」
松田さんの認知機能を調べる検査の様子がこちらです。2025年1月9日に行われました。
臨床心理士
「今の季節は何の季節ですか?」
松田さん
「今は日本は夏の終わり…夏の始まりですね」
臨床心理士
「今は何月ですか?」
松田さん
「4月ですね」
■認知症なのか、病気なのか…3つの症状に注目

松田さんの家族は…
妻
「同じことを何回も何回も聞くことがある。年のせいと、私は(夫が)認知症だと思っていたから」
長男
「仕方ないことだよね」
妻
「そうそう」
認知機能の低下、この症状は、ある“病気”が原因だと医師は判断しました。それは…
脳神経外科 秋葉ちひろ 医師
「病名としては、ハキム病といわれている、頭の中に水がたまる病気の一種ですね」
ハキム病、特発性正常圧水頭症ともいわれ、頭に脳脊髄液がたまる病気です。
主な症状は3つ。歩行障害、認知障害、排尿障害です。
■“病気”が原因の症状と判明 “改善”に期待

認知症が疑われる時、その原因として最も多い病気は、アルツハイマー型認知症です。ハキム病は、認知症の数パーセントと言われていますが、実態はつかめていません。潜在的な患者数は、もっと多いと考えられています。
また、アルツハイマー型認知症などは根本的な治療法が見つかっていませんが、一方で、検査を受けてハキム病と診断された場合、頭にたまった髄液を排泄するルートを作る手術をすることで、認知症の改善が期待できるといいます。
しかし、ハキム病という病気は、医師の中ですら、あまり知られていません。
秋葉医師(菊川駅前ライフサポートクリニック)
「お変わりないですよね?」
ハキム病患者 上野さん(仮名・88)
「変わりないです」
秋葉医師
「よかったです」
■“気づかれない病気” 検査で判明

約3年前に、ハキム病と診断された上野さん。当時は、家族が話しかけてもほとんど反応せず歩くことも困難で、家の中で毎日のように転んでいたそうです。
一緒に暮らす家族に、当時のことを聞いてみると…
長女
「寝たきり覚悟だったよね」
「ベッドをどうするのとか、どういう体制で介護したらいいんだろうとか、そんな話を私たち(長女と二女)はしていました。母はその時あまり分からない」
上野さん
「手術をしたこともちょっと分からなかった」
上野さんの家族はハキム病の存在を知らなかったと言います。判明したきっかけは、転んで頭を打った時に受けた検査でした。それによって頭に髄液がたまっていることが分かったのです。
■「寝たきり覚悟」から治療・手術へ

その後、専門医にかかり髄液を抜く手術を受けた上野さん。
今では、家の中では杖を使わず歩けるようになり、日課だったラジオ体操もできるようになるまでに回復しました。
長女
「(今は)食事もいっぱい食べられるし」
二女
「どんどん元気になってくる」
上野さん
「(ハキム病を)見つけてくださった先生に感謝しています」
医師でも見過ごしてしまうことが多いというハキム病。
秋葉医師
「もしかしたら患者さんだけじゃなくて、医療関係者でも聞いたことがない、ゆえに気づけない病気の一つかもしれないですが、気づいて治療することで、その後の人生、今は人生100年時代なので、頑張っていけそうな感じになりますね」
■病気の発見をアプリで 診断の最前線

専門医がいなくても、ハキム病を見つけることができないか。今、そのための“ある取り組み”が進められています。(名古屋市立大学病院)
訪ねたのはハキム病の専門家、山田医師です。
脳神経外科 山田茂樹 医師
「病気を発見していく、そういう研究会を立ち上げまして」
「歩くのがおかしい、認知機能が落ちてくるというのをスマートフォンで診断補助にする」
ハキム病の診断をスマートフォンのアプリを使って行うといいます。
これは研究中のアプリの一つ。歩く患者をスマホで撮影するだけで、AIがハキム病患者の特徴的な歩き方を解析します。
これには、スマホで撮影した人の動きをアバターに反映する技術が応用されています。患者の体に、動きを読み取るセンサーなどをつけなくても、正確に動きを捉えることができるといいます。
■AIを活用 医療現場で診断をサポート

診断のサポートをするアプリはほかにも。これは脳の画像を、AIを使って解析するアプリ。
山田医師
「(ハキム病患者のMRI画像が)一見するとアルツハイマー病のように見えちゃう、というのがある」
ハキム病を知らないと、見過ごしてしまう可能性のあるMRI画像。このアプリは、AIを使うことで、脳の膨大な画像からハキム病の特徴的な部分を探し出します。
山田医師
「見落としてはいけない病気を見落とすということは、今まではずっと長い歴史の中であった」
「AIを使うことで、そういった患者さんを減らすことは確実にできると思います」
現場でも、この試みは始まっています。ハキム病患者に多く見られるという、すり足歩行。
臨床心理士
「いい感じですね、はい」
検査を担当する臨床心理士は…
臨床心理士
「この検査が全国でみんなができるか、というとなかなか。脳外科の医師でも水頭症(ハキム病)専門でない方もいらっしゃるので、そういう時にこういうアプリを使うと、評価がしやすくなる」
■手術から数か月後 検査結果は改善へ

2025年1月に検査を受けた、ハキム病患者・松田さん。その時の検査では…
臨床心理士
「今の季節は何の季節ですか?」
ハキム病の手術を受けた 松田さん(仮名)
「今は日本は夏の終わり…夏の始まりですね」
臨床心理士
「今は何月ですか?」
松田さん
「4月ですね」
その後、松田さんは1月末に手術。私たちは、4月に自宅を訪ねました。承諾を得て手術前の検査と同じ質問をすると…
取材スタッフ
「今の季節は?」
ハキム病の手術を受けた 松田さん(仮名)
「春だよね」
取材スタッフ
「何月か分かりますか?」
松田さん
「今3月…3月が終わって4月になったんじゃないか」
妻
「会話していて(返事が)返ってくるのは早くなりましたね」
三男
「覚えている量は増えたと思います」
数年前まで働いていたという仕事の話になると…
三男
「(最初の仕事は)左官屋さん」
松田さん
「昭和33年に東京に出てきたんですよね」
三男
「何年、左官やって大工になった?」
松田さん
「7年やったんだ」
■ハキム病という疾患の「認知」が課題
会話だけでなく…
妻
「ケアマネージャーさんが見たら、歩くのが速くなったねと言うんです」
歩き方も徐々に改善しているそうです。
秋葉医師
「患者さん側にも(ハキム病の)認知が広がればいいと思う。疾患自体の認知ですね。これからの課題だと思います」
物忘れ、歩きにくさ、トイレの失敗。これらの症状に気づいたら、ハキム病の可能性があるかもしれません。
(6月4日「news every.」より)








