琉球ゴールデンキングスは何をした?昨季より1試合の失点が10点も減少。

琉球ゴールデンキングスは何をした?昨季より1試合の失点が10点も減少。

 シーズンも後半戦に突入したBリーグで、2月9日時点で最少失点をほこっているのが、琉球ゴールデンキングスだ。その秘密はどこにあるのだろうか。

 象徴的な場面がみられたのが、2月4日の京都ハンナリーズ戦で、第2クォーター(Q)のオフィシャルタイムアウト(TO)が終わった時だった。この時点で、琉球は20−32とビハインドの状態だった。

 負けているときにこそ、チームの本質が問われる。精神的に追い込まれたときに、人の本性が出てしまうように。

 TOが終わり、試合再開に向けて選手たちが散っていくなかで、田代直希が佐々宜央ヘッドコーチ(HC)と話し込んでいた。

 これから試合に出る選手がHCと話し込むのならわかる。しかし、田代はこの時間帯はベンチに座っていた。それなのに、なぜ、HCと話し込んでいたのか。

ベンチにいる時も頭はフル回転。

 田代は、今季最大の26点差で敗れた11月4日のレバンガ北海道戦の後から、スタメンに名を連ねるようになった選手である。プロ2シーズン目を迎える24歳の田代は、あの場面をこう振り返る。

「フォーメーションが1試合のなかでちょくちょく変わっていくので、その確認をしていたんだと思います。いつ出ても大丈夫なように、試合に出ていないときも同じように考えるというか……。ああやって話すことで、そのタイミングでやらなければいけないことを改めて共有できるので。コートに立ったときに、僕だけ他の選手と違うことをしていたら、失点やミスになってしまう。だからベンチにいるときにも頭をフル回転させるんです」

 一方のHCの佐々もこう話した。

「エラそうな言い方をしたら教育みたいな感じになっちゃいますけど、次にむけて準備して欲しいんですね。前もって色々と準備をさせたいという思いがある。やはり予測が大事なスポーツなので、ベンチにいる間も考えて欲しいということです」

昨シーズンより1試合あたり10点以上失点が減った。

 さらに、あの話し合いの意図についてこう説明を続けた。

「田代だけではなく、(高卒で入団した21歳の)津山などもそうですけど、選手がベンチにいるときには、ゲームの流れや、彼らに何をして欲しいかを話さなければいけないと思うんです。プレーしているのは試合に出ている5人だけではなくて、ベンチにいる選手も含めて、全員なので」

 京都戦は大きなビハインドを覆せず敗れたが、この試合が終わった時点で、1試合平均失点は66.8点。この失点数はリーグでもっとも少なく、他に70点を下回っているのはアルバルク東京しかいない。

 なにしろ、昨シーズンと比べて1試合あたり10.2点も失点が減っている。これは驚くべき数字だ。

 昨シーズンから琉球でプレーする田代は、守備面での進化を以下のように話す。

「細かい決まり事がたくさんあって、それをみんなが遂行しています。あとは、コミュニケーションの『量』が、とにかく多くなりましたよね。ボールマン(※ボールを持っている相手チームの選手)のディフェンスではないところでもみんなが声を出し合って、ディフェンスをしているので。本当に、トークの量が全然違うと思います」

常に一歩先の状況を読んで声を出す。

 田代の証言から、昨季と今季の違いが浮かび上がってくる。

 以前の琉球では、相手チームにスクリーンをかけられてから「スクリーン」という声があがったり、マークする選手を変えなければいけない状況になってから「スイッチ」という声が出ていた。

 しかし今シーズンは、「その前」の時点で声が出ている実感があるという。

 相手チームがスクリーンをかけそうな気配を察知したら、周りの選手がそれを伝える。全ての選手が、自分が守っている位置と、相手選手の位置、状況を自ら発信する。これは佐々の言う「予測」ともつながってくる

「そういう声があると、上(前)のほうにいる選手からしたら、『下のほうは大丈夫なのか。じゃあもう少し味方のヘルプにいける』と判断できたりする。今はそんな声がコート上に満ちていると思います」

強豪が揃う東地区との差をどう埋めるか。

 今季新加入した須田侑太郎は、琉球の守備の強みをこう話す。

「琉球はまずコーチ陣がスカウティングをしっかりとしてくれて、それを受けて自分たちでも対応できています。あとは、一人ひとりが闘っていますよね。細かいところですが、相手にボールを簡単にもらわせないように動いたり、その積み重ねが大きな違いになるんです。それによって最後にフリーでシュートを打たれるのか、タフショットを打たせるのかが変わってきますから」

 興味深いのは、それでも彼らが危機感を抱いている点だ。

 というのも、3つの地区に6チームずつが所属するBリーグにおいて、地区ごとのレベルには明らかに差があるからだ。

 他地区との交流戦を見ても、成績には顕著な差が出ている。強豪が集まる東地区は、最下位の栃木ブレックスでも勝率は5割。それに対して中地区は、5割をこえているのは首位のシーホース三河だけ。西地区でも、5割を超えているのは首位の琉球と2位の京都だけなのだ。

 今季の琉球が進化していることは確かだが、順位表の数字だけで判断していたら、他地区との戦いでは痛い目にあう。

劣勢の状況で崩れない、という目標。

 だからこそ佐々HCは、2月4日に京都に敗れたあとに、ある試合を引き合いに出して、課題を挙げた。

「(年始の)天皇杯で川崎に負けたときのように、劣勢の状況になったときにどうするか、ですよね。どちらが最終的に崩れてしまうのか。相手を上回るパフォーマンスも必要ですけど、崩れないことも大事。うちが崩れたときに、その原因は何かと考えたときに、ゲームプランの実行やディフェンスが雑になったりとか……」

 川崎ブレイブサンダースとの天皇杯は、1月4日のことだ。

 川崎は12月31日にサンロッカーズ渋谷との試合を終え、川崎で調整をしてから、さいたまスーパーアリーナで行なわれたこの試合に臨んだ。そして、素晴らしいパフォーマンスを見せた。

 対する琉球は、1月1日と2日に沖縄で島根スサノオマジックとホームゲームを戦って、そのあとに埼玉への移動をへて、天皇杯を迎えた。

 そして、1Qで琉球が5点のリードを奪いながらも、2Qと3Qで一気に突き放されて、最終的には20点差で敗れてしまった。

 コンディションの差や相手の状態など、言い訳ならいくつもある。

 しかし彼らはそれに甘えず、強豪ひしめく東地区で上位にいるチームに勝てる力をつけることに、集中している。

「あうんの呼吸」にはまだ少し時間がかかる。

 前述の須田は、Bリーガーを最も多く送り出している東海大学の出身だ。日本代表の主力で、アルバルクの田中大貴とは大学の同期である。そして、昨シーズンまでは栃木でプレーしていた。

 これまでのキャリアを通して、強いチームがどういうものかを身をもって知っているからこそ、チームの進化と課題の両方に目が向けられる。

「すべての相手選手をスカウティングはしていなくても、マークをスイッチするかどうかをパッと判断しないといけないときがあります。シーズンの最初に比べれば、そういう場面でも少しずつお互いのことを分かり合えるようになってはいます。でも、まだコミュニケーションは足りていない。どんなときでも声をかけ続けて、『あうんの呼吸』じゃないですけど、瞬時に判断してカバーし合える状態まで持っていければいいかなと思っています」

 それでも須田は、こう付け加えるのことも忘れなかった。

「時間は必要ですけど、もっと激しく出来ると思うし、高いレベルまで持っていきたい。もちろん、僕らにはその可能性があると思っています」

三河、東京、千葉との試合を残す終盤戦。

 佐々HCがチームにやってきて、重点的に取り組んできた守備の向上は確かに進んでいる。

 一方で、良くない状況で耐えるには、相手との関係性をコントロールする必要がある。この点については、まだ改善の余地が多く残っている。

 勝率では現在リーグ2位タイの琉球は、これから多くの正念場が控えている。Bリーグのレギュラーシーズンは5月6日が最終戦となるが、4月の後半以降にシーホース三河(現在リーグ全体で2位タイ)、アルバルク東京、千葉ジェッツ(2018年の天皇杯王者)と、強豪との試合が組まれている。

 現在は2位京都に7ゲーム差をつけている西地区での優勝に向けて最後まで気を抜けないとも言えるが、チームの大きな課題と向き合う機会が多く残されているとも言える。

 何より、現在のポジションに安住する雰囲気が全く見られないところに、琉球が何かを起こす可能性を感じさせるのである。

文=ミムラユウスケ

photograph by Naoya Sanuki

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