川崎に大卒生え抜き選手が多い理由。憲剛「うちには目利きのスカウトが」

川崎に大卒生え抜き選手が多い理由。憲剛「うちには目利きのスカウトが」

 2月10日に行われたゼロックス・スーパー杯のメンバー表には、前年のJ1王者・川崎フロンターレのカラーが色濃く出ていた。大卒で加入し、クラブ一筋の「生え抜き」がずらりとそろっていた。

 他のJ1クラブを見渡しても、試合メンバー表の前所属チーム欄に、大学名が数多く並ぶことはほとんどない。川崎Fのスカウトとして14年目を迎える向島建氏は、埼玉スタジアムの4階席からピッチを見下ろし、感慨に耽っていた。

「大卒の生え抜きの人数を数えると、7人もいたからね」

 先発メンバーの4人は、昨季、チームの主軸として初優勝に貢献した面々。もはや説明不要のタレントたちと言っていい。

中央大卒、16年目の中村憲剛。
拓殖大卒、9年目の小林悠。
筑波大卒、5年目の谷口彰悟。
筑波大卒、4年目の車屋紳太郎。

 控えメンバーには、新人を含めた3人の名前があった。

順天堂大卒、3年目の長谷川竜也。
愛知学院大卒、2年目の知念慶。
流通経済大卒、1年目の守田英正。

長谷川、知念ともにすでに存在感。

 昨季、長谷川は主にスーパーサブとしてリーグ戦24試合に出場し、5ゴールをマーク。ルーキーイヤーだった知念は4試合の出場にとどまったものの、31節(10月29日)の柏レイソル戦(△2−2)で反撃の狼煙を上げる値千金のゴールを決め、貴重な勝ち点1獲得に貢献。ともにゼロックス・スーパー杯では後半途中から出場し、存在をアピールしていた。

 そして、この日は大卒新人の守田が公式戦デビューを果たす。52分に右サイドバックとして入り、ピッチで躍動。球際では持ち前のボール奪取力を生かし、機を見て攻め上がると、スペースへ飛び出してシュートも放った。

「絶対に欲しかった選手」の言葉どおり。

「落ち着いてできた。大舞台でいきなり使ってもらい、ありがたかった。貴重な経験を積むことができた」

 本職はボランチ。大学時代はコーチから「長谷部(誠)になれ」と言われ、あらゆるポジションをこなした。大学2、3年のときはサイドバックでプレーし、4年ではボランチとセンターバックで活躍。'17年のインカレはMVPに輝いた。「絶対に欲しかった選手」とその才能に惚れ込む向島スカウトは口元を緩めながら、堂々としたデビュー戦のプレーに驚きを隠さなかった。

「1対1に強いし、フィジカル面でもプロで十分にやれると分かっていたが、チームのやり方をすぐに覚えるのは難しいもの。それなのにフロンターレのメンバーとして、普通にプレーしていた。たいしたものだと思う」

 大卒選手が主軸を担ってきたクラブの系譜を継ぐ者としても、向島スカウトは期待を寄せていた。

 大卒選手はほとんどのJクラブで即戦力として迎えられるものの、コンスタントに出場できるのはひと握り。ましてその先、「生え抜き」と呼ばれ、主軸となる人はさらに減る。

 J1でも移籍で選手を多く集めるチームほど、出場機会をつかむのは難しく、すぐにJ2クラブへレンタル移籍するケースも珍しくない。その後レンタル元のチームに戻り、戦力となる選手はごく希と言ってもいいだろう。

憲剛「うちは目利きのスカウトがいるから」

 世知辛い昨今のJリーグで、今の川崎Fは異質と言える存在かもしれない。クラブの最古参となり、看板を背負う中村の言葉には説得力がある。

「うちには目利きの(向島)建さん、(伊藤)宏樹さんといったスカウトがいるから。チームに合致する選手を取ってきていると思う。大卒はしっかりしている選手が多いし、クラブカラーにもマッチしている」

 向島スカウトが新人選手を獲得する上で重要視するのは、人間性だという。

「プロだから試合に出られないこともある。そのとき、壁をいかに乗り越えるかが大事。自分をコントロールできないといけないし、自分で課題を見つけて、自分で努力できないといけない」

 '97年のJFL時代(当時現役)から川崎Fの歴史を知る52歳はしみじみと話す。「苦労して、努力してはい上がるのもフロンターレっぽいかなと」

憲剛の背中を見て小林悠、さらに谷口、車屋。

 それを地で行くのが中村憲剛だ。

 当時、関東大学2部リーグの中央大から無名に近い存在として加入。クラブとともに成長し、川崎Fの顔として定着した。いつしか大卒の「生え抜き」がチームに増え、クラブの主軸を担うようになってきた。

「自分で言うのも変だけど、大卒の生え抜きの俺らが長くいるから、周囲もそういう見方をするんだろうね。きっと、今の学生から見るフロンターレ像も同じだと思う。だから、有望な大学生も来てくれる。先輩がいるのは、やっぱり大事。

 俺も宏樹さん(現スカウト)の背中を見ていたから。このクラブで長くやりたいと思うもの。俺の背中を見て(小林)悠が、悠を見て(谷口)彰悟が、彰悟を見て(車屋)紳太郎って……。みんな先輩を見ている。生え抜きが、また次の生え抜きを生む。いまサイクルができている。これはクラブにとって、すごく大事なこと」

 昨季、中村からキャプテンを引き継いだ小林も、生え抜きの重要性を理解していた。

「後輩たちが、ずっとフロンターレにいたいと思うような雰囲気をつくりたい」

 副キャプテンを務める谷口も先輩の後ろ姿をしっかりと見ていた。

「いい見本がいるので」

 こうして、大卒の生え抜きの系譜は継がれていくのかもしれない。

文=杉園昌之

photograph by J.LEAGUE PHOTOS

関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索