錦織圭不在でもデ杯で勝てた理由。杉田、添田、マクラクランらが躍動!

錦織圭不在でもデ杯で勝てた理由。杉田、添田、マクラクランらが躍動!

 錦織圭を欠いた日本チームが、デビスカップのワールドグループに踏みとどまった。

 錦織だけではない。1年前に同じワールドグループ・プレーオフを戦ったメンバーのうち西岡良仁も、ダニエル太郎もいないチームだった。

 周知の通り錦織は右手首のケガで8月から戦列を離れ、春に膝の手術をした西岡はまだ復帰にいたらず、ダニエルは個人ツアーを優先させた。

 シングルス上位4人のうち3人を欠いていたのだ。

 対戦相手のブラジルもトップ2を欠いてはいたが、そのことがこの残留の価値を下げるものではないだろう。岩渕聡・新監督は「錦織、西岡、ダニエルがいなくてもワールドグループにいられるという、今の日本の層の厚さをあらためて感じた」と話したが、アジア・オセアニアゾーンから抜け出せない時代を戦ってきた41歳の新監督の感慨にも偽りはない。

 昨年の優勝国アルゼンチンがワールドグループから陥落したほどの熾烈な生き残り合戦である。

 相手がどの国であれ、今年は参加国総数が134あるうち16カ国しかない強豪ワールドグループに残ったことにこそ大きな意味がある。この数年、ワールドグループの中で世界のトップと戦ってきたことは選手個々の成長と無関係ではない。そのことを彼らは知っているからだ。

近年のデ杯で思い知った「錦織1人では勝てない……」。

 錦織という絶対的エースを得て、2012年に日本が27年ぶりにワールドグループに復帰し、1度はすぐに降格したものの、2014年からは毎年ワールドグループで戦い、来年が連続5年目となる。

 この間、初戦を突破したことは1度だけ。プレーオフで勝って残留し続けていることが評価される一方で、思い知らされてきたことがある。

 錦織1人では勝てない……。

 錦織のいない今回は、その課題の克服度が試されたデビスカップだったともいえる。

エース杉田、ベテラン添田が十二分の活躍を見せた!

 まずエースとなった杉田祐一の2勝が頼もしかった。

 責任感の強さもあってか、もともと団体戦ではアドレナリンが出るタイプだが、2試合ともストレート勝ち。初日第1試合でチームを勢いづけ、チームの勝利を決めたエース対決での快勝は来年に向けた希望になった。

 世界ランクを42位まで上げている杉田は、「ランキングでは自分が2勝しなくてはいけない状況だった。プレッシャーがあって大変だったけど、やり終えて充実感がある」と語り、「50位に入ってもメンバーに入れないという状況になればかなりおもしろい」とニヤリとし、来年に向けてチーム内競争がいっそう激しくなることに期待を寄せた。

 33歳・添田豪も男気を見せた。

 チーム復帰は2年ぶり。今年初めには「デ杯ではもう十分やった。これからは若い選手に任せる」と話していたが、21歳の西岡、24歳のダニエルという若手不在の状況で、「これが最後のデ杯になるかもしれない」という覚悟で奮起した。

 添田がもぎ取った初日の1勝がなんといっても大きい。

 この試合が〈カギ〉だったのだ。

ダブルスでは負けたが、相手は元グランドスラム覇者。

 対戦したチアゴ・モンテイロは、世界ランク139位(9月11日時点)の添田に対して116位とわずかながら上に位置する。

 第4セットで迎えたサービング・フォー・マッチから最終セットに持ち込まれる苦しい展開だった。勝負のかかった試合で辛い敗戦を何度も味わってきた添田から、「やっぱり(デ杯は)辛い。でも戻って来て良かった」という言葉が聞けたのは何よりだった。

 結局、敗れたのはダブルスのみ。ブラジルのダブルスは強力だった。マルセロ・メロとブルーノ・ソアレスはいずれもダブルスでのグランドスラム優勝経験があり、メロは元ダブルス世界1位、ソアレスも2位という実績を持つ。

 内山靖崇とマクラクラン勉(ベン)はセットを奪うことができなかったが、それでも単なる完敗ではなかった。

ダブルス・スペシャリスト、マクラクランの登場!

 このマクラクランという聞き慣れない名前の選手は、数カ月前までニュージーランド人としてプレーしていた25歳のダブルス・スペシャリストだ。

 ニュージーランドにはダブルス強者が他におり、前々から抱いていたデ杯メンバー入りの希望を叶えるため、母の母国である日本に登録を変更した。スペシャリストといってもダブルス・ランキングは140位程度で、実績はまだ高いとはいえないが、日本ではトップ。岩渕監督の言葉を借りれば「ダブルスのためだけに時間を使ってくれる選手」が1人加入したことで、理想的な〈分業制〉には大きく前進した。

 内山靖崇のほうはこれまでもダブルス要員として代表入りする機会が多かったが、決してダブルス専門ではない彼が、ほぼデ杯だけの即席ペアで、世界の強豪ダブルスプレーヤーとの勝負にならない勝負を戦ってきたやるせなさはあったに違いない。

 今回も強豪相手のほぼ即席ペアではあったが、「勉がいることでダブルスの練習がたくさんできるのは、僕にとってはうれしいことでした」と変化を語る。

 また、岩渕監督が現役時代に鈴木貴男とのダブルスでデ杯での日本歴代最多勝利を挙げた実績を持つことにも触れ、「岩渕さん自身の経験からアドバイスをもらえるのも心強かった」と振り返った。

錦織、日本チームだけの問題じゃないデ杯の難しさ。

 こうして確実にチーム力を高め、ワールドグループの舞台も用意して錦織の復帰を待つ日本。感慨深い残留だったが、要の錦織が来年チームに復帰するという保証はどこにもない。まだとてもボールを打てるような状況ではない錦織が、たとえシーズン開幕に間に合う回復を見せたとしても、だ。

 それは錦織個人や日本チームだけの問題ではなく、デビスカップ自体が今直面している問題でもある。

世界的に選手のデ杯離れが進んでいるという大問題。

 今のシングルスのトップ20の選手で今年のデ杯にまったく参加しなかったのは錦織も含めてちょうど半数。

 残り10人のうち7人が1度だけ出場した。複数出場はわずか3人だった。

 トッププレーヤーが相次いで〈休業宣言〉する異常事態も招いたツアーの苛酷な競争を考えれば、無理もない。

 打開策として打ち出された5セットマッチから3セットマッチへの変更案は、ITF(国際テニス連盟)の総会で3分の2の賛成が得られず否決された。選手のデ杯離れに、しばらく劇的な歯止めは望めないだろう。

 そんな中、来年の組み合わせが決まった。1回戦の対戦国はイタリア。日本での開催だ。次の挑戦が具体的になればなおさら、錦織が復帰したときの日本チームの可能性を考えるのは楽しい。ワクワクする。しかしデ杯を巡る世界の現状を眺め、まだ手首を固定したままの錦織の姿を液晶画面越しに見ると、膨らむ期待に多少ブレーキがかかる。時期尚早、あるいは楽天的すぎるのかもしれない、と。

文=山口奈緒美

photograph by Kiyoshi Ota/Getty Images

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