良くも悪くも期待を裏切る球団!?3年目の梨田・楽天は優勝できるか。

良くも悪くも期待を裏切る球団!?3年目の梨田・楽天は優勝できるか。

 評論家の大半が自信たっぷりに断言していた。

「パ・リーグの優勝はソフトバンクだ!」

 見事的中。おめでとうございます。でも、彼らはしくじった。

「楽天はまあ、Bクラスでしょう」

 2017年まで3年連続Bクラス。うち、最下位2度。直近の実績くらいで「弱者」扱いされたその鬱憤、晴らしてみせよう、ペナントレース――とばかりの快進撃。4年ぶりのAクラスとなる3位。杜の都の牛タンパワー……もとい、犬鷲軍団の力を思い知ったか野球界よ。

キャンプ、オープン戦では、静まり返っていた楽天。

 2017年、楽天は野球の底力を見せた。

「二度あることは三度ある!」

 近鉄、日本ハムのいずれも監督就任2年目でのリーグ優勝を果たした名将・梨田昌孝が、声高らかにチームを鼓舞する。

 さらに、地元仙台市出身でプロ通算103勝の岸孝之が、西武からFAで加入したのだから無理もない。

 意気揚々――のはずだったが、実際の船出は意気消沈の連続だった。

 肥大化して久米島に上陸した若手のホープ・オコエ瑠偉が、春季キャンプ2日目で右手薬指の負傷のため無言の帰仙。聞けば全治3カ月だそうな。割と重症。初日に見せた、あの陽気なバレンティンのモノマネ、何かのメッセージだったか?

「オコエのことはもういいから、他の選手を取材してください」

 怒気を抑え、静かにメディアを諭す梨田監督が怖かった。チームのコンディションが整わない。同時期に塩見貴洋がヘルニアで、キャンプで絶好調だった3年目の安樂智大も、右太ももの怪我でサイレント離脱。とどめは、開幕投手が決まっていた岸のインフルエンザ。

 まさに“一難去らずに、また一難”。暗雲が垂れ込め続けた。

名将・梨田監督の采配で、開幕戦から怒涛の進軍!

「嘘だと言ってくれよ! イーグルス!!」

 ファンの悲痛な叫びが多分届いたのか、シーズン開幕前にチームに漂っていた深い霧は、開幕するやいなや、嘘のようにきれいさっぱり打ち払われた。

 窮状を打開したのは、やはりこの男。猛牛遺伝子を受け継ぎし“いてまえ”の名将・梨田昌孝。オープン戦でからっきしだった打線に指揮官が、驚くべきテコ入れを施したのだ。

 1番・茂木栄五郎、2番・カルロス・ペゲーロ、3番・ゼラス・ウィーラー、4番・ジャフェット・アマダー……打線のつながり? セオリー? なんぼのもんじゃい! と言わんばかりの超強力打線を形成し、いざ決戦の舞台、開幕戦へ――。

 開幕戦。本当は辟易しているのに、友達の横綱・稀勢の里ネタを惜しげもなく提供してくれたナイスガイ、美馬学が岸の代役を見事に果たし6回を3失点で抑える。

 その力投に応えたのが、楽天(梨田猛牛)打線の象徴ペゲーロだ。

 延長11回に繰り出した特大の決勝バックスクリーン弾。

 この勝利を皮切りに、オリックスとの開幕カードで3連勝。奇しくも、猛牛たちのホームグラウンドで、楽天は完全に勢いに乗った。

なんと! 3月、4月は首位でした!

 <勝機(とき)は〜来たり〜 荒鷲よ〜翔べ〜 今日もわれ〜らと〜 共に戦おう〜 杜の都へ〜 勝利を運べ〜 我らの敵は〜い〜な〜い〜♪>

 Koboパーク宮城にこだまするオープニングテーマは、言うまでもなく『青葉城恋唄』から拝借したもの。元ネタの作者さとう宗幸も地元仙台のテレビ番組『OH! バンデス』で「お晩です〜」とシーズン序盤の快進撃を毎晩喜んでいた。

 切り込み隊長の茂木栄五郎がきっちり仕事を果たす。登場曲『止まらないHa〜Ha』に合わせるように、“栄ちゃん”が快打を連発。

“ペギー”の愛称で親しまれるペゲーロの豪打も止まらない。ペギー葉山が旅立った4月12日同日には哀悼を込めた鎮魂弾だ。米軍が開発した、ミサイル追尾の軍事レーダー「トラックマン」もびっくりの超弾道150mアーチで、レフト後方の観覧車から高みの見物と決め込むファンの度肝を抜いた。

 同僚の爆発に、「ハクション大魔王」にそっくりとされるウィーラーのテンションも上がる。呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ〜ンとばかりに、この3年目助っ人がまるで魔法のように長打を打ちまくってくれた。そして、アマダーも少しは打った。

 その結果……3、4月は、驚くなかれ16勝5敗の首位!

 楽天は開幕ダッシュに成功したのである。

「春の珍事」

 誰が言った?

打撃陣の奮闘に呼応するかのように、投手陣も爆発!

 楽天の本領発揮。

 でも、まだだ。まだこんなもんじゃない!

 見せてやる、野球の底力を――そう言わんばかりに、投手陣も呼応した。

 地元である西中田小、柳生中、名取北校、東北学院大と「He's Back」の文字が、Koboパーク宮城のスクリーンで絶妙にシンクロする。西武に入団した時「I'll be back」と地元に言い残していたというわけでもないが、岸が期待通りのパフォーマンスを披露し、故郷に錦を飾った。

 開幕前に「岸さんと最多勝争いをしたい」と、本人に向かって宣言した絶対エースの則本昂大も、8試合連続2桁奪三振の偉大な記録を樹立してチームを引っ張った。

 辛島航は地方球場で連戦連勝。「サブ」こと福山博之が、祭りだわっしょいとばかりに、不動のセットアッパーとして大活躍。

「試合をすれば勝てるという雰囲気だった」と、若き守護神・松井裕樹も吠えた。

 我らの敵は〜い〜な〜い〜……はずだった。前半戦までは。

歓喜の涙から、いつの間にか絶望の涙へ。

 首位で迎えた後半戦。

「Smart&Spirit 2017東北・夢・再び」のスローガンのもと、ファン全員が信じて疑わなかった、4年ぶりの歓喜の涙。それが、絶望の涙に変わるなど、誰が予想しただろうか。

 故障者は突然に。

 6月に茂木が、右ひじの故障で離脱していたことですら大打撃、なのに……。

 7月に入ると藤田一也が腰痛、岡島豪郎が左肩の亜脱臼、ペギーも左太ももの肉離れ、今江年晶が左腕の骨折。そして極めつけは松井裕樹の左肩痛。

 みんな一軍登録抹消。

 3年連続での故障者大量発生!

 嘘だと言ってくれ!……残念ながら、この時ばかりは嘘じゃなかった。

 小説なら絶対に描かれない、分かりやす過ぎる負の連鎖。無情にもその惨状にとどめを刺してしまったのが、ジョシュ・コラレス、27歳、投手、アメリカ・カリフォルニア出身。途中加入の助っ人だった。

「コラレスの呪い」とドラ1ルーキーの活躍ぶり。

 8月15日の西武戦で来日初先発を果たしたこの男は、3回5失点と炎上。後続もことごとく打たれ17失点の大敗。

 翌日からチームは5連敗。

 ドラフト1位ルーキー・藤平尚真のプロ初勝利で連敗を止めたが、そこから引き分けを挟んで今度は怒涛の10連敗。久々の勝利を呼び込んだのは、またしても藤平だった。

 自然と拡散する「コラレスの呪い」。

 コラレスよ、この19歳の新人投手に足を向けて寝ることなどできんだろう。なぜ、球団は'18年も残したんだ……。

 ペナントレースが終わってみれば、優勝したソフトバンクに15.5ゲームの大差をつけられての3位。0勝8敗とけちょんけちょんにされた西武の菊池雄星から、せめて2勝くらいしていれば2位にもなれただろうに……。

 全ては後の祭りである。

日本シリーズでDeNAとの「下剋上対決」が見たかった。

 せめてもの救いは、クライマックスシリーズでの奮闘か。

 ファーストステージ初戦で菊池にまた弄ばれてしまったが、第2戦から連勝。「初戦で負けたら突破率8.7%」の壁を「ファーストステージ突破率100%」の二度の実績('13年はリーグ優勝。だから、厳密には'09年の一度きり)が打ち破った。

 ファイナルステージでも王者ソフトバンクに連勝。第3戦から3連敗したが、間違いなくファンに夢を与えた。

 日本シリーズでDeNAとの「下剋上対決」が見たかった。

 何はともあれ、いい意味で期待を大きく裏切った'17年。

 喜びも悲しみも味わいました。犬鷲軍団は高く飛び続けます。あの歓喜、嬉し涙をもう一度。'18年は必ず見せてくれるでしょう、野球の、楽天の底力を――。

 竜飛崎から磐梯山まで。さあ、みんなで歌いましょう! 羽ばたけ楽天イーグルス♪

文=田口元義

photograph by Kyodo News

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