フェデラーに憧れ、ナダルに勝利。18歳シャポバロフの才能に世界騒然。

フェデラーに憧れ、ナダルに勝利。18歳シャポバロフの才能に世界騒然。

 錦織圭ファンがちょっと目を離した隙に現れた。

 グランドスラム通算7勝のマッツ・ビランデルが言うところの「ナダルの激しさとスピード、フェデラーの優雅さを兼ね備える18歳」。それがデニス・シャポバロフだ。

 昨年のウインブルドンジュニアを制し、今季からツアーに本格参戦し始めたばかり。彼が快進撃を見せたのはこの夏のことだった。

 8月のロジャーズ・カップ(マスターズ1000)でファン・マルティン・デルポトロをストレートで下し、ラファエル・ナダルには逆転勝ちしてベスト4、続く全米オープンではジョーウィルフリード・ツォンガらを破って16強入りした。特に衝撃的だったナダル戦を見た人なら、生きる伝説2人に例えたビランデルの説もさほど大げさには思えないはずだ。

 ロシア出身の両親のもとイスラエルで生まれてカナダで育った。テニスを教えた元プロ選手の母は、いまもチームの一員だ。

 左腕からのストロークは、若者にありがちな一発で仕留めるタイプではなく、配球でしっかり組み立てるタイプ。それでいてフォアハンドと片手打ちバックの両サイドから、信じられない角度にフィニッシュショットを突き刺してみせる。あのパフォーマンスなら年初250位だったランキングが、8月に100位を突破して10月には50位を記録するのも当たり前。今シーズン新設され、11月7日にミラノで開幕する「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」(21歳以下のトップ8が出場)にも難なくこぎつけている。

シャポバロフ「ベルディフとの対戦がきっかけだった」

 そんなシャポバロフが10月に来日した際、改めて話を聞くことができた。

――ジュニアからシニアへ移行したのが今シーズン。夏まではツアー下部大会のATPチャレンジャーや、ITFフューチャーズへの参戦がほとんどでした。いったいどうして、マスターズやグランドスラムの大舞台で突然の快進撃が始まったのでしょう。

「6月にロンドンの大会(ATP500)に出場した時、予選を勝ち上がって2回戦でトマーシュ・ベルディフと対戦(6−7、7−6、5−7で敗戦)したんだ。それがきっかけだった。あの試合の後から『I can do this』って自分自身を信じることができるようになった。それまでに確実に力をつけていたし、持ち味を生かしたテニスができていると感じていたしね。次にトップ選手と戦う機会になったのがロジャーズ・カップだった。だから、あの大会のなかで急にレベルアップしたわけじゃない。うかがっていたチャンスが来て、それをつかむだけのレベルにあったということだと思う」

対戦したナダルはやはり「スーパー」だった。

――3回戦でナダルと対峙したときも倒す自信があったのですか。

「さすがにその可能性はほとんどないと思っていたよ。なんといっても相手はナダル。ただ、ずっと憧れてきた彼と同じ土俵に立つこと自体も自信につながったし、2回戦ではデルポトロのようなトッププレーヤーと渡り合い、勝つこともできた。強い選手たちとの試合を積み重ねたことで、さらに自信をつけることができたんだ」

――そのナダル戦は、第1セットを落としたところから奪い返し、ファイナルセットはタイブレークをものにしての勝利でしたね。

「実はあの大会では、初戦で4回マッチポイントをセーブして勝ったんだ。それで勢いに乗って、落ち着いてプレーができていた。ナダル戦では第2セットで早くブレークできて、大きな手応えもつかんだ。なんというか、ナダルだって絶対じゃないんだって。僕には失うものはないし、思い切って攻撃することができた。間違いなく、僕のベストゲームだよ」

――実際に対戦したことで、彼らトップ選手に対するイメージは変わりましたか。

「まったく変わっていない。ナダルはやっぱりスーパーな選手。僕はまだ1試合しただけで、あのレベルに到達するにはまだまだ力をつけなくちゃいけない。ただ、勝つチャンスは誰にでもあるのがテニスでしょう? 彼が19歳でグランドスラムを勝ち取り、レジェンドになったようにね」

――ロジャーズ・カップと全米で大活躍して、環境にも変化があったのでは?

「そうだね。トロントでは多くの人が僕の写真を撮るようになった。でも、それにも慣れてきたよ。小さい子どもが興奮して写真を撮りに来てくれたのは嬉しかったし、モチベーションにもなる」

――世界を転戦するツアー生活は?

「大きく変わったのは、より多くの遠征があり、より多くのトーナメントがあり、より大きな舞台でプレーできること。初めてのシーズンだからタフだけど、それにもだんだんと慣れつつある。知らない街を見るのは好きだしね。もちろん、テニスが好きじゃなきゃやっていられない生活ではあるけど、それを選んだのも自分自身だから」

フェデラーに憧れ、マッケンローにヒントをもらい。

――ところで、ナダルに憧れていたという話がありましたが、一番のアイドルは誰ですか?

「ロジャー(・フェデラー)だよ。ずっと彼を見て育ってきたんだ。オンコートでのアグレッシブなプレーは大好きだし、オフコートでも素晴らしいよね。少しだけ話ができたんだけど、驚くほどいい人だったよ」

――トーナメントで一緒になったことも?

「実はここ2大会、彼と同じロッカールームだったんだ! なんど見てもそこにレジェンドがいるんだから、衝撃を受けたよ。レーバーカップ(新設のチーム戦大会)にも出場したんだけど、同じイベントに参加できるなんて本当に光栄だった。間近に見た彼のプロフェッショナルな振る舞いには感激したよ。でも、相手チームにロジャーがいるのはもどかしいね。同じチームだったらよかったのに」

――あなたが属したチームワールドを率いたのはマッケンローでしたね。

「そうなんだ。ゲーム中にはいくつかヒントをもらった。僕らは同じ左利きだし、ネットプレーが得意だからね」

――今シーズンはランキング250位からスタートして、いまや50位目前。当初の目標はとっくに達成してしまったのでは?

「始めは150位を目指していたけど、ロジャーズ・カップの前にクリアできて、大会後には100位に入った。今は年内に50位以内に入ることが目標だよ(インタビュー後にこれもクリア)。今シーズンは故障中のトップ選手がたくさんいるから、僕たち若手の出場機会が増えているし、勝ち上がるチャンスも大きい。今後2年のうちに多くの若い選手がトップを破ると予想しているよ」

――そのなかで意識しているライバルは?

「同じカナダのフェリックス(・オーガーアリアシム)だね。まだ17歳なんだけど、今季は下部大会で何度か優勝していて、ランキングも150位間近。今後もっといい選手になるし、きっと対戦することが多くなると思っているんだ。ぜひ彼にも注目してみて」

 この夏、ビランデルはこうも言っていた。

「シャポバロフは他のどの若手スターとも比較できない。まったくレベルが違うんだ」

 一足飛びに“本物”のATPファイナルズへ臨むアレクサンダー・ズベレフこそ出場しないが、「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」には21歳以下のトップ8が結集する。すでに出場権を得ているのは、ロシアのアンドリー・ルブレフとカレン・カチャノフ、ダニル・メドベデフ、クロアチアのボルナ・チョリッチ、アメリカのジャレド・ドナルドソン、韓国のチョン・ヘヨン、そしてシャポバロフ。

 最年少でメンバー入りした18歳は、ライバルたちにその才能を知らしめることができるか。格好の舞台となるはずだ。

文=生島洋介

photograph by Getty Images

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