トッティ引退後のローマを大改革!華より“汗をかけ”の兄貴分監督。

トッティ引退後のローマを大改革!華より“汗をかけ”の兄貴分監督。

 カルチョの国の“冬の王者”はナポリが戴冠した。

 シーズンの半分を折り返した昨年末時点の最多得点チームは勝点差1で追うユベントス。スクデットレースは2強のつば迫り合いが始まっている。

 だが、前半戦で最も堅牢な守備を見せたチームはナポリでもユーベでも、ましてや2強に続く3位のインテルでもなかった。

「最少失点とは耳に心地いい響きだね」

 堅守の伏兵ローマを率いるのは、就任1年目のOB監督ディフランチェスコである。

 前半戦のクラブ勝点記録「44」は惜しくも逃したが、指揮官にとって初挑戦のCLではグループリーグ首位突破という快挙を成し遂げた。

“ポスト・トッティ”元年の今季、ローマは生まれ変わりつつある。

トッティ、中田らと同僚だったディフランチェスコ。

「伝統的にローマは開放的で、放任主義を良しとするクラブだ。ロッカールームのドアは開けっ放しで、誰が入ろうが出ようがまったくの自由だった」

 3年前、まだサッスオーロの監督だったディフランチェスコを筆者が取材したとき、彼は現役時代に4シーズンを過ごした古巣のクラブ風土をこう懐かしんだ。

 '01年に主将トッティやFWバティストゥータ、MF中田英寿らとスクデットを獲った。ディフランチェスコは、今も仲の良い友人であるモンテッラ(現セビージャ監督)とともに指導者へ転身した数少ない優勝メンバーの1人で、極度の攻撃サッカー信奉者として知られている。

 昨シーズンが終わった後、ローマからは多くの人材が流出した。

 リーグ2位とCL本戦出場権を得た智将スパレッティがインテルの新監督となり、守護神シュチェスニ(現ユベントス)やFWサラー(現リバプール)といった主力が次々に強豪へ引き抜かれた。

 何より存在が肥大化しすぎたともいえるトッティの引退により、その精神的空白が新チームに及ぼす影響は誰にも予想できなかった。今季のローマを率いるのは、どんな監督にとっても難業だったに違いない。

プレシーズンで大敗続き、CLは厳しい組み分けに。

 だから、クラブOBであるディフランチェスコの就任が発表されたとき、うるさ型の首都メディアやロマニスタたちは一斉に歓迎した。

 まったくの部外者どころか貴重なスクデット経験者、さらに攻撃派で知られる彼のことだから、これまでのようにきっと派手で享楽的な自分たち好みのサッカーをやってくれるだろう。彼らはそう考えていた。

 ただし、夏のプレシーズンマッチでセビージャとセルタに計6失点で連敗すると、彼らは掌を返して新監督を経験不足だと詰った。さらに、CLでプレミア王者チェルシーなど過去4季で2度決勝進出したA・マドリーと同組となることが判明すると、ローマを取り巻く熱は急速に冷え込んだ。

ゼーマンは尊敬しているが、カペッロからも学んだ。

 恩師ゼーマンから受け継いだ攻撃志向の4-3-3を基礎に置くディフランチェスコだが、彼にはもう1人、師と仰ぐ指導者がいる。ゼーマンの後に就任し、鉄の規律をチームに叩きこんで永遠の都にスクデットをもたらした鉄面皮の名将カペッロだ。

「私はゼーマンを尊敬しているが彼のコピーはしない。ロッカールームをどう掌握するかについては、カペッロから大いに学ばせてもらった。2人の長所をミックスして、私流のチームに仕立て上げる」

 新たに正守護神に収まったブラジル代表GKアリソンを中心にした守備陣は、リーグ戦18試合にCL6試合を加えた24試合のうち実に12試合を完封した。連動して壁と化す4年目のDFマノラスと2年目のDFファシオによる巨漢CBコンビを攻略することは至難の業だ。

 守備に重きを置きながらも、左にマンチェスター・CからやってきたDFコラロフ、右に韋駄天フロレンツィを置くSBコンビはリーグ屈指のチャンスメーカーとして相手を揺さぶる。

華は期待できないからこそ「全員で走れ」。

 激しいハイプレスで守備陣をサポートするのは、武骨で質実剛健そのものの中盤だ。

 このチームにトッティが持っていたサッカーの“華”はあまり期待できない。「その分全員で走れ」と現役時代に汗かき役のMFだったディフランチェスコは教え込んだ。

 試合直前のミーティングでは、攻守の選手一人ひとりに合わせて事前に調べあげたマーク相手の弱点や戦況ごとの対処法などを叩き込む。

 0−1と敗れはしたが国内最強とされる相手に互角以上に戦った8節ナポリ戦で自信をつけたローマは、13節のローマ・ダービーで難敵ラツィオを2−1で見事撃破。

 さらにグループリーグ突破は困難とされていたCLでも、本拠地オリンピコでチェルシーを3−0で破るなど快進撃を見せ、首位通過を果たした。

「こんなに充実したシーズンの前半戦は今までなかったんじゃないか。ディフランチェスコが就任してくれたおかげだ。チームの守備が昨季までと比べて格段に良くなっている」

 多くの指揮官に仕えてきたプロ17年目のベテラン主将MFデロッシも、スクデットの威光を持つ“先輩”には素直に耳を傾ける。

 新監督は、大晦日に泥酔状態でSNS動画をアップしたMFナインゴランに、年明けのアタランタ戦でベンチ外としてお灸を据えた。

昨季得点王のジェコがまさかの大スランプ。

 気になるのはエースFWジェコのスランプだ。

 昨季29ゴールを挙げて栄えあるセリエA得点王となったジェコだが、昨秋以来スランプに苦しんでいる。

 開幕直後こそ好調だったが、10月1日の7節ミラン戦を境に当たりがピタリと止まった。

 フィジカルコンディションは万全、前線でアシストプレーもこなし、ボールが来なければ自ら中盤まで走る。昨年末までにリーグ最多69本ものシュートを放ったがネットを揺らすには至らない。リーグ最多4度もゴール枠に嫌われて、1ゴールあたりの所要プレー時間も大幅に悪化している。

兄貴分として、ボスとしてロッカールームを掌握。

 エースが不調なら他のFWたちが奮起すればいいが、昨夏の補強に総額8000万ユーロを費やしたシックとデフレル、ウンデルの3人は揃いも揃ってリーグ戦で不発。

 ローマがナポリとユーベの2強に後半戦も食らいついていくためには、ジェコの再爆発が絶対に必要なのだ。

「今季は難しくなった。正直トッティやサラーがいてくれれば、とときどき思うことがある」とジェコが愚痴った際には、ディフランチェスコはすぐに彼を呼び出し、試合ごとの意義や戦術を説明、メンタルケアに努めた。

 兄貴分として、ボスとして、今ローマのロッカールームを掌握するのは新監督ディフランチェスコであることは間違いない。

 後半戦の初戦にあたる年明け6日の20節アタランタ戦に、ローマは1−2で敗れた。先月20日にはコッパイタリアのベスト16ラウンドでトリノ相手にやはり2失点し敗退している。

「運命は自らの手で変えることができる」

 自慢の堅守と新生ローマはここまでが限界か。

「いつかCLで采配を振るってみたい。それが夢だ」

 3年前の取材で、最後に「サッカーでの夢は?」と尋ねた。初めは「1日1日を大事に生きているから、目標は持たないようにしている」と模範的な言葉で濁されたが、どうも真実味がない。

「本当に?」と念押ししたら、ようやく「ハイレベルの舞台で自分の腕を試してみたい」と明かしてくれた。“サッスオーロでCLに出るのは到底不可能、つまり自分はいつか出ていく”と言っているも同然だから、最初は同席していた広報に気を遣っていたのだ。広報氏は苦笑していた。

「サッカーでは勝つことも負けることもある。大事なのは、そのいずれの結果でも受け入れ、次に繋げていくことだ。運命は自らの手で変えることができる」

課題山積だが、トッティ不在を誰もが嘆かない。

 反骨精神にあふれるディフランチェスコは念願だったCLが、昨季チームの恩恵によるものだと十分理解している。来季の出場権こそ自らの手で勝ち取りたいと考えているにちがいない。

 守備立て直しと攻撃陣のブラッシュアップ、やることは山ほどある。だが、今のチームにもはやトッティの不在を嘆く者はいない。

 セリエAは2週間のウインターブレイクに入った。

 中断明けの21日、21節のインテル戦がローマの後半戦を占う試金石になるはずだ。

文=弓削高志

photograph by Getty Images

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