極寒と不安山積の平昌五輪だが……。現場のボランティア、市民は温かい。

極寒と不安山積の平昌五輪だが……。現場のボランティア、市民は温かい。

 2月7日に韓国に到着し、3日目を迎えた段階でこの原稿を書いている。

 平昌五輪、開会式目前のタイミングだ。

 今大会を前に、報道ではさまざまな不安が語られてきた。

 過去の冬季オリンピックと比べて、最も寒い中での開催になるのではという不安。チケットの売れ行きが順調ではないことに象徴される盛り上がりへの不安。運営面だと競技時間に関する不安だ。

 7日に仁川空港に降り立ち、氷上競技の会場が集中する江陵に到着したのは夕方だった。そこは「寒い」というより「冷たい」という感覚に襲われるほど冷えていた。しかも常に強風が吹いているため、マイナス15度前後という気温以上に冷たく感じられる。

 8日になってからは寒さが緩み、開会式の9日は暖かさを増しているが、数日すればまた冷え込みが厳しくなると予報が出ている。

選手だけでなくIOCまで寒さを懸念しているほど。

 観る立場にとっても不安材料であるが、選手にとってこの寒さは大きな不安材料となる。

 日本選手団は7日の入村式で、コンディションが崩れる恐れがあることから、選手不在で行なう異例の対応を取った。選手個々もスキー・ジャンプの高梨沙羅が風邪を警戒して加湿器とうがい薬を用意するなど、対応に余念がない。また、開会式に出席を予定している葛西紀明はカイロを全身に貼るという報道が話題になった。

 寒さを懸念しているのは国際オリンピック委員会(IOC)も同じ。なぜなら開会式の途中退場を認めると異例の発表をしたほどだ。

 ジャンプをはじめとしたスキー競技では、競技時間が夜遅くに設定されている。公式練習でも「ちょっときつい」という声がスタッフから聞こえるなど、試合のパフォーマンスにも影響しかねないだけに、やはり寒さは今回の五輪の“大敵”と言えるだろう。

盛り上がったバンクーバーと比べると不安はあるが。

 IOCが2月3日に発表したところによると、チケットは75%の売れ行きで4分の1が売れ残っているのだという。9日に行なわれたフィギュアスケートの団体戦も当日窓口で販売されていたのには驚いたが、本格的にスタートを切っていないこともあり、オリンピックが始まる高揚感は、街にはないに等しいのだ。

 選手や関係者も含め、ここ近年の大会最も評判のよかったのは2010年のバンクーバー五輪だった。同大会を知る人たちはその差を実感しているようだ。

 バンクーバーでは開幕前から街中で公式、非公式を含めて様々なイベントが行なわれ、数多くの人でにぎわっていた。大会を待ちわび、楽しみにしている空気が充満していたのだ。冬季競技の大国らしく、各競技の試合会場にも大観衆がつめかけ、声援を送った。こういったムードもあって「バンクーバーは楽しかった」と語る選手は少なくない。

 そのバンクーバーと対照的に、現状では不安感の漂う平昌大会だが、開幕後に雰囲気は一変するのか――それも大会の成否の鍵となる。

宇野昌磨は朝5時に起きて競技への準備開始。

 また、アジア開催の大会ではありがちなことだが、通常の大会とは異なる競技時間が設定されている。例えばフィギュアスケートは夜に開催されるのが普通なのだが、午前中から競技がスタートする。逆に日中に実施することが多いスピードスケートは、夜間に開催されるのだ。

 団体戦のショートプログラムに出場した宇野昌磨は、公式練習が午前7時頃からだったため、早朝5時に起きたと言う。

「すごい眠かったです」

 ただ「その中で無理はしないようにしました」と、練習前のアップも軽めにしてに臨んだ。その調整法の結果、男子でただ1人100点を超える好発進につながったが、通常と違う時間帯に対応できるかがポイントとなる。それがあらためて分かる話でもあった。

 このことは競泳をはじめ、アメリカなどでの時刻に合わせた競技時間になるだろう、2020年の東京五輪で突きつけられる課題でもある。

現地のボランティアスタッフには各国から高評価。

 大会前からの課題を裏付けするかのように、不安材料が見える平昌五輪。ただ一方で、運営スタッフやボランティアスタッフ、市民の対応は海外の記者も含めて、高い評価を得ているのも確か。

 何度かオリンピックを取材している記者の間では、特に高評価だ。

 何か尋ねられたときにいやな顔や面倒くさそうな態度をまったく取らないこと(そうした対応は、過去の大会では少なくなかった)、機敏かつ陽気に接してくれるのが、その高評価の理由だという。まあ、小さなトラブルはあるのだが……。

 例えばある記者は、プレスセンターでインターネットにつながらなくなり、ボランティアスタッフに相談した。すると役目を終えていたスタッフは懸命に各所に連絡をとり、その周囲には助っ人として他のスタッフが駆け寄り、各々知恵を絞って考えてくれたという。

「30、40分もかけて解決してくれて、その懸命な姿は印象的でした」

 と語る。何よりも、街中での治安面での不安が少ないことも評価につながっている。

手袋にICが内蔵され、お金が簡単にチャージできる。

 キャッシュレス率は日本をはるかに上回る韓国だけに、その面でもユニークな試みがされている。クレジットカード会社のVISAによるもので、手袋など小物類にICが内蔵されていて、お金を簡単にチャージできるというものだ。カードを取り出さず、手袋のまま決済できるサービス。これも、ある意味では寒さ対策の1つと言えるのではないか。

 こうして、不安材料も抱えつつ、交通誘導、会場案内など各所でスタッフたちは懸命な姿が際立つ平昌五輪は、いよいよ本格的に始まった。

 25日まで選手たちの4年の思いを込めた戦いが続いていく。

文=松原孝臣

photograph by Takaomi Matsubara

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