ビッグ5、次世代、そして錦織圭。役者が揃えば来季は空前の激戦に。

ビッグ5、次世代、そして錦織圭。役者が揃えば来季は空前の激戦に。

 男子テニス界、波乱のシーズンが幕を下ろした。

 ウィンブルドンのあとにノバク・ジョコビッチが去り、スタン・ワウリンカが続くと、全米オープンを前に錦織圭もならって「年内休養宣言」。

 アンディ・マレーも、宣言したわけではないが、結果的にウィンブルドンを最後に復帰することはできなかった。

 こうして、今年3月のトップ5のうち4人が不在となったシーズン終盤の3カ月。それでもテニス界が「悪夢」の年にならず、ATPツアー大会の年間観客動員数が史上最多記録の450万人を超えたという事実は何ゆえだろうか。

ディミトロフとズベレフ、2人の大躍進。

 まず、ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルの劇的復活の功績が大きいことは、あらためて説明するまでもない。

 次に、このチャンスに躍進したメンバーの顔ぶれにも注目したい。中でも、8月のシンシナティで初のマスターズ優勝を果たし、ツアーファイナルズを初出場で制覇した26歳のグリゴール・ディミトロフと、マスターズ・タイトルをローマとモントリオールの2大会で獲得した20歳のアレクサンダー・ズベレフの活躍は、長い間テニス界が待ち望んでいたものだった。

 10代の頃から“ベイビー・フェデラー”と呼ばれながらくすぶっていた才能を開花させたディミトロフと、将来を担うスター性を備えた新星ズベレフ。

 ともに実力のみならず、ルックスも大いに魅力的である。若い力の勢いは、その後カナダから出現した18歳のデニス・シャポバロフにも感じることができた。

 こうして、「ビッグ5」のポスト世代として期待された中堅どころや、エネルギッシュな若手のスターなど、これからの時代を託したい選手たちが、トップ不在のこのチャンスを生かして長年の期待に応えたシーズン終盤だったからこそ、ファンの心は離れなかったのだろう。

離脱したスター選手が戻ってくる来季はバラ色に。

 そういえば、日本の楽天オープンも、錦織が欠場したにもかかわらず連日大入りだった。テニスを見る世界の視野は確実に広がり、興味は深まっている。

 ここに離脱したビッグスターたちが戻って来るはずの2018年は、なんとエキサイティングなことか――すごいことになってしまうぞとゾクゾクしているファンも多いに違いない。

 ディミトロフ自身も「シーズンのスタートはかなりおもしろいことになると思うよ。来年さらに積み重ねていくための最高の下地ができたと思っている。オフシーズンも有意義に過ごせる」と話したが、偉大なチャンピオンたちが戻って来る来シーズンもその勢いを維持できるだろうか。

 実はディミトロフは今季、ジョコビッチやマレー、ワウリンカとは一度も対戦しておらず、ナダルには3戦全敗、フェデラーとの一度の対戦にも敗れている。

 そして無敗優勝を果たしたATPファイナルズではそのナダルとフェデラーと対戦せずにすんだ。

 通算対戦成績でも対ナダルは1勝10敗、対フェデラーは0勝6敗、対ジョコビッチは1勝6敗、対マレーは3勝8敗。ワウリンカにのみ4勝2敗と勝ち越している。

ファイナルズ初出場組は、ビッグ5に勝てていない!?

 さらに、ディミトロフ以外でATPファイナルズ初出場を果たした躍進組も、「ビッグ5」との対戦成績が意外に乏しく、ほとんど勝利は挙げていない。

 一番若いズベレフがフェデラーに2勝3敗、ワウリンカに2勝0敗と2人から複数勝利を挙げているのが少し目に留まる程度だ。

 実績では敵わない彼らの武器は、ディミトロフが言うように今シーズンで得た自信と勢い。一方、大物離脱組だが、こちらもまた不安要素が拭えない。

フェデラーが口にした「復帰後」の難しさ。

 世界は今年のフェデラーの鮮やかな復活劇を目の当たりにしただけに、昨年のフェデラーがしたように半年間“休養”した彼らにも同じことを当然のように期待しているところがある。しかしフェデラーはその楽観的な見方を牽制する。

「去年の僕も、今年の彼らも、あれ以上戦うことはできず、他に選択肢はなかった。休みたくて休んだんじゃない。その原因になった問題は、普通に考えれば何かしら影響を及ぼすはずで、復活には長いプロセスを要することを覚悟しないといけない。僕だって最初からあんなにうまくいくとは思いもしなかったんだ」

右肘、臀部、左膝、右手首……各選手の回復は未知数。

 ジョコビッチは右肘、マレーは臀部、ワウリンカは左膝、錦織は右手首。

 これがそれぞれの「問題」だが、今のところマレーと錦織はブリスベンからの復帰を予定し、ジョコビッチとワウリンカはアブダビでのエキシビション大会で始動することになっている。

 ただ、マレーはまだ「体の調子はいい日もあれば悪い日もある」状態で、ワウリンカは8月に膝の手術をしてから初めての練習を今月になって始めたばかり。

 ジョコビッチもコーチのアンドレ・アガシが「ケガから復帰すれば、彼は過去の自分さえ超えるだろう」と期待しながらも、まだフィジカルトレーニングがほとんどで通常にボールを打つまでには至っていない。

 錦織も通常のボールを軽く打ち始めたのが10月のこと。手首というデリケートな故障部位を考えれば、予定している1月からの復帰の実現にはあまり大きな期待を寄せないほうがいいかもしれない。

来季、大物役者たちは本当に揃うのか?

 リフレッシュ効果と復活への欲望が、彼らのそれぞれの「問題」とブランクの悪影響をどれだけ埋めることができるだろうか。

 シーズン終盤にナダルが膝の古傷を再発させたことも気になる。

 あとわずか5、6週間もすれば、新しいシーズンが始まる。

 煽りたい。

 大いに煽りたいところだが……大物役者たちは本当に揃うのか、開幕前に最新の情報を確認するまで待ったほうがいいかもしれない。

 それまで、彼らの復帰準備が日々アップデートされることを願うばかりである。

文=山口奈緒美

photograph by Getty Images

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