2017年の中日は臥薪嘗胆だった……。京田陽太、大野奨太から反撃開始だ!

イバラの道はまだ続いてしまうのか――。
2004年から8年間で4度のリーグ優勝に輝き、憎らしいまでの強さを見せた中日は、今や低迷期の真っただ中にいる。
バッテリーを中心に鉄壁のディフェンスを誇り、そつのない攻撃で僅差を拾う。そんな試合巧者ぶりを演じてきた主軸たちが一線を退いていくのは、致し方ない。
ここまで低迷が続く要因は、一にも二にも井端弘和、荒木雅博、谷繁元信、和田一浩……レギュラー陣の後継者が育たなかったことに尽きる。
今季は荒木が通算2000本安打を達成したが、このことを裏返せば、荒木を押しのける二塁手が現状でも出てきていない、ということになる。リーグ連覇をかざった広島を見てもわかるように田中広輔&菊池涼介の二遊間は強固で、中日にとっても“アライバ”に続く二遊間の存在はチーム再建のためには不可欠なはずだった。
そんな中、今季ひと筋の光が差し込んだ。
ドラフト2位で入団した新人・京田陽太だ。
開幕スタメンも、打率1割9分8厘ともがいていた。
2月の春季キャンプ。ネット裏の評論家諸氏から漏れた言葉は決して高い評価ではなかった。
「打撃は非力だね、しっかり引っ張れない」「守備も抜群ではない」「少し時間はかかるかな」etc……。
オープン戦では二塁でも起用されるなど決して目立ったわけではないが、何より俊足という武器が、機動力を使うという森監督の方針と合致していた。
その勢いのまま、開幕スタメンに抜てき。ただ4月を終えて打率1割9分8厘ともがき苦しんだ。
そんな京田が1つの転機を迎えたのが、4月28日から始まった阪神との3連戦(甲子園)での、ある試合前のことだった。ウォーミングアップをしていると、「京田ぁ〜」と大きな声で叫ばれた。
声の主は森繁和監督。
すぐさま指揮官の下に走って向かった。
「本当に左方向にねちっこくという意識で」
森監督「お前の持ち味はなんだ?」
京田「足です」
森監督「そのためには何を?」
京田「低い球を打つことです」
森監督「そうだろ。おまえはずっとショートゴロを打っておきゃいいんだ」
時間にして約10分ほどの青空対談。京田はプロの速球に詰まるのを恐れ、早めに始動して引っ張る傾向にあった。これを指揮官の言葉によって中堅方向から左方向へと意識改革したのだ。
京田の俊足なら詰まってボテボテのゴロでも、内野安打を奪える。
これが奏功した。
翌月2日の広島戦。エース野村祐輔から左前打を放ったのを皮切りにすべて中堅から左方向に快音を響かせプロ初の猛打賞。
「小さくなるわけではないけど、本当に左方向にねちっこくという意識で打って、うまくいった。監督もうれしそうな顔をしていたのが印象的です」
京田はこう声を弾ませた。
これも新人の並外れた「対応力」がなせる業。キャンプでの低評価をみるみる覆し、安打を量産していった。
ついに井端の後継者が現れた!
中堅から左方向へのねちっこい打撃を意識したことで、おのずと球を最後まで見極められる。その副産物として、内角の変化球を引っ張りスタンドに放り込むシーンも生まれた。終わってみれば、新人の149安打は歴代5位。セでは1958年の長嶋茂雄(巨人)の153安打に次いで多かった。
8月9日の広島戦では5安打も記録。これは新人の猛打賞記録を持つ長嶋すらできなかった「快挙」だ。
DeNAの濱口遥大との決戦と見られた新人王レースも堂々と制して、今や中日にとって欠かせない存在となったと言える。
井端の後継者として、遊撃手のポジションが固まったことはチームにとって大きなプラスだ。
そしてもう1つ、チーム再建に向け欠かせないのが正捕手の存在だ。黄金時代を築いてきた名捕手・谷繁の後継者育成は、中日にとって長年の課題だった。
京田、大野と、ようやくセンターラインが固まった。
谷繁元信監督1年目のシーズンオフには、西武・炭谷銀仁朗のFA獲得に動いたが失敗。
翌年も日本ハム・大野奨太の獲得調査を進めたが、結局実現しなかった。
そしてようやく今オフになって大野の獲得に成功。日本一を経験した捕手の存在は、何よりチームに安定感をもたらすに違いない。
京田の出現、大野の獲得でようやくセンターラインが固まりつつある中日。ただこれで来季は6年ぶりのAクラスを視界にとらえたといえば、そう甘くはないだろう。
昨年に続き、今季も先発陣の2桁勝利はなし。救援陣も今季は守護神・田島慎二が奮闘したが、盤石とは言い難い。
若手の小笠原慎之介、柳裕也、鈴木翔太らの底上げはもちろん、獲得に動く新外国人投手にかかるウエートは大きい。
今オフはソフトバンクを退団した松坂大輔の獲得に動き、1月下旬に入団テストを行う予定だ。平成の怪物が万全なら戦力として起用する可能性は高いが、果たして右肩の状態がどこまで回復しているのか……。
ただひとつだけ言えることがある。松坂がナゴヤドームのマウンドに立つことができれば、野球ファン以外からも注目を集めるのは必至だということだ。話題の乏しい中日にとっては朗報だろう。その行方を注視したい。
文=伊藤哲也
photograph by Kyodo News
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