選手村の中はどうなっているのか。伊藤華英が感じた五輪特有の空気。

選手村の中はどうなっているのか。伊藤華英が感じた五輪特有の空気。

 平昌は、晴天が続いている。

 どんなに嘆いても、待ち望んでもこの時はやってくる。

 4年に1度のオリンピック。引退して5年になるが、何となく心がざわつく。

 この日に向けて、どれだけの人が準備をしているのだろうか。自分自身の経験を思い出す。アスリートたちの想いを、平昌と江陵を往復しているだけで感じる。

 平昌のメインスタジムの周りには、各国の言葉で「友情」「Gracias」など、書かれたコーナーなどもあり、街もお祭りムードが漂っている。

 江陵オリンピックパークも準備が整ってきているようだ。人が増えてきたことをひしひしと感じる。

 引退しても、もう一度この空気を感じられるなんて思ってもみなかった。

 アスリートたちは、英気を養っているだろう。それを支えるコーチやスタッフも、同じ気持ちであると想像できる。

中でも注目度が高いベニューは、選手村。

 アスリートは沢山の人に支えられていると、引退して改めて感じる。

 今回の平昌オリンピックは、世界中の約3000人のトップアスリート、1万4000人の報道陣が集まる。その他のスタッフも入れると、相当な数の人がここ韓国に集まる。

 会場は平昌と江陵。スキーや、スノーボードなどは主に平昌で、スケートやホッケーは主に江陵で行われる。開会式は平昌だ。

 どちらにもオリンピックパークがあり、賑わっている。

 ベニュー(会場)は多くあるが、中でも注目度が高いベニューは、アスリートビレッジ(選手村)ではないだろうか。

 大会期間中、選手たちが寝泊まりする場所だ。冬季なので、平昌と江陵の2箇所にあることも知っておきたい。私は、江陵にあるアスリートビレッジを視察してきた。ビレッジに着くとインフォメーションデスクがあり、丁寧にボランティアの方が案内してくれる。受付をし、ビレッジの中に入る。

自分が出場した北京やロンドンと比べると。

 広い土地、そして人がたくさん集まる光景は、現役時代に寝泊まりした北京やロンドンオリンピックの選手村を思い出さずにはいられなかった。現役の時はホスピタリティの様子にはそこまで興味がなかったが、立場が変わると目に入るポイントも変わる。面白いものだ。

 もちろんセキュリティを通る。

 英語で話しかけてくれる人もいるし、韓国語で話しかけてくれる人もいる。挨拶もオリンピックの醍醐味。色んな国の人と会える。

 中に入ると世界中の国旗が選手を迎えてくれる。その隣には美容室やネイル、花屋、コンビニ、サムスンのブース、選手たちが寝泊まりする部屋のレプリカ、民族衣装や韓国の文化に触れることができる場所もあり、私が出場した頃とあまり変わってはいなかった。

 ただ、花屋はたぶん初めてみる光景だ。韓国らしいというか、親しみやすそうな年配の女性たちがいた。緊迫している選手には、少しホッとする空間ではないだろうか。

 その先には、メインの24時間開いている食堂だ。

 選手にとって食事はとても大事だ。

 詳しくは見られなかったので品揃えまでは分からなかったが、多彩な食材がありそうな雰囲気だ。

トレーニング場は24時間稼働中。

 選手やスタッフを迎えていたのは、チマチョゴリを着たワークフォース(ボランティアなど)の方々。選手側から、一緒に写真を撮ってほしいと声をかけているシーンも目に入った。

 何と言っても、あっという間のオリンピック期間。長期間にわたる努力の成果を発揮しなければならない、というナーバスな状態をサポートしてくれるのが選手村である。

 立ち並ぶ建物には各国の旗が吊るされていて、「オリンピックだなー!」と私も思わず口から言葉が溢れた。

 選手村の中にはトレーニング場があり、選手たちが24時間トレーニングできる。

 私が出場した北京、ロンドンオリンピックにもあった。リラックスしてトレーニングに集中できたのを覚えている。

ボランティアの青年は「素晴らしい経験」。

 そこのトレーニング場で働く、1人のボランティアの青年に話を聞いた。

 カン・ドヒュンさん、21歳。韓国で5本の指に入るソンギュンガン大学の学生だという。受験は相当大変なはずだが、スポーツもスキーをやるという。日本の秋田にも訪れたことがあるそうだ。

「ボランティアとしてオリンピックに参加できることを誇りに思う。アスリートを近くでサポートできることは、自分の人生でとても素晴らしい経験だ」

 そう話してくれた。

 開催期間の2週間、ずっと選手村で働くという。その間、休日も何日かあるそうだ。6カ月前にボランティアに選ばれ、トレーニングを受け、メールを何通もやり取りして、現在に至るという。

 しかし、彼の上司のマネージャーはもっと忙しい。トレーニング場が24時間開いているから、6人のチームで分担して業務を行っているという。

「私は、2020年の東京大会はチケットを買って見にいきたいと思っています。近い国だし、行かないわけにはいかないでしょう」

 選手の近くで働くことを誇りに思い、この経験を次に活かす。彼だけじゃない、彼のような、ワークフォースが沢山いることだろう。

 スポーツが言語そのものだというように、スポーツが世界を近くしてくれる。

 たくさんの人の人生を感じられる。これこそが、オリンピック、パラリンピックなのではないか。

 私も未来の自分にこの経験を生かしたいと、心に誓った。

 そして、アスリートが満足した結果を出せるように心から祈っている。

文=伊藤華英

photograph by Hanae Ito

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