“スーパー小学生”から十数年……。高木美帆にかかる日本勢メダル第1号!

“スーパー小学生”から十数年……。高木美帆にかかる日本勢メダル第1号!

 2月9日、厳冬の韓国を舞台に開幕した平昌五輪は、10日から種目によっては決勝が始まる。

 史上最多メダルの期待も高まる日本勢の中で、メダル第1号候補として注目を集めているのが、スピードスケート女子3000mに出場する高木美帆(日体大助手)だ。

「3000mはスピードスケート界だけではなく日本選手団にとっても重要になる種目だと思っている。自分の中で3000mは絶対的な自信を持っていける距離ではないけれど、五輪の第一の舞台として全力を尽くしたい」

 エースとしての自覚をうかがわせる、力強い言葉が自然と出てくる。

 今回、高木美帆がエントリーしているのは1000m、1500m、3000m、マススタート、チームパシュートの5種目だが、本人が言うように、中距離を主戦場としている彼女が最も得意な種目は1500mであり、3000mは世界大会に出れば得意と言える距離ではなかった。

 だが、今季は違う。強気の言葉が出てくるのは、大幅に地力を増しているという実感があるからだ。

高木美帆が16年ぶりに書き替えた日本記録。

 象徴されるのは昨年12月1日に行なわれたW杯カルガリー大会女子3000mだ。

 高木美帆はそれまでの自己ベストである4分4秒50を一気に7秒以上も更新し、3分57秒09の日本新記録をマークして、この種目で日本勢として初のW杯優勝を果たした。

 それまでの女子3000mの日本記録は、'02年1月に同じくカルガリーのリンクで田畑真紀(当時富士急)がつくった4分1秒01だった。当時の世界歴代3位に相当する好タイムはその後、約16年も塗り替えられず、個人種目では最古の日本記録となっていた。それを“本職”ではない高木美帆が大幅に上回ったのだ。

「順位よりもタイムがうれしい」。W杯で優勝したにもかかわらず、真っ先に記録を喜ぶくらい、圧巻の成長ぶりだった。

周囲の予想以上に活躍してしまった難しさ。

 スケートが盛んな北海道中川郡幕別町で3人兄妹の末っ子として生まれ、兄や2歳上の姉・菜那(日本電産サンキョー)と一緒にスケートに通うようになった。小学校高学年になるとメキメキと頭角を現し、小6で高校生の記録を上回るタイムを出すほど。地元では“スーパー小学生”として知られ、いつしか「ソチ五輪の目玉候補」とささやかれるようになっていた。

 ところが周囲の予想をはるかに超える急成長をしてしまう。

 中学3年生でバンクーバー五輪代表選考会に勝って五輪切符を手にしたとき、高木美帆は、「(選考会期間の)この3日間で人生が変わっちゃいました」と屈託のない笑みを浮かべた。

 国際スケート連盟(ISU)の五輪出場資格では、五輪前年の6月末までに15歳になっていることが必要だったが、高木美帆の誕生日は5月22日。わずかの差で規定をクリアするという「運」も持ち合わせていた。

15歳の少女は谷底も経験しながら、たくましく成長した。

 しかし、スピードスケートの史上最年少選手として出場したバンクーバー五輪では下位に沈み、ソチ五輪は出場権を逃した。

 そしてバンクーバー五輪から8年。

 15歳の少女は谷底も経験しながら這い上がり、たくましいトップアスリートへと成長して、平昌五輪を迎えている。

「以前はあまり“オリンピック”と言っていなかった。それは、オリンピックを特別に思うことが怖いと思っていた部分がきっとあったからだと思う。今、こうして目の前にオリンピックが迫ってきて、やっと特別な大会だと思う覚悟もできてきた」

「雪辱を果たすことができるのは五輪の舞台だけ」

 平昌五輪会場となる江陵オリンピックオーバルで滑るのは、昨年2月の世界距離別選手権に続いて2度目となる。そのときの3000mの成績は、自己ベストとなる4分4秒50をマークしたものの、8位という平凡な順位に終わった。

 優勝は3分59秒05を出したイレイン・ブスト(オランダ)。

 五輪3大会で4個の金メダルを獲得してきた長距離の女王であり、平昌五輪では高木美帆と同じような1000m、1500m、3000m、チームパシュートの4種目にエントリーしている。今回も高木美帆にとって最大のライバルとなるのはブストだろう。

 女子3000mは10日午後8時から競技が始まる。

「8年前や4年前の悔しさを晴らし、雪辱を果たすことができるのは五輪の舞台だけ。ここからが勝負です」

 一発目のレースですべてに通じる良い流れを作っていこうという覚悟が、自身のパワーにもなっていくはずだ。

文=矢内由美子

photograph by Naoya Sanuki

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