森保ジャパンの意義ある1−0発進。“縦”を消されても工夫で取った1点。

森保ジャパンの意義ある1−0発進。“縦”を消されても工夫で取った1点。

 オフ明け最初のゲームは、得てして苦戦するものだ。

 チームが集合したのは1月2日。最低限の戦術を詰め込み、6日の夜に慌ただしく中国は上海と南京の間に位置する江陰に乗り込んだ。

 しかもチームが立ち上げられたのは昨年12月で、そのときからメンバーが15人も入れ替わっている。おまけにピッチの芝は至る所が禿げているのだから、スムーズなパス回しなど、望むべくもない。

 だがU-21日本代表が直面したのは、こうした“三重苦”だけではなかった。

 U-23パレスチナ代表が入念に取り組んできた日本対策によって、日本は“縦のルート”を完全に封じ込まれていた――。

ボランチ、2シャドーへのパスコースを消され……。

 2年に一度開催されるU-23アジア選手権。気温0度、極寒の江陰で1月10日に行われたパレスチナとの初戦で森保一監督が採用したのは3-4-2-1、送り出したのは以下の11人だった。

GK小島亨介(早稲田大)、DF庄司朋乃也(金沢)、立田悠悟(清水)、板倉滉(仙台)、MF浦田樹(北九州)、三好康児(札幌)、神谷優太(愛媛)、藤谷壮(神戸)、岩崎悠人(京都)、井上潮音(東京V)、FW小松蓮(産業能率大)。

 昨年12月のタイ遠征、M-150カップのメンバーが6人も名を連ねたのは、戦術理解度において彼らにアドバンテージがあったからかもしれない。

 2分に右ウイングバックの藤谷がクロスを入れると、5分には1トップの小松の粘りからボランチの井上が放ったシュートがバーを叩く。11分には3バック左の板倉がドリブルで運んでミドルシュートを放つ。

 もっとも、日本が狙い通りの攻撃を繰り出せていたわけではない。

「なかなか絡むことができなくて、けっこう難しかったですね」

 そう振り返ったのは、2シャドーの一角に入った岩崎である。相手の2トップが日本のセンターバックからボランチへのパスコースを消しに来る。さらに、相手の2ボランチが日本の2シャドーにマンマークで付くという徹底ぶり。「あれだけマンツーで来られると、受けにくい部分があった」と、もうひとりのシャドーの三好も振り返る。

マンマークなら、他の選手にスペースが生まれる。

 4年前の今大会が立ち上げの場となった手倉森ジャパン(リオ五輪代表)とは異なり、森保ジャパンは前述したように、すでに昨年12月に試合を行っている。それは、つまり相手にスカウティングの機会を与えるということも意味していた。

 しかし、だからこそ試されたのが戦術理解度であり、指揮官がコンセプトに掲げる「柔軟性」であり、「対応力」だった。

 本来ならワンツーやフリックパスなどを駆使して中央から攻略したいところだが、コンディション面や連係面が高まっていない現状では難しい。だが、“縦のルート”を塞がれた日本は、マークされている2シャドーが囮になることで、サイドや相手の最終ラインの裏に活路を見出し、パレスチナを押し込んでいく。ところどころでミスも散見されたが、工夫やチャレンジはたしかに見て取れた。

 そのチャレンジが20分、結果につながった。

 再びドリブルで持ち上がった板倉が中央を突き進み、井上とのワンツーでフリーになり右足を振り抜く。これが、ゴール左に決まった。

「前がマンツー気味で付かれていたので、自分が何とか入って行って、そのスペースを使えたらチャンスになると思っていた」と、板倉自身が振り返る会心のゴール。

 ディフェンスラインの選手が持ち上がって数的優位を築き、相手のマークを剥がすという点で、森保ジャパンの象徴的なゴールと言っていい。「やろうとしていることを実践してくれた」と指揮官も賛辞を贈った。

森保監督「後半も同じことをトライしようとしていた」

 もっとも、攻略の糸口を見出したはずの日本は、後半に入ってトーンダウンしてしまう。「相手がボールアプローチを厳しく激しくギアを上げてきた中で、我々にミスが出て、後手を踏んだところがあった」とは森保監督。コンディション不良、連係不足が後半に入って如実に表れ、シュートまで持ち込めなくなった。

「柔軟性」や「対応力」のコンセプトに照らせば、例えば、板倉をボランチに上げたり、交代選手を使ったりしてシステムを変更してもよかった。だが選手交代は小松→田川亨介(鳥栖)、三好→高木彰人(G大阪)、浦田→遠藤渓太(横浜FM)と、同ポジションで入れ替えただけにとどまった。

 ただし、「後半も同じことをトライしようとしていた」という指揮官の言葉を聞けば、戦い方を大きく変えなかったのは、3-4-2-1のテストや選手たちの柔軟性の確認といった意味合いが強かったのかもしれない。

他のチームは23歳以下、日本だけが21歳以下。

 終盤に入ってパレスチナの反撃を受けたが、なんとか凌ぎきり、森保ジャパンは白星スタートを切った。「初戦に勝てたことはすごく大きいし、難しい中で勝てたことは自分の中でもホッとしている」とキャプテンマークを巻く神谷は胸をなでおろした。

 今大会は16チームで争われているが、2年後のオリンピックを睨んで21以下のチームを編成しているのは日本だけ。ほかの15チームは23歳以下のチームで臨んでいる。

「優勝を狙っている」と森保監督が言うように、参加する以上は勝利を求めて戦うが、一方で、森保ジャパンにとって今大会は2年後を見据えた腕試しの意味合いも強い。4年前の同大会をベスト8で終えた手倉森ジャパン(リオ五輪代表)が、その2年後のリオ五輪アジア最終予選で優勝したように、東京五輪までの2年間でいかに成長していくか――。

 その意味で言えば、課題が溢れるように出ながら勝点3を奪えたこの試合は、理想的な展開だった。

文=飯尾篤史

photograph by Kyodo News

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