2019年の箱根駅伝はどうなる?勝負のポイントはやはり“山”。

2019年の箱根駅伝はどうなる?勝負のポイントはやはり“山”。

 1区でルーキーの西山和弥(1年)が飛び出すと、2区の相澤晃(2年)は区間3位の好走でその差を維持。3区のエース・山本修二(3年)と4区の吉川洋次(1年)は区間賞と区間新(区間2位)の走りで、2位にあがった青学大を引き離す――。

 4年生抜きのオーダーで挑んだ東洋大の今回の箱根駅伝・往路。前半から主力を並べ、先手必勝で勝負を挑んだのは、総合優勝を獲りに行くための攻めのオーダーだった。そして、その先制攻撃は見事に決まったように見えた。だが、最終的にその勝負を決めたのは箱根駅伝特有の“山”での戦いだった。

 4区終了時点で東洋大の青学大に対するリードは2分以上。

「総合優勝争いに踏みとどまるためには、最悪でも6区終了時点で青学大と並んでいる状態にしておきたいですね」

 そう話していた東洋大の酒井俊幸監督にすれば、往路優勝はもちろんのこと、2位の青学大に1分以上は差をつけて往路のゴールを切りたいという思惑があった。5区での1分程度の負けは覚悟していたこともあり、そこまではほぼ想定通りの流れといえた。

 だが、酒井監督の想像以上の走りを見せたのが、青学大の5区・竹石尚人(2年)だった。リラックスした走りで着々とその差を詰めると、区間5位の1時間12分49秒で走りきり、その差を36秒まで詰めたのだ。

往路の36秒差で、青学大の4連覇はほぼ決まった。

 青学大の6区に控えるのは、前回も区間2位で走っている小野田勇次(3年)。

「小野田は悪くても58分台前半では行くでしょうから、うちが59分台で走っても1分以上の差はつけられる」

 レース前、酒井監督はそう覚悟していた。つまり、往路終了時点で36秒「しか」差をつけられなかった時点で、青学大の4連覇の可能性は限りなく高くなっていたのである。

 6区を走った東洋大の今西駿介(2年)も、区間5位と健闘した。15km付近までは青学大に追いつかれずに、必死の粘りを見せた。

 だが、序盤は余裕を持って走っていた小野田は今西をかわしてからのわずか5km強で、逆にその差を52秒まで広げる走りをみせた。その走りは7区の林奎介(3年)の区間新の快走をアシストし、8区のエース・下田裕太(4年)を待たずして勝利を決定づける結果となった。

2区の区間賞選手、山の実力者が残る青学大。

 青学大の総合力の高さとピーキングのうまさを見せつけられた今大会の結果。次回大会の戦いを睨めば、主力の田村和希(4年)と下田が抜けるとはいえ、2区で区間賞を獲得した森田歩希(3年)が残るうえ、3年生になる竹石と4年生になる小野田という「山の実力者」も健在。小野田は順調に行けば次回は区間記録を更新する57分台で山を駆け下るのは必至で、竹石も今大会以上に記録を伸ばしてくる可能性が高い。

 山の大砲2人が順当に走るというアドバンテージを持っていれば、かつてはチームメイトが5区の神野大地(現コニカミノルタ)に絶対的な信頼感を持っていたように、他の区間の選手たちはプレッシャーを感じることなく自分の走りに集中できる。それはそのまま、青学大の勝ちパターンにも通じるのだ。

 逆に言えば、山で青学大に対抗できること――それこそが王者の5連覇を阻むためのキーポイントということになる。

青学大のライバルに成り得るのは東洋大。

 青学大に対抗できる“山”の戦力を持つチームの筆頭格は、今回5区で区間新を出した青木涼真(2年)と、6区を58分台の区間3位で走った佐藤敏也(2年)がともに次回大会も残る法大だろう。だが、総合力を考えると上位に食い込む可能性はあっても総合優勝までは難しい。

 そうなると青学大のライバルに成り得る可能性を持つ一番手は、やはり東洋大ということになる。今回は10区間で4年生1人だけというこれまでにない若いメンバー編成ながら、総合でも2位に食い込んだ。

 特に冒頭に述べたように1区から4区までの爆発力は素晴らしく、次回大会も前半戦は青学大にも優位に立てる可能性がある。さらに今回6区を走った今西も次回大会も残り、今回の経験を活かすことができる。仮に58分台に入ることができれば、6区で青学大の小野田に対しても1分以内の差で抑えられる。

 そうなると課題となるのが、今回青学大に1分半近い差をつけられた5区の山上りの差をどれだけ詰められるかということになる。今大会、上った田中龍誠(1年)が再び挑むのか、それとも別のクライマーを見つけ出すのか。いずれにせよ最低でも青学大相手に1分以内の負債で済むようにできれば、今回酒井監督が想定していた復路での平地勝負に持ち込める可能性が出て来る。

主力が3年になる東海大も有力候補に。

 さらに、スピードランナーを揃える東海大も、主力が3年目になる次回は黙っていないはずだ。レース前から評判が高かったが、今回の敗因は、2年生エースの関颯人を疲労骨折で欠いて往路で流れに乗れなかったことだ。

 それでも復路では、6区で中島怜利(2年)が区間2位の58分36秒で走って9位から5位に順位をあげた。その走りで勢いをつけると、8区の館澤享次(2年)も区間2位の走りで総合順位を3位まで押し上げた。アクシデントもあった10区の失速で最終的には5位に落ちたが、往路の9位から3位をうかがえるところまで盛り返したのは、やはり底力の確かさを証明するものだった。

 悪い流れを跳ね返しての快走を見せ、山下りのスペシャリストとなりうる中島が次回大会も残るだけに、今回区間12位に沈んだ5区を上位で走れるようになれば、平地の走力は抜け出ていて層も厚いだけに、十分総合優勝争いを繰り広げることができるだろう。

コンディションが良ければ、実力ある選手多い順大も。

 もう一校、山にアドバンテージをもつのが順大だ。今回は2区を走ったエースの塩尻和也(3年)が万全ではなく、もうひとりの主力の栃木渡(4年)を1区に持ってくる苦肉の策を取り、序盤で流れに乗れなかった。だが、5区には前回、今回と2年連続で区間上位で走った山田攻が控えており、その山田と塩尻を5区と2区という主要区間の2本柱にすることができる。あとは6区で59分台前半で走れる選手を育成できれば、元々実力のある選手も数多くいる大学だけに、総合優勝戦線に絡んでくる可能性も十分にある。

 通常の駅伝にはない「特殊区間」と呼ばれる山上りと山下り。そこに大きな武器を持つ青学大は、次回大会も優位な立場で箱根駅伝を迎えることになる。史上3校目となる5連覇を狙う絶対王者に対抗するためには、各校とも“山”の攻略が最大の条件になってくるだろう。

文=折山淑美

photograph by AFLO

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