2016年ドラフト1位組の◯と×。頑張り過ぎて故障する新人の悪癖。

2016年ドラフト1位組の◯と×。頑張り過ぎて故障する新人の悪癖。

 2016年のドラフト1位をめぐる争いは、とても興味深いものだった。

 創価大の田中正義と桜美林大の佐々木千隼。

「ドラフトの目玉」と衆目を集めていた両選手に、半分近くの球団が名乗りを上げた。

 ロッテ、ソフトバンク、巨人、日本ハム、広島の順に田中を指名し、ソフトバンクが交渉権を獲得。すると今度は日本ハム、広島、巨人、ロッテ、DeNAが「外れ1位」として佐々木を選び、ロッテがくじを引き当てた。

 単独指名は6球団。つまり、競合した球団全てが、田中か佐々木を指名したわけだ。

 皮肉であり、プロ野球の面白さなのかもしれないが、'10年に1位指名を受けた日本ハムの斎藤佑樹や西武の大石達也がそうだったように、複数球団が競合した即戦力のドラフト注目選手が、必ずしも1年目から他を納得させるほどの成績を出せるわけでもない。

 単独指名の選手が主に力を発揮した。これが、'16年ドラ1組の特徴だった。

チームの勝利に1年目から貢献したドラ1たち。

「〇」(5選手)

楽天 藤平尚真(横浜/投手)……8試合 3勝4敗 防御率2.28
<寸評>シーズン終盤には、2度の大型連敗を止める大仕事で先発ローテに定着。

オリックス 山岡泰輔(東京ガス/投手)……24試合 8勝11敗 防御率3.74
<寸評>ドラフト1位で唯一のオールスター出場。8月26日の西武戦でプロ初完封。

日本ハム 堀瑞輝(広島新庄/投手)……4試合 0勝1敗 防御率3.38
<寸評>9月29日の楽天戦で藤平と投げ合い5回1失点。先発、中継ぎで経験を積んだ。

阪神 大山悠輔(白鴎大/内野手)……75試合 打率.237 7本塁打 38打点
<寸評>9月1日の中日戦で、球団新人では'64年の富恵一以来53年ぶりに4番で出場。

DeNA 濱口遥大(神奈川大/投手)……22試合 10勝6敗 防御率3.57
<寸評>新人唯一の2桁勝利。日本シリーズ第4戦で8回1死まで無安打投球を披露。

では田中正義、佐々木千隼の1年目はどうだったのか?

「×」(7選手)

ソフトバンク 田中正義(創価大/投手)……1試合 0勝0敗 防御率6.00(二軍成績)
<寸評>'16年ドラフトの目玉選手。春季キャンプで右肩の故障が再発し不完全燃焼の1年に。

西武 今井達也(作新学院/投手)……7試合 1勝0敗 防御率2.35(二軍成績)
<寸評>春季キャンプは一軍スタートも、右肩痛により3日で離脱。故障に苦しんだ。

ロッテ 佐々木千隼(桜美林大/投手)……15試合 4勝7敗 防御率4.22
<寸評>9月13日の日本ハム戦でプロ初完投を飾ったが、期待を裏切る結果に終わった。

広島 加藤拓也(慶応大/投手)……7試合 1勝3敗 防御率4.30
<寸評>デビュー戦で9回1死まで無安打の好投でプロ初勝利。制球難の課題を露呈。

巨人 吉川尚輝(中京学院大/内野手)……5試合 打率.273 0本塁打 0打点
<寸評>一軍では主力を勝ち取れなかったが、二軍では103試合に出場し11盗塁を記録。

中日 柳裕也(明治大/投手)……11試合 1勝4敗 防御率4.47
<寸評>開幕前に右ひじ痛で離脱。6月18日の父の日に、亡き父へプロ初勝利を届けた。

ヤクルト 寺島成輝(履正社/投手)……1試合 0勝0敗 防御率15.00
<寸評>左肘痛などで二軍でも6試合の登板だったが、9月30日の中日戦でプロ初先発。

活躍した選手に目立つ、単独指名。

「〇」にした5選手のうち、藤平(楽天)、山岡(オリックス)、大山(阪神)が単独指名である。

 結果的に「外れ、外れ1位」となったが、DeNAの濱口はドラフト1位で唯一の二桁勝利となる10勝を記録している。

 堀(日本ハム)も高卒ながら先発、中継ぎとして一軍マウンドを経験するなど、来季へ向けて豊かな経験を積んだと言える。

楽天・藤平「90%、100%の力で投げて、やっと」

 ドラフト1位に指名されるような選手は、当然のことながらアマチュア時代のパフォーマンスで群を抜いた存在だった。プロの世界であろうと、その力を実戦でキチンと出すことさえできれば一軍でもある程度は通用するはずなのだ。だからこそ、プロのスカウトも彼らに高評価を与えたのである。

 このことを考える上で、高卒ながらシーズン終盤にローテーションの一角を託され、クライマックス・シリーズにも登板した楽天・藤平の言葉は、カギとなるはずだ。

「1年間投げてみて、自分はまだまだレベルが低いなと感じました。90%、100%の力で投げて、やっと一軍のバッターと戦えるレベルなんだと感じました。これから、もっとバッターとの駆け引きとか、70%、50%の力でも抑えられるようにしないといけないですし、それを1年目で知れたことはよかったなって思います」

 要するに、藤平は色気を出さず、1年目は真っ向勝負を選んだわけだ。

全力を振り絞ってプレーするしか道はない。

 投手陣で言えば、オリックス・山岡やDeNA・濱口もそうだった。ふたりは、入団会見で似たようなコメントを残していた。

 山岡は「これまでと同じように、バッターに攻め込んでいくスタイルを続けていきたい」と言った。実際に、シーズンでは痛打を浴びてもなお、今後への課題を見出すように真っ向勝負を挑んでいたものである。

 濱口も「持ち味である闘争心を前面に出し、バッターに向かっていきたい」と述べていた。制球力は決していいとは言えない。それでも打者の内角を突き、不利なカウントでもチェンジアップで空振りを奪うなど積極性を披露した。3四死球を与えながらも、8回1死までソフトバンク打線を無安打に抑え込んだ日本シリーズ第4戦の好投が、まさにその証である。

ドラ1で一番多い問題は、ルーキーイヤーの故障である。

 ドラフト1位の1年目とは、プレッシャーとの戦いでもある。

「〇」だった選手は、結果としてそれに打ち勝てたのかもしれないが、「×」だった選手はそうはならなかった。

 '15年もそうだったが、'16年のドラフト1位も、田中(ソフトバンク)、今井(西武)、柳(中日)、寺島(ヤクルト)らがそうだったように、思うような成績を残せなかった最たる要因は「故障」だった。

 アマチュア時代から不安を抱えていた者もあっただろう。「ドラフト1位」という看板、そこから派生する周囲の過度な期待が選手の焦りを生み、結果的に故障した、あるいは復帰まで長引いたと考えられケースも多い。

期待に応えるべく頑張って……故障してしまう。

 アマチュア時代から注目され、複数球団から指名されたドラフト1位だった、あるプロ野球OBは、入団当初の心情をこう語っていた。

「自分では『俺はそこまで大した選手じゃない』って思っているのに、周りは『10勝だ』『新人王だ』とすごく期待してくれる。マスコミだって、それが当然のように、大前提のように書くわけじゃない。そりゃあ、プレッシャーは常にあったよ。『期待に応えたい』って思って、とにかく頑張るしかなかったよね」

 とにかく頑張った結果、故障してしまったのなら選手を責めることはできない。プロ野球人生は、まだ始まったばかりなのだ。

「思ってなくても『新人王を目指す』と言わされる」

 前述のOBと同じ境遇で1位入団を果たしている、ある現役選手は、「1年目のことは切り替えることしかない」と前を向いている。

「ドラフト1位は、どうしても注目されてしまう。本心では思っていなくても、『新人王を目指します』とか言わされちゃうというか(笑)。

 プレッシャーはありましたよ。1年目は結果を出せなかったですけど、いい経験も悪い経験も含めて、勉強になりました。

 2年目からは、毎年新しいドラフト1位が入ってきますしね。『勝負はここからだ』と思ってやるだけじゃないですか」

 過酷な宿命を背負い続けたドラフト1位たちの明と暗。

 プレッシャーから解き放たれた2年目以降が本当の勝負だと思えるならば……彼らは確かな未来を切り開けるはずだ。

文=田口元義

photograph by Naoya Sanuki

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